11月3日に投票が行われた米国の中間選挙で、米メディアの予測によると、民主党が上院と下院の両方で多数派を取り、2027年1月に発足する新しい議会では、トランプ大統領の共和党が主導権を失う見通しとなった。11月29日に総選挙を控えるスペインでは、与野党の党首がそれぞれ結果を自らの選挙戦に結びつけた。サンチェス首相は4日、「ブラジルで起き、米国でいま起きた。まもなくスペインでも起きる」とXに投稿した。最大野党・国民党(PP)のフェイホー党首は、米国の世論調査が当たったようにスペインの調査も当たれば、29日には「政治の大転換」が起きると述べ、首相に結果を教訓にするよう求めた。極右政党Voxのアバスカル党首は「任期の半ばで議会の多数派を失う大統領は多い」と受け流し、トランプ氏が今後2年は大統領を続ける以上、米国とは良好な関係を保つのが望ましいと述べた。4日のマドリード市場では株価指数Ibex 35が昼にかけて2%超上昇した。ただ、大統領の拒否権は残る。米国の関税など、スペインに関わる政策がどこまで変わるかはまだ見通せない。
民主党、上下両院で多数派の見通し
中間選挙では、下院の全435議席と、上院の約3分の1の議席が改選された。Europa Pressは4日未明(スペイン時間4時14分)、米メディアの最初の予測として、民主党が下院の主導権を共和党から奪ったと伝えた。上院でも民主党が多数派を取る見通しとなった。改選前の上院は共和党53、民主党と民主党会派の無所属議員が合わせて47で、民主党側が多数派を取るには4議席の純増が必要だった。RTVEの4日11時55分の更新によると、民主党はノースカロライナ、サウスカロライナ、テキサス、オハイオ、アイオワ、カンザス、メーンの7州で共和党から議席を奪い、民主党会派は無所属議員を含めて54議席となる。下院でも民主党は過半数の218を大きく上回る見通しで、予測される議席数は報道機関によって幅がある。EFE通信は4日朝、244に達する可能性があると伝えた。いずれも報道機関の予測に基づく数字で、開票が進むにつれて変わりうる。各州による正式な確定はこれからだ。
EFEによると、テキサス州では、民主党のジェームズ・タラリコ氏が、トランプ氏が肩入れした共和党のケン・パクストン州司法長官を破り、同州で38年ぶりの民主党の連邦上院議員になる見通しだ。州知事選でも、4期目を目指した共和党の現職グレッグ・アボット氏が民主党のジーナ・イノホサ氏に敗れ、イノホサ氏は同州で初めてのラテン系の女性知事になる見通しだ。EFEは、2024年の大統領選でトランプ氏の勝利を支えたラテン系の票が離れた可能性を指摘した。EFEは共和党への逆風として、物価の高さ、イランとの戦争によるガソリン価格の上昇、関税の影響、移民政策への批判を挙げた。Europa Pressも、イランとの戦争で燃料価格が上がり、生活費への不満が高まったことを背景に挙げている。
EFEによると、トランプ氏は開票の最中、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に、自分は選挙に出ていない、出ていれば圧勝していた、という趣旨の投稿をした。その後、米紙ニューヨーク・タイムズには、結果は民主党の勝利を示していると認め、新しい議会の多数派と「協力する」用意があると語ったという。Europa Pressによると、新しい議会は2027年1月3日に発足する。
サンチェス首相「まもなくスペインでも起きる」
スペインでは、10月の議会解散を受けて11月29日に総選挙が行われる。政府の案内によると、正式な選挙運動の期間は11月13日から27日まで。Europa Pressによると、サンチェス首相は4日のXへの投稿で、米国の有権者が「貧しくするだけの政策」や「憎しみ」、「気候変動の否定」、「エリートの特権」に反対票を投じたと評価した。そのうえで「フェイホー氏とアバスカル氏が乗ろうとしている極右の波は、もう大きくならない。崩れつつある」と書いた。
アルバレス外相も4日、マドリードで開かれるイベロアメリカ首脳会議に先立つ外相会合の前に、報道陣に「この波はスペインでも続くと確信している。11月29日のスペインでは、これらの選挙で争われてきたのとまったく同じことが問われているからだ」と述べた(Europa Press)。外相は民主党の勝利を「歴史的な規模」と表現し、ヒスパニック系の候補が当選したことにも触れて「スペインから共感と親しみをもって受け止めている」と語った。
首相のPSOE(社会労働党)より左の政党でつくる連合「フレンテ・アンプリオ」も、Xで「米国でのトランプ氏の敗北は、テクノ・オリガルヒ(巨大IT企業の富豪層)と、削減と『チェーンソー』の政策の敗北だ」と投稿した(Europa Press)。同連合の首相候補で前バルセロナ市長のアダ・コラウ氏は「スペインで権利を広げ続けるために、29日にはフェイホー氏とアバスカル氏を破らなければならない」と呼びかけた。同連合の広報担当で社会権・消費・2030アジェンダ相のパブロ・ブスティンドゥイ氏は、Blueskyに「昨日はトランプが負けた。米国で記憶にある限り、最も屈辱的な敗北のひとつだ」「29日はフェイホーとアバスカルの番だ」と書いた。
フェイホー氏「スペインの調査も当たれば政治の大転換」、Voxは「よくあること」
PPのフェイホー党首は4日、テレビ局アンテナ3のインタビューで「トランプ氏は選挙に負けた。米国民は下院でも上院でも彼への信任を取り下げた。米国の国民は何をすべきか分かっていて、それをやった」と述べた(Europa Press)。そのうえで、米国の世論調査は当たったと指摘し、「スペインの調査も当たるなら、11月29日にはスペインで政治の大転換が起き、今回それは首相に及ぶ」として、サンチェス首相に結果を「教訓にする」よう求めた。民間の世論調査では、PPとVoxの合計が過半数に届くとの結果が出ている(関連記事)。
一方、Voxのアバスカル党首は4日、ラジオ局オンダ・セロのインタビューで、米国の中間選挙は「国内の選挙よりずっと関心が薄い」と述べた(Europa Press)。大統領の党が中間選挙で負けるのは「よくあること」で、クリントン元大統領やブッシュ元大統領にも起きたと指摘し、「任期の半ばで議会の多数派を失う大統領は多い」と語った。そのうえで、今後2年間も大統領を務めるのはトランプ氏であり、「米国とは良好な関係を保つのが望ましい」と述べた。アバスカル氏は同日夜、スペインを訪れるアルゼンチンのミレイ大統領と会う予定だという。
株は上昇、通商はなお見通せず
4日のマドリード市場では、Ibex 35が前日比0.89%高の1万8,974.1ポイントで始まり(Europa Press)、昼には2.69%高の1万9,314ポイントまで上げた。Europa Pressは昼の時点の上昇を民主党の勝利と結びつけて伝えた。値上がりが目立ったのは、サンタンデール銀行(4.83%高)、太陽光発電のソラリア(4.67%高)、BBVA(4.28%高)、アルセロール・ミタル(4.21%高)、カイシャバンク(3.96%高)だった。ユーロは対ドルで0.47%上がって1ユーロ=1.1246ドル、スペインの10年物国債の利回りは前日終値の3.930%から3.892%に下がった。仏運用会社カルミニャックの投資委員会のメンバー、ケビン・トゼ氏は、大統領と議会の多数派が分かれる状態は、株式市場にとって「必ずしも悪い知らせではない」と説明している。
スペインにとって気がかりなのは、米国の関税と、防衛費をめぐる圧力だ。EUと米国は2025年夏、米国がEU製品の大半にかける関税を15%を上限とする枠組みで合意し、欧州委員会によると、この枠組みは2026年7月1日に発効した。品目によっては例外がある。スペイン農業・漁業・食料省によると、2025年のスペインの農水産品の対米輸出は32億5,600万ユーロ(暫定値)で、前年から10%減った。主な品目はオリーブオイルとワインだ。トランプ氏はまた、NATOの防衛費をGDP比5%に引き上げることに応じないとして、スペインを繰り返し批判してきた(Europa Press、7月8日)。
新しい議会でこれらがどう変わるかは見通せない。Europa Pressは4日未明、トランプ氏がホワイトハウスにとどまり、拒否権を使うと公言していることから、民主党が下院を握っても目立った立法の成果にはつながりにくいと伝えた。スペインのシンクタンクCIDOBに選挙前の10月に寄稿したマリアーノ・アギーレ・エルンスト氏は、民主党が議会を握れば、新たな戦争の開始に制限をかけたり、ウクライナへの軍事支援の打ち切りのような決定に異を唱えたりできるとみていた。一方で、英シンクタンク、チャタムハウスの研究者の分析を引き、政権の政策を阻もうとする民主党の試みの多くは、大統領の拒否権などの「構造的な障害」にぶつかるとも指摘していた。

















