スペイン中部トレド県のウルダ付近で10月28日朝に起きた高速列車の追突事故で、カスティーリャ・ラ・マンチャ州高等裁判所は、身元を確認した死者66人の中に日本国籍の1人が含まれると発表した。通信社エウロパ・プレスが11月2日0時10分、公共放送RTVEが0時35分(いずれもスペイン時間。日本時間は同日8時10分と8時35分)に報じた。共同通信によると、日本の外務省関係者も2日、日本人1人の死亡が確認されたとスペイン政府から連絡を受けたと明らかにした。死者は69人で、身元が分かっていない3人は外国籍とみられる。当局は別に、日本国籍1人とオーストラリア国籍2人の行方不明届がなお有効だとしている。日本政府は10月29日、乗客名簿に日本人2人の名前があるとスペイン当局から連絡を受けたと明らかにしていた。亡くなった1人や行方不明届の1人と、名簿の2人との対応は公式には示されていない。当局は、亡くなった人を特定できる情報を明らかにしていない。原因を巡っては司法の捜査と国の調査機関の調査が続き、プエンテ運輸相は3日に下院で説明する。マドリードとアンダルシアを結ぶ高速線は止まったままで、再開の日は公式には決まっていない。
日本人2人、これまでの経緯
木原稔官房長官は10月29日午前(日本時間)の記者会見で、乗客名簿に日本人2人の名前があるという連絡をスペイン当局から受けたと明らかにした。外務省は、在スペイン日本国大使館に現地対策本部を、東京の本省に対策室を設け、大使館員を事故現場に送った。
外務省は30日(日本時間)、2人は追突したRenfeのAVE(マドリード発セビリア行き)の切符を買っていたと明らかにした(TBS、FNN)。切符を買っていたことは、実際に乗っていたことを意味しない。この時点では身元の確認は途中で、スペイン側の犠牲者のリストに2人の名前はなかった。外務省は、2人が実際に乗っていたかどうかを含めて確認を続けていた。
11月2日未明に伝えられた州高等裁判所の発表で、身元が確認された死者に日本国籍の1人が含まれることが分かった。共同通信によると、外務省関係者は2日(日本時間)、スペイン政府から日本人1人の死亡が確認されたと連絡を受けたと明らかにした。テレビ朝日系(ANN)は、亡くなった1人は名簿の2人のうちの1人とみられ、もう1人は外務省などが安否の確認を続けていると伝えた。官房長官の会見や外務省の正式な発表は、この記事の時点では確認できていない。
同じ州高等裁判所の発表では、日本国籍1人の行方不明届がなお有効とされている。名簿の2人と、死亡が確認された1人、行方不明届が残る1人がそれぞれ同じ人かどうかは、公式には示されていない。行方不明届が残っていることは、その人が亡くなったことを意味しない。
州高等裁判所の発表は、亡くなった日本国籍の人を特定できる情報を明らかにしていない。捜査を担当する判事は、被害者や家族のプライバシーと尊厳を守るため、二次被害につながりうる情報や画像の取得・拡散・公表を禁じる決定を出した。身元の確認に必要な情報は対象外とされる。
身元確認は指紋とDNAで、残る3人は未確認
司法当局によると、身元が確認された66人のうち、53人は指紋、13人はDNAで確かめた。指紋は治安警察隊が、DNAは国立毒物学・法科学研究所が治安警察隊と協力して分析し、トレドとシウダー・レアルの法医学研究所で作業が進められている。発表を伝えた報道によると、60人の家族への通知が済んだ。日本国籍の人の家族に通知が済んだかどうかは、この数字からは分からない。
身元が分かっていない3人について、RTVEは、連絡がついた家族が身元確認の手続きを自ら行うためにスペインに来ることを望んでおり、当局は到着を待っていると伝えている。DNAによる照合では、親や子、きょうだいなど近い家族の試料が使われることがある。国外からの試料の受け渡しには、国際刑事警察機構(インターポール)も関わっていると報じられている。日本国籍の1人が指紋とDNAのどちらで確認されたのかは分かっていない。
身元が確認された66人は、スペイン国籍が54人、外国籍が12人。外国籍の内訳は、米国4人と、アルゼンチン、カナダ、チェコ、フランス、日本、メキシコ、ポルトガル、チュニジアが各1人だ(RTVE)。
死者は事故の翌日の29日に、68人から69人に増えた。報道によると、69人には運ばれた先の病院で亡くなった人が含まれる。AP通信は、夜のうちに新たに1人が見つかって69人になったと報じたが、増えた経緯は確認できていない。判事は31日、現場の捜索を急ぐため、車両の撤去を担う会社に、人員を増やして夜も作業を続けるよう求めた。
けが人は約40人が入院中
11月1日の時点で、カスティーリャ・ラ・マンチャ州の病院に31人、マドリード州の病院に9〜10人が入院していると報じられている。このうち十数人が集中治療室(ICU)にいる。ICUの人数は報道によって差があり、集計の時刻や差の理由は確認できていない。日本人のけが人がいるかどうかは分かっていない。
原因の捜査、管制の指示と交信の記録が焦点
事故は28日8時50分ごろ、マドリードとセビリアを結ぶ高速線のロス・イェベネスとウルダの間で起きた。プエンテ運輸相の説明では、8時30分ごろに信号システム「LZB」が通信の障害で止まった後、鉄道インフラ会社Adifの管制は、前に民間鉄道会社Iryoの列車が止まっているのに、AVEに通常の運転での再開を許した。規則では、時速40キロ以下の目視運転にすべきだったという。国の独立した事故調査機関(AITAT)は衝突したときのAVEの速度を暫定的に推計しているが、報道には時速160〜200キロとするもの(カデナ・セル)と160〜220キロとするもの(ラ・セクスタ)があり、正確な速度は記録装置の解析を待つ。
捜査を指揮するオルガスの裁判所の判事は、捜査を非公開にしている。治安警察隊は、報道で公開された一部の録音だけでなく、事故の前後の交信全体と運行の手順を調べている。2本の列車のブラックボックスは同隊が保管していて、1日朝の時点では、判事による開封と解析の指示を待っていた(ラ・セクスタ)。エル・パイス紙は、AVEに再開を許した管制の担当者が、身柄を拘束されない被疑者として治安警察隊に呼ばれ、供述しない権利を使ったと報じている。判事の前で話すとしているとも伝えられている。
プエンテ運輸相は11月3日17時から、下院の常設委員会で事故について説明する。Renfeは1日、LZBの通信障害が起きたときの新しい指示を運転士に出した。RTVEによると、該当する場合は指定の信号を越えるまで目視で時速40キロ以下で走り、再開の指示だけでは信号を越えられないとしている。運輸相は、新しい欧州標準の信号システム(ERTMS)について、マドリード〜セビリア線の設備は設置済みだが、試験と認可を経て使い始めるのは2027年の初めになるとの見通しを示している。
補償、外国人の乗客も対象
スペインの鉄道やバスの乗客は、強制の旅客保険(SOV)で守られている。鉄道の事故で亡くなった場合の給付は、1人72,121.46ユーロ。規則は国籍で対象を分けておらず、日本人を含む外国人の乗客も原則として対象になる。受け取る人の資格や必要な書類は、個別に確かめる必要がある。
これとは別に、EUの鉄道旅客の権利を定めた規則は、乗客が亡くなった場合、補償を受ける権利のある人が特定されてから遅滞なく、遅くとも15日以内に、亡くなった乗客1人あたり最低21,000ユーロを前払いするよう鉄道会社に求めている。Iryoは、亡くなった乗客1人あたり計35,000ユーロを前払いするとしている。日本人2人が切符を買っていたRenfeの前払いの額は、確認できていない。スペイン政府は3日の閣議で、被害者への支援策を決める予定だ。
家族・関係者の問い合わせ先
事故の後に案内された窓口は次のとおり。900で始まる番号はスペイン国内の無料番号で、国外からはつながらないことがある。日本の家族は、外務省や在スペイン日本国大使館にも問い合わせられる。
| 窓口 | 連絡先 |
|---|---|
| カスティーリャ・ラ・マンチャ州(家族向け) | 900 122 112 |
| Renfe(被害者・家族向け) | 900 10 10 20 |
| Iryo(被害者・家族向け) | 900 001 403 |
| オルガスの裁判所(被害者・家族向け) | 925 317 020 atencionvictimas.trenorgaz@justicia.es |
| 在スペイン日本国大使館 | +34 91 590 7600 |
| 外務省(東京、代表) | 03-3580-3311 |
事故のために設けられた窓口が、いまも同じ条件で受け付けているかは確認できていない。
高速線の再開日は決まらず
マドリードとアンダルシアを結ぶ高速線は事故の日から止まっていて、再開の日は公式には決まっていない。アンダルシアの地元紙は10月30日、事情を知る関係者の話として11月14日を目安と報じたが、作業の進み具合で変わりうる。Renfeはこの区間の切符の販売を12月13日まで止めているが、これは再開の予定日ではなく、設備が早く直れば販売を再開する可能性がある。Renfeは10月31日〜11月3日、マドリード〜シウダー・レアル〜プエルトリャノの間でバスによる代わりの輸送を案内している。Iryoは、影響を受ける区間で11月9日より前に出発する切符を売っていない。航空会社は、マドリード〜セビリアの便や座席を増やしている。
追悼
国の服喪は10月29日から31日までの3日間で終わった。ウルダの教会では31日正午に追悼のミサが開かれた。トレド大司教は、近くトレド大聖堂で犠牲者の追悼の葬儀を行うと表明しているが、日時は発表されていない。
この記事は11月2日2時40分(スペイン時間。日本時間は同日10時40分)までに確認できた情報に基づく。日本政府の発表や身元確認の進展があれば、続報で伝える。事故の詳しい経緯は事故当日の記事と29日の続報(いずれも当時の情報で、死者数などは古い)、信号システムLZBの障害は運輸相の説明の記事、運転士組合の要請はこちら、国鉄と民間の列車が同じ線路を走る仕組みはこちら、スペインのこれまでの鉄道事故はこちらで伝えている。













