スペインのオスカル・プエンテ運輸・持続可能モビリティ相は11月3日(火)夜、下院の常設代表部で、10月28日にトレド県ウルダ付近で起きた高速列車の追突事故(死者69人、スペイン当局の集計で日本国籍の2人を含む)について説明した最後に、大臣を辞任すると表明した。11月29日の総選挙で、社会労働党(PSOE)の候補から退く意向も示した。「スペインのような国の運輸相が、1年足らずの間にこれほど重大な事故を2件抱えて職にとどまることはできない」と述べ、自分に直接の責任があるかどうかにかかわらず、「政治的な尊厳、一貫性、そして犠牲者への共感の問題だ」と説明した。本人は、決断は事故の直後に下し、サンチェス首相には表明の数分前に伝えたと話した。政府筋は同じ日の昼、辞任も更迭もないとEFE通信に説明していた。首相はX(旧ツイッター)で、プエンテ氏は「自らの意思で」「犠牲者への敬意から」一歩退いたとたたえた。最大野党の国民党(PP)は辞任は遅すぎるとし、首相の責任を問うている。後任は3日夜の時点で発表されていない。プエンテ氏は、2日に公示されたバリャドリード選挙区のPSOEの名簿で1位に載っていて、EFE通信は、投票用紙にも名前が残ると伝えた。事故の原因は、裁判所の捜査と国の事故調査機関の調査が続いている。

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「辞任は悲劇ではない」

常設代表部は、議会が解散している間に下院の役割を担う機関だ。プエンテ氏は事故とその後の対策について説明し、質疑の最後に辞任を明かした。EFE通信は21時20分ごろに速報した。エウロパ・プレス通信によると、プエンテ氏は「私の今後についての決断は、悲劇が起きて最初の数分のうちに下した」と述べ、最初に知らせたのは家族だったと話した。「したがって、バリャドリードの下院選挙の名簿1位にはならない」とも述べた。

表明をこの日まで待った理由については、「国民主権の府」である国会で明らかにすべきだと考えたことと、最も急ぎ、先延ばしできない仕事を終えてからにしたかったことを挙げた。その仕事とは、何が起きたかを説明すること、被害者を助けること、償いのための最初の措置を取ること、鉄道の安全を「できる範囲で」短期的に高めることだったという。「唯一の選択肢ではなかったが、私が取る気になれた唯一の選択だ」と語った。

自身の辞任は「悲劇ではない」とし、「悲劇は、犠牲者と家族、もう会えなくなった大切な人たちのものだ」と述べた。2001年に59人が亡くなった橋の崩落を受けて辞任したポルトガルのジョルジェ・コエーリョ元大臣の言葉として、「落ち度は独り身のまま死んではならない」も引いた。誰かが責めを負わなければならない、という意味のポルトガルの言い回しで、政治的な責任を引き受ける文脈で使った。エウロパ・プレス通信によると、最後は総選挙に触れ、PPが率いる政府はスペインの将来にとって「破滅的」になると述べ、「さようなら」と締めくくった。

プエンテ氏はこれまで、辞任を求める声をかわしてきた。事故のあとに進退を首相に委ね、首相が続投を求めたと報じられていた(総選挙の解説記事)。3日昼にも、政府筋はEFE通信に、本人が辞めることも首相が更迭することもなく、バリャドリードの名簿1位も変わらないと説明していた。プエンテ氏は2015年から2023年までバリャドリード市長を務め、2023年11月から運輸相だった。

辞任の前に説明したこと

辞任の表明の前には、政府が3日の閣議で承認した高速鉄道の安全対策を説明した。中心となる対策は、列車同士の間隔を自動で保つ仕組みが使えないとき、管制センターでの判断をもう1人の管制担当者が確かめることだ(EFE通信など)。今の信号システムLZBは実績のある仕組みだと擁護し、後継のERTMSの導入が遅れているのは作業が複雑なためだと説明した。LZBの障害の後に「通常の運転」での再開を指示したことが以前にもあったかと問われると、組織的なものだとは把握していないと答え、「ごく例外的に」あった可能性は認めて、調査で明らかにすべきだとした(地元のニュースサイト、カスティーリャ・ラ・マンチャ24)。

同じ閣議では、被害者への直接支援と民事賠償の前払いに3000万ユーロを充てる緊急政令も承認された(詳報)。

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首相は「ありがとう、同志」、PPは「遅すぎる」

サンチェス首相はXに「オスカル・プエンテは逃げずに説明し、解決策を示し、そのあとで一歩退いた。尊厳から、自らの意思で。犠牲者と進歩派の事業への敬意から」と書き、「彼のような政治家がこの国の品位を高め、私たちが皆同じではないことを示している」「ありがとう、同志」と結んだ(EFE通信)。

PPのエステル・ムニョス下院報道官は辞任の表明の前の質疑で、1月のコルドバ県アダムスの事故(死者46人)、バルセロナ県ジェリダで運転士1人が亡くなった鉄道事故、ウルダの事故で、死者は計116人になると指摘し、辞任を求めたうえで、それでも「遅い。116人の命の分だけ遅い」と述べていた(エル・ナシオナル)。辞任の表明のあと、PPの関係者は、辞任は「犠牲者のためでも尊厳のためでもなく、世論調査のためだ」とし、プエンテ氏を任命した首相の責任を問うた。テジャド幹事長は、辞任は「不可欠だが十分ではない」と述べた(エルディアリオ)。極右政党Voxのアバスカル党首も、責任は首相にあると主張した。

辞任の表明の前の質疑では、PPとVoxに加え、連立与党スマールの会派や、バスク民族党(PNV)も辞任を求めた。カタルーニャの独立派ジュンツも、会議の前から辞任を求めていた。一方、首相の与党PSOEのパチ・ロペス下院報道官は、辞任を求めても「事故の解明にもならず、次の乗客を守ることにもならない」と擁護していた。左派連合フレンテ・アンプリオを率いるコラウ氏は、辞任の表明のあと、その「尊厳」に感謝した。

後任と投票用紙

EFE通信によると、政府筋は、辞任が正式に発効するまではプエンテ氏が大臣のままで、後任はその後に決めると説明した。サンチェス首相は、新しい大臣を任命するか、ほかの大臣に運輸省の日常の業務を兼ねさせるかを決めることになる。2019年には、大臣が離れた省の業務をほかの大臣が引き継いだ例が2回ある。

総選挙の候補者名簿は2日に公示され、3日の官報に載った。公示済みの名簿は原則として直せない。選挙法(LOREG)第48条は、公示後に候補が欠けた場合は名簿の後の順位の候補が埋めると定める。EFE通信は議会筋の話として、投票用紙の1番目にはプエンテ氏の名前が残ると伝え、中央選挙管理委員会が1977年に、候補の辞退や死亡で投票用紙を刷り直さないと決めていることを挙げた。名簿の2番目はアナ・レドンド平等相だ。辞退の正式な手続きと、PSOEがバリャドリードの選挙戦の顔を誰にするかは、3日夜の時点で確認できていない。

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事故の調査と鉄道

事故は10月28日朝、マドリード発セビリア行きのRenfeのAVEが、ウルダ付近の信号の手前で止まっていた民間のIryoの列車に後ろから追突したもので、69人が亡くなった。標準軌の高速新線で乗客が亡くなった事故は、1月のアダムスに続いて2件目だ(解説記事)。犠牲者には日本国籍の2人が含まれる(詳報)。プエンテ氏は事故の当日、LZBが止まった後に、管制がAVEに通常の運転での再開を許した判断は誤りだったと説明していた(28日の記事)。原因は、オルガスの裁判所の判事による捜査と、国の独立した事故調査機関(AITAT)の調査が続いている。

マドリードとアンダルシアを結ぶ高速線は止まったままだ。プエンテ氏は3日の閣議後の会見で、現場の復旧工事を判事が認めてから最大10日で運行を再開できる見通しだと述べ、当面は本数を減らすとした。工事の許可は3日に申請したという。Renfeの運転士の労働組合SEMAFは11月10日と12日にストを予定している(詳報)。カデナ・セルの3日22時35分の速報によると、SEMAFの書記長は、大臣の辞任で予定している行動は変わらないと述べた。

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