欧州各地で11月5日(木)の朝、旅客機への爆破予告が再び相次いだ。ロイター通信は5日午後の配信で対象を少なくとも25便、英ガーディアン紙は少なくとも20件と集計しており、2日(月)、3日(火)に続いて今週3回目となる。結果が明らかになった検査では、爆発物は見つかっていない。スペインでは、マドリード・バラハス空港に電子メールで予告が届いた。イベリア航空によると、ローマ発とミラノ発の同社の2便は10時ごろ通常どおり着陸し、エア・ヨーロッパによると、パリ行きの同社機は離陸の直前に出発を中断し、乗客を降ろした。治安警察の専門班が機体と荷物を調べ、脅威を否定した。マドリード発ソフィア行きのライアンエア便も予告を受け、ブルガリア空軍の戦闘機に付き添われてソフィアに着陸した。フランスでは、ダブリン発ローマ行きのエアリンガス機が戦闘機に付き添われて北部のエヴルー空軍基地に降り、検察は、軍の基地への着陸を当初拒んだとされる機長について捜査を始めた。一連の予告全体について犯行を認める声明は出ておらず、送り主は分かっていない。欧州委員会は加盟国の間で航空保安の情報を交換する仕組みを動かしたが、予告が互いに関係しているかを判断するのは「早すぎる」としている。

3日の予告とムルシア空港の対応は11月3日の記事で伝えた。ここでは5日の動きを伝える。

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マドリードではイベリアとエア・ヨーロッパの便に予告

空港を運営するAenaはEFE通信に、バラハス空港に爆発物の予告が届き、対象はパリ行き、ローマ発、ミラノ発の3便だったと説明した。治安当局と保安委員会を開き、確認の結果、予告は否定されたという。

イベリア航空はエウロパ・プレス通信に、ローマ発とミラノ発の自社の2便が対象になったと説明した。予告はバラハス空港に送られ、2便の機長に伝えられた。2便は10時ごろ「全く通常どおり」マドリードに着陸し、乗客は保安の手順に従って問題なく降りたという。エア・ヨーロッパの広報担当者によると、パリ行きの同社機は離陸の直前に出発を中断し、乗客を降ろした。EFE通信によると、予告が偽物だと確かめた後、運航を再開した。

治安警察がスペイン国営放送RTVEに説明したところでは、8時59分、地上を走行中だったマドリード発パリ行きのエア・ヨーロッパ機に爆発物があるとの電子メールが届き、機体は駐機場に引き返した。9時を過ぎると別のメールが届き、エア・ヨーロッパのパリ行きのもう1便と、イベリアの2便が対象とされた。もう1便のパリ行きも駐機場に戻って乗客を降ろし、イベリアの2便は問題なく着陸した。10時30分には、治安警察の爆発物処理とNRBQ(核・放射性物質・生物・化学)の専門班が機体と荷物を調べ、脅威を否定した。

対象の便の数は、説明によって違う。治安警察はRTVEにはエア・ヨーロッパ2便とイベリア2便と説明したが、ロイター通信には、9時ごろから20分足らずの間に3通のメールが届き、エア・ヨーロッパのパリ行き2便と、ローマ発とミラノ発のイベリアの4便が対象になったと説明した。Aenaは3便と説明しており、エア・ヨーロッパの広報担当者はパリ行き1機の対応を説明している。

マドリード発ソフィア行きのライアンエアにも

ブルガリアでは、マドリード、コペンハーゲン、ロンドン・スタンステッドからソフィアに向かっていたライアンエアの3便が予告を受けた。ブルガリア国営ラジオによると、予告は電子メールで届いた。同国の国防省は、空軍の戦闘機が3便すべてに付き添ったと発表した。運輸省がEFE通信に説明したところでは、マドリード発とコペンハーゲン発の2便は予定の時刻にソフィアのヴァシル・レフスキ空港に着陸した。機体は離れた場所に移され、乗客が降り、荷物と機体が調べられた。ロンドン発の便は国内第2の都市プロブディフの空港に行き先を変え、同じ手順で調べられた。内務省の報道官はAFP通信に、3機とも爆発物は見つからなかったと述べた。エウロパ・プレス通信によると、ライアンエアはこの件について説明していない。

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フランスは機長を捜査

ダブリン発ローマ行きのエアリンガスEI402便(エアバスA320)は、フランス北部ノルマンディー地方のエヴルー空軍基地に行き先を変えた。仏首相府によると、乗客151人と乗員6人は安全な場所に移され、爆発物処理班が対応した。爆発物は見つからなかった。仏航空宇宙軍は、待機していた戦闘機が発進して機体を迎え、エヴルーまで付き添ったと説明した。エアリンガスは、保安上の予防措置として行き先を変えたとし、乗客ができるだけ早く目的地に着けるよう手配すると説明した。

首相府は、機長が当局に期待どおり協力しなかったため、ルコルニュ首相がすぐに戦闘機による迎撃と護衛を命じたとしている。エヴルーの検察は、機長が軍の基地への着陸を拒み、民間の空港を望んだとされる件で捜査を始めた。仏紙ラ・クロワによると、レミ・クタン検事は、アイルランド人の機長から任意で事情を聴く予定で、身柄を拘束するかどうかはその後に判断すると述べた。捜査は、憲兵隊の航空輸送の捜査部門や空軍などに任された。機長側の説明は確認できていない。

欧州各地の主な事案

5日に報じられた主な便は次のとおり。多くは予定どおり目的地に着き、着陸後に調べられた。

便(航空会社、区間)対応と結果
エアリンガス(ダブリン→ローマ)仏エヴルー空軍基地に行き先を変更。戦闘機が付き添った
ライアンエア3便(マドリード、コペンハーゲン、ロンドン→ソフィア)2便はソフィア、ロンドン発はプロブディフに着陸。戦闘機が付き添った
イベリア航空(ローマ、ミラノ→マドリード)同社によると2便。10時ごろ通常どおり着陸
エア・ヨーロッパ(マドリード→パリ)離陸直前に中断し、乗客が降りた。治安警察はパリ行き2便が対象と説明
フィンエアー(ヘルシンキ→ローマ)戦闘機が付き添い、ローマに着陸。乗客144人、乗員7人
フィンエアー(ヘルシンキ→ウィーン、ジェットタイム運航)ウィーンに着陸。乗客177人、乗員6人
ウィズエア(ミラノ→ワルシャワ)飛行中に予告を受け、ウィーンに行き先を変更
ウィズエア(ミラノ→ブカレスト)目的地に着陸
LOTポーランド航空(ワルシャワ→パリ)地上走行中に止めて検査。機材を替えて運航
LOTポーランド航空(ワルシャワ→ブリュッセル)ブリュッセルに着陸し、追加の検査
プラハ行き4便(ライアンエア、イージージェット、スカイ・エクスプレス)4便とも着陸。チェコ警察は予告の信ぴょう性は「低い」と評価
エーゲ航空2便(テッサロニキ→ミラノ、アテネ→ウィーン)同社は予告に「根拠はない」と説明
ライアンエア(ポルト→ミラノ)ミラノ・マルペンサ空港に着陸
コペンハーゲン着の2便予定どおり着陸。警察は「危険はなく、一度もなかった」

結果が明らかになった検査では、爆発物は見つかっていない。AFP通信は5日昼の時点で、行き先を変えた便をエアリンガス、ライアンエアのロンドン発、ウィズエアのミラノ発ワルシャワ行きの3便とし、少なくとも5便に空軍機が付き添ったと伝えた。対象の便数は、ロイター通信が5日午後の配信で少なくとも25便、英ガーディアン紙が少なくとも20件、AFP通信が5日昼の時点で約20便とするなど、集計した時刻や数え方によって違う。ガーディアン紙は、今週は2日以降に少なくとも28便が影響を受けたとしている。AFP通信が伝えた欧州航空航法安全機構(ユーロコントロール)の数字では、5日に欧州で予定されていた便は2万5,072便で、予告を受けたのはそのごく一部だ。

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誰が、何のために

予告の多くは電子メールで届いた。プラハ空港の広報担当者はAFP通信に、予告はどれも匿名のアドレスからのメールだったと話した。ダブリン空港などを運営するdaaの広報責任者はRTÉに、顧客サービス用など公開されているアドレスに匿名のメールが送られたと理解していると話した。

ローマの空港を運営するADRに届いたメッセージは、伊紙コリエレ・デラ・セラが文面を掲載し、同社の関係者がAFP通信に内容を認めた。たどたどしいイタリア語で、ヘルシンキ発とダブリン発のローマ行きの2便に爆発物を仕掛けたとし、「男性国家(Male State)の戦士」を名乗って「フェミニスト体制」への敵意を書き連ねていた。ロシアに同じ名前の極右運動があるが、AFP通信はメッセージとのつながりは確認できないとしている。

欧州委員会のツィツィコスタス委員(持続可能な交通・観光担当)はXで、加盟国やEU航空安全機関(EASA)と連絡を取り、EU全体の航空保安の情報交換の仕組みを動かしたと明らかにした。「民間人へのいかなる脅威も容認できない」とする一方、一連の事案が互いに関係しているかは「結論を出すには早すぎる」と述べた。国際航空運送協会(IATA)は、一連の予告を「航空輸送を混乱させようとする試み」と非難した。

ロイター通信によると、今回の予告について責任があると名指しした国はない。同通信は、欧州では多くの当局者が、ロシアが破壊工作や「ハイブリッド攻撃」を仕掛けていると非難しており、5日の予告で影響を受けたデンマーク、ポーランド、ルーマニアは、これまでにロシアを直接非難したことがあると伝えた。ロシアは関与を否定している。ガーディアン紙によると、今回の予告に特定の集団や、ロシア、イランなどの国家が関わっていることを示す情報はまだない。11月1〜2日に欧州各地のスーパーで相次いだ冷蔵設備の障害(関連記事)とも時期が重なるが、当局が二つを結びつけた発表は確認できていない。

旅行者への影響

ダブリン空港とコーク空港を運営するdaaは、両空港は通常どおり動いており、乗客は予定どおり旅行してよく、保安の規則にも変更はないと説明した。予告を受けた便では、乗客が機外に出て検査を待ったり、別の空港に降りたりした。LOTのパリ行きは機材を替えて運航し、エアリンガスは乗客を目的地に送る手配をすると説明した。日本人の乗客がいたかどうかは報じられていない。便が遅れたり欠航したりした場合のEUの旅客の権利は、3日の記事の末尾で説明した。

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日本の読者への解説

スペインの主な空港は、国が過半を出資するAenaが運営している。今回のマドリードのように予告が届くと、Aenaは治安当局と保安委員会を開き、機体や荷物の検査は治安警察の爆発物処理の専門班などが担う。航空保安の決まりは国の「民間航空保安計画(PNS)」にまとめられている。20ミヌートス紙によると、その公開部分は2026年1月14日の官報で更新された。計画は爆破予告を、匿名かどうか、本物か偽物かを問わず、飛行中や地上の航空機、空港、人などが爆発物で危険にさらされるおそれを示す通告と定義している。爆弾がある証拠がなくても、通告があれば保安の対応が始まる。

予告をどう評価するかについて、英国の操縦士の団体である英国航空操縦士協会(BALPA)の飛行安全担当ディレクターはガーディアン紙に、航空会社に届いた予告は評価の担当者に回され、「赤(信ぴょう性あり)」「琥珀(一部あり)」「緑(なし)」に分けられ、すでに飛んでいる機体では赤か緑のどちらかになると説明した。同氏によると、地上の機体では通常、乗客を降ろすことになり、飛行中ならできるだけ早く安全に着陸させることが優先される。ガーディアン紙は、わずかでも本物の可能性がある予告を前にすると、航空会社にはほとんど選択肢がないと指摘している。

「ハイブリッド攻撃」は、戦争には至らない形で、サイバー攻撃や破壊工作、ドローン、偽情報などを組み合わせて相手の社会を揺さぶる手法を指す。フランスの国防・国家安全保障事務総局のニコラ・ロッシュ事務総長は10月、議会で、欧州で「破壊工作、サイバー、ドローン、そしてもちろん諜報」とさまざまなハイブリッド攻撃が積み重なりつつあると述べた(RTÉ)。今回の予告がこれに当たるかどうかを、当局は明らかにしていない。

スペインでは、偽の危険を訴えて警察や救助の出動を招くことは犯罪になる。刑法561条は、地域社会に危険がある状況や、他人を救助する必要が生じる災害が起きたと偽って伝えたり装ったりし、警察や救急・救助の出動を招いた者に、3か月と1日以上1年以下の拘禁刑か、3〜18か月の日数罰金を科すと定めている。日数罰金は、裁判所が本人の経済状況に応じて1日当たりの額(2〜400ユーロ)を決め、その日数分を払わせる仕組みだ。今回の予告の送り主は特定されておらず、どの国でどの罪に問われるかは分かっていない。

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