スペインでは10月から11月にかけて、ストライキとデモが相次ぐ。山場は11月11日(水)の全国のゼネストで、それまでにも、マドリード州の公立学校の教員の無期限スト(10月14日から)、バルセロナの市バスの部分スト(8日に続き、14日から6日間)、グラナダの地下鉄の部分スト(10月20日から)、高速鉄道Ouigoの運転士のスト(10月30日、11月2日など)が予定されている。国外では、フランスの航空会社のパイロットと客室乗務員が10月17〜21日のストを予告しており、スペインとフランスを結ぶ便やパリ乗り継ぎの便に影響が出るおそれがある。デモでは、10月12日(月)にバルセロナでセウタとの連帯を掲げる行進、10月24日(土)にマドリードで年金受給者の全国デモがある。サラゴサでは清掃とゴミ収集のストがピラール祭と重なっている。一方、10月28日から予定されていた医師の全国の無期限ストは、議会の解散を受けて延期された。10月9日時点で確認できた予定を日付順にまとめた。
一覧(10月9日時点)
| 日付 | 内容 | 場所 |
|---|---|---|
| 10月9日(金)19時 | 住宅デモ(立ち退き後に亡くなった2人を追悼) | バルセロナ |
| 10月12日(月)午前 | 「セウタと共に」の行進 | バルセロナ |
| 10月13日(火)から | 分別ゴミ収集の無期限スト | ランサローテ島 |
| 10月14日(水)から | 公立学校の教員の無期限スト(CSIFは14〜16日に終日スト) | マドリード州 |
| 10月14・15・20・22・27・29日 | 市バス(TMB)の部分スト | バルセロナ |
| 10月17日(土)〜21日(水) | パイロット・客室乗務員のスト予告 | フランス |
| 10月20日(火)から | 地下鉄の部分スト(1月まで、11月27・28日などは終日) | グラナダ |
| 10月24日(土)12時 | 年金受給者の全国デモ | マドリード |
| 10月30日(金)、11月2日(月) | Ouigo運転士の24時間スト(11月6・9日は部分スト) | Ouigoの全路線 |
| 11月11日(水) | 全国のゼネスト、アンダルシアの教育スト | 全国 |
| 継続中 | サラゴサの清掃スト、ハエンの市バスのスト、バルセロナ空港の地上業務スト、9空港の管制塔のストなど | 各地 |
10月9日(金):バルセロナで住宅デモ
19時にウニベルシタット広場から。立ち退きのあとに亡くなったマドリードのマリカルメンさんと、ロスピタレートのオルガさんを追悼し、借家人組合などが呼びかけた。詳しくはデモの記事を。同じ19時、マヨルカ島のパルマでは、ガザでの戦争から3年に合わせてパレスチナ連帯のデモがスペイン広場から大聖堂まで行われる(地元紙ウルティマ・オラ)。
10月12日(月):バルセロナで「セウタと共に」の行進
スペインの祝日「イスパニアの日」に、7月末にセウタで越境が急増した事態を受けて、住民への連帯を掲げる行進「カタルーニャはセウタと共に。ひとつのスペイン」が行われる。呼びかけたのは、セウタ支援の団体「セウタのために団結を(Unidos por Ceuta)」と、カタルーニャの独立に反対する団体(カタルーニャ・スマ、エスパーニャ・イ・カタランス、サ・アカバットなど)で、国民党(PP)、Vox、シウダダノスも後押ししている。11時30分にグラシア通りのカサ・ミラ(ラ・ペドレラ)の横に集まり、カタルーニャ広場まで歩いて声明を読み上げる。Voxは11時にプラサ・デル・レイを出て、カタルーニャ広場で合流する。同じ日には、ノウ・バリス地区で反ファシストの行進(12時)、パラレル通りで反植民地を掲げる行進(18時)も予定されている(バルセロナの公共放送ベテベ)。観光客の多いグラシア通りで交通規制が出る可能性がある。
10月13日(火)から:ランサローテ島の分別ゴミ収集スト
カナリア諸島のランサローテ島で、島の分別収集を請け負うウルバセルの従業員が、13日から無期限のストに入る。CCOOが支援し、20か月進んでいない労働協約の交渉と、2024年末から据え置かれた給与の改善、週末の休みを求めている。最低限の業務は報じられていない。
10月14日(水)から:マドリード州の教員の無期限スト
CCOO、UGTなどの統一スト委員会が、公立学校の教員の無期限ストを呼びかけた。CSIFは14〜16日に終日スト、その後は12月18日まで指定日に部分ストを行う。要求の柱は授業時間の削減と月600ユーロの賃上げ。州は9日、最低限の業務を定める命令を官報に載せ、校長に学校を開けて子どもを受け入れることを義務づけた。詳しくは教員ストの記事を。
10月14日から6日間:バルセロナの市バスの部分スト
8日(木)に続き、TMBのバスが、10月14日(水)、15日(木)、20日(火)、22日(木)、27日(火)、29日(木)の朝9〜11時、夜19〜21時、23時〜深夜1時にストを行う。最低限の運行は20〜40%で、地下鉄、トラム、空港バスのアエロブスは対象外。詳しくはバスストの記事を。
10月17〜21日:フランスのパイロット・客室乗務員のスト予告
フランスのパイロットの労組SNPLと、客室乗務員の労組UNSA PNC、SNPNC-FO、SNGAF、UNACが共同で、10月17日(土)0時1分から21日(水)23時59分まで(パリ時間)の全国ストを予告している。年金を受け取りながら働き続ける制度の改革(2027年1月から適用)をめぐり、乗務員を対象から外すよう求めている。対象はフランスの労働法の下で働く乗務員で、エールフランスやトランサヴィアが主に影響を受けるとみられる。旅行情報サイトなどは、コルセール、フレンチビー、エール・カライブ、エール・コルシカ、エール・オーストラル、easyJetとボロテアのフランスの契約の乗務員も対象になりうるとしている。10月9日の時点で予告は撤回されておらず、欠航を発表した会社もない。組合は政府との協議に応じる姿勢を見せている。乗務員は48時間前までに参加を届け出るため、欠航の発表は直前になりやすい。スペインとフランスを結ぶ便や、パリで乗り継ぐ日本との便を予約している人は、出発の数日前に航空会社の案内を確かめたい。
10月20日(火)から:グラナダの地下鉄の部分スト
グラナダの地下鉄(運行はアバンサ)の従業員代表委員会が、労働協約の交渉の行き詰まりに抗議して、10月20日から2027年1月まで計30日の部分ストを予告した。10月は20日(火)、21日(水)、23日(金)、26日(月)、27日(火)、30日(金)。11月27日(金)・28日(土)、12月28日(月)、1月5日(火)は終日のストになる。マラガやセビリアの地下鉄並みの賃金と条件を求めている(地元紙アンダルシア・インフォルマシオン)。部分ストの時間帯と最低限の運行は報じられていない。アルハンブラ宮殿を訪れる旅行者も、市内の移動で影響を受ける可能性がある。
10月24日(土):マドリードで年金受給者の全国デモ
12時にアトーチャを出発し、プエルタ・デル・ソル(ソル広場)まで行進する。年金受給者の団体の全国組織COESPEや労組のCGTなどが呼びかけ、各地から貸し切りバスで参加者が集まる。最低年金を最低賃金(現在は月1,221ユーロ、年14回払い)の水準まで引き上げること(CGTは按分なしで月1,285ユーロを要求)、実際の物価に合わせた年金の改定、男女の格差の解消、65歳での退職などを求める。同じ趣旨のデモは2024年、2025年の10月にもマドリードで開かれた。
10月30日(金)・11月2日(月):Ouigoの運転士がスト
フランス国鉄(SNCF)の子会社で、スペインの高速鉄道を運行するOuigoの運転士が、10月30日(金)と11月2日(月)に24時間のスト(0時1分〜23時59分)を行う。11月6日(金)と9日(月)は朝6〜12時と夕方18時〜23時59分の部分スト、12月4日(金)と8日(火)も同じ時間帯の部分ストを予定している。呼びかけたのは運転士の労組Semafで、労働協約の順守(勤務時間や休息、待機勤務の扱いなど)を求めている。会社側は協約は守っているとしている。11月1日の万聖節の連休などに重なり、マドリード、バルセロナ、バレンシア、アリカンテ、サラゴサ、セビージャ、マラガ、コルドバなどを結ぶ路線に影響が出るおそれがある。最低限の運行は交通省がこれから決める。Renfeでも運転士の労組Semafが協約の不履行を理由にストの可能性を示しているが、日程はまだ出ていない。
11月11日(水):全国のゼネスト
借家人組合の連合とCCOO、UGTなどが、住宅と賃金を掲げて24時間のゼネストを行う。両労組がそろうゼネストは2012年以来14年ぶりで、11月29日の総選挙の選挙運動が始まる2日前に当たる。鉄道や航空の最低限の運行は、労働省への届け出(実施の10日前まで)の後に決まる(ゼネストの記事)。同じ日、アンダルシアでは教員の労組USTEAとCGTが、学級の人数の削減や教員の増員などを求めて教育ストを呼びかけている。
続いているスト
サラゴサの清掃・ゴミ収集:FCCの従業員が10月6日(火)21時から無期限のストを続けている。協約の更新が争点。市はピラール祭の期間(10月10日7時〜19日21時)の最低限の業務を約94%と高く定め、組合は「スト権を奪うものだ」として裁判に訴える構えだ。最低限の業務が非常に高いため、祭りに訪れる人への影響は小さいとみられる。
ハエンの市バス:ALSAグループの会社が運行するハエンの市バスで、従業員が賃金の格差(グラナダやアルメリアの同業者より低い)などを理由に無期限のストを決めた。州政府はサン・ルーカス祭の増便も含めて最低限の運行を50%と定めた。8日午後に労使の交渉が再開されたが、結果は伝わっていない(ニュースサイトのモンクロア・コム、8日)。
バルセロナ空港の地上業務:Groundforceの無期限ストが続いている(空港ストの記事)。
9空港の管制塔:民間の管制会社SAERCOの管制官らが、4月17日から無期限のストを続けている。対象はヘレス、ア・コルーニャ、マドリードのクアトロ・ビエントス、セビージャ、ビーゴ、エル・イエロ、フエルテベントゥラ、ランサローテ、ラ・パルマの9空港。交通省は便の32〜80%(救急などは100%)を守るよう定めており、欠航は報じられていない。
マドリード・バラハス空港の手荷物設備の保守:手荷物の自動仕分け設備の保守を請け負う会社の従業員が、7月からは週5日(月・木・金・土・日)の朝5〜7時と13〜15時に部分ストを続けている。2025年1月から形を変えながら続いており、目立った影響は報じられていない。
ブルゴスの自動車部品工場:DAUオートモシオンの従業員が10月1日から、10人の解雇と協約の交渉の停滞に抗議して無期限のストを続けている(地元紙ブルゴスコネクタ、10月5日時点)。
延期:医師の全国の無期限スト
医療従事者の身分を定める「エスタトゥト・マルコ」の法案に反対して、医師の労組CESMなどが10月28日から予定していた全国の無期限ストは、10月7日に延期が決まった。議会の解散で法案が廃案になり、新しい政府ができるまで交渉相手がいないためだ。スト委員会は「撤回ではない」とし、新政府が要求に応えなければストを再開するとしている。
日本の読者への解説
スペインのストは、事前に日時が届け出られ、交通や医療では行政が最低限の運行や業務を定めるため、突然すべてが止まることはまずない。それでも、最低限の運行が20%なら5本に1本で、駅や停留所での待ち時間は大きく延びる。旅行者は、スト日とその時間帯を避けて移動を組むのが一番確実だ。鉄道や航空便は、最低限の運行が決まると運休する便の一覧が出るので、予約した会社からのメールやアプリの通知を見落とさないようにしたい。
航空便については、EUの規則で、航空会社自身の従業員が賃金などを求めて行うストによる欠航や大幅な遅れは、定額の補償の対象になりうる(2021年のEU司法裁判所の判決)。一方、管制官など航空会社の外の人のストは「特別な事情」とされ、補償されないことが多い。同じ判決は、自社の従業員のストでも、政府にしか応えられない要求によるものは「特別な事情」に当たりうるとしている。年金制度の改革に反対するフランスの乗務員のストは、これに当たる可能性があり、定額の補償が出るかどうかは分からない。ただし欠航した場合の払い戻しや振り替え、待つ間の食事などは、理由を問わず航空会社に求められる。
当サイトでは、ここに挙げたストやデモについて、日時の変更や最低限の運行が分かり次第、個別の記事や追記で伝える。













