バルセロナで10月9日(金)19時から、ウニベルシタット広場を出発点に住宅をめぐるデモが行われる。立ち退きのあとに亡くなった2人の女性、マドリードのマリカルメン・アバスカルさん(87)と、バルセロナ近郊ロスピタレート・デ・ジョブレガートのオルガさん(54)を追悼し、「オルガとマリカルメンのために。もう一人も死なせない」を掲げる。呼びかけたのは借家人組合(Sindicat de Llogateres)、PAH(住宅ローン被害者の会)など住宅運動の4団体。告知文や報道では「住宅ビジネスは人を殺す」という言葉も使われている。同じ9日の正午には、借家人組合の全国連合が大手労組と連携し、全国の職場と学校で1分間の黙とうを呼びかけた。前日の8日夜にはマドリードで、マリカルメンさんの死を悼む行進に政府代表部の暫定の集計で約2万人が加わり、目立った混乱はなく終わった。運動は11月11日(水)のゼネストに向かっている。バルセロナでは5日の住宅デモの後に中心部で騒乱が起きており、デモのルートと交通規制は9日朝の時点で確認できていない。夕方に市の中心部を移動する人は、地下鉄やバスの運行情報を確かめたい。

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デモの概要

日時:2026年10月9日(金)19時

場所:ウニベルシタット広場(Plaça Universitat)。地下鉄L1・L2のウニベルシタット駅の真上で、カタルーニャ広場から歩いて数分の場所にある。

呼びかけ:借家人組合(Sindicat de Llogateres)、カタルーニャ社会主義住宅組合(SHSC)、カタルーニャ住宅組合連合(COSHAC)、PAH(Plataforma d'Afectats per la Hipoteca、住宅ローン被害者の会)の4団体。学生組合(Sindicat d'Estudiants)も参加を呼びかけている。

標語:借家人組合の告知は「オルガとマリカルメンのために。もう一人も死なせない(Per l'Olga i la Maricarmen. Ni una mort més.)」で、同じ告知の中で「住宅ビジネスは人を殺す(El negoci de l'habitatge mata)」とも訴えている。地元紙メトロポリ・アビエルタやelDiario.esは「オルガとマリカルメンのために。住宅ビジネスは人を殺す」を標語として伝えている。

ルートと規制:9日朝の時点で、主催者はルートを公表しておらず、州警察(モソス・ダスクアドラ)、市警察、バルセロナ交通局(TMB)による規制や迂回の告知も確認できていない。5日のデモでは、主催者が当日になってルートを公表した。参加者の見込みも発表されていない。

追悼される2人

マリカルメン・アバスカルさんは、マドリードのレティーロ地区で約70年暮らした借家から9月23日に立ち退かされ、10月7日にグレゴリオ・マラニョン病院で亡くなった。87歳だった。立ち退きの様子が広く報じられて抗議が全国に広がり、所有者との合意で家に戻れる見通しになっていたが、退院を待たずに亡くなった。立ち退きを止める政府の政令が10月2日に国会で否決され、サンチェス首相が議会を解散して11月29日の総選挙を決めた流れの中心にいた人物で、elDiario.esは「スペインの住宅をめぐる反乱に火をつけ、選挙を早めた女性」と書いた(総選挙の記事)。

オルガさんは、バルセロナに隣接するロスピタレート・デ・ジョブレガートのサンタ・エウラリア地区に住んでいた54歳の女性で、娘が2人いた。カタルーニャ通信(ACN)やelDiario.esによると、約20年前に住宅ローンで買った部屋の返済が難しくなり、代物弁済で銀行サバデルに部屋を引き渡したあとも、低い「社会家賃」で住み続けていた。その後、部屋は投資ファンドのプロモントリア・コリセウム・リアル・エステートに売られ、ファンドは社会家賃の継続を拒んで立ち退きを求めた。立ち退きは4月15日に執行され、オルガさんは約5か月後の9月7日に自ら命を絶った。地元の住民団体は行政の支援が行き届かなかったと批判し、ロスピタレート市は、社会福祉部が継続して関わり、2020年から住宅の相談に乗り、仮住まいのための臨時の給付も出したと説明していると地元メディアが伝えている。住宅運動の団体は2人の死を「住宅ビジネスの犠牲」と位置づけ、立ち退きの停止を求めている。

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マドリードでは8日夜に約2万人

マリカルメンさんが亡くなった翌日の8日夜、マドリードでは借家人組合(Sindicato de Inquilinas)が先頭に立ち、プエルタ・デル・ソル(ソル広場)から彼女が暮らしたアルカルデ・サインス・デ・バランダ通りの家まで、約4キロを歩いた。呼びかけは20時で、EFE通信によると、参加者は20時半ごろ、9月26日から泊まり込みが続くソル広場のアルカラ通りの角に集まり、そこから歩き出した。参加者は政府代表部の暫定の集計で約2万人。主催者側の人数は見当たらない。

行進はおおむね静かに進み、市庁舎前のシベレス広場で1分間の黙とうをささげ、家の前では携帯電話のライトを掲げて静かに立ち、長い拍手を送った。参加者は「家賃で稼ぐ仕組み(レンティズモ)は人を殺す」「ただの死ではない、殺人だ」「私たちはみなマリカルメンだ」と声を上げた。EFE通信などによると、衝突や逮捕は報告されていない。同じ夜、サラゴサ、セビリア、コルドバ、グラナダ、アルメリア、ログローニョでも集会が開かれ、数百人が追悼した(EFE通信)。

マドリードの借家人組合の広報担当バレリア・ラクさんは8日、行進に先立って報道陣に対し、マリカルメンさんが残したのは、レンティズモという「この社会の災い」を終わらせる必要があるという多くの人の合意だと語った。11月11日のゼネストについては重要な日だとしたうえで、その日も「マリカルメンも、レンティズモの直接の犠牲者の誰一人も、私たちに返してはくれない」が、闘いを続けることはできると述べた。マドリードの行進については、当サイトの速報記事も参照してほしい。

5日のバルセロナでは、デモの後に騒乱

バルセロナでは10月5日にも住宅デモがあり、市警察の集計で約2万人(主催者発表12万人)が参加した。デモ自体は平穏だったが、終了後にカタルーニャ広場の周辺で騒乱が起き、13人が逮捕され、州警察の警官30人がけがをした(5日の騒乱の記事)。カタルーニャ広場では9月29日から住宅を求める泊まり込みが始まっていた。

州政府のヌリア・パルロン内務相は8日の州議会で、「カタルーニャで抗議の権利が侵されることはないが、暴力をふるう者には警察が対処する」と述べ、デモが終わった後に破壊行為をする人には厳しく臨むとした(メトロポリ・アビエルタ)。今夜のデモを名指しした警備の発表は、9日朝の時点では確認できていない。

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11月11日のゼネストへ

住宅運動は、11月11日(水)の24時間のゼネストに向けて動いている。日付は10月7日、借家人組合の連合とCCOO、UGTなどの労組がそろって発表した。カタルーニャの借家人組合(Sindicat de Llogateres)は、ゼネストの日付を発表する2分前にマリカルメンさんの訃報を知ったと明かしている。ストの要求や交通への影響はゼネストの記事にまとめた。

日本の読者への解説

スペインの住宅運動がいま使う言葉に「レンティズモ(rentismo)」がある。住宅を持つ側が家賃収入で稼ぐことを優先する仕組みを指し、借家人組合は、ファンドが古い借家人のいる建物を買い取り、契約の更新を拒んだり家賃を大きく上げたりして住民を追い出す動きを批判している。マリカルメンさんの家も、オルガさんの部屋も、最後は投資会社やファンドの手に渡っていた。

オルガさんの例に出てくる「代物弁済」は、住宅ローンを返せなくなった人が家を銀行に引き渡して借金を清算するやり方だ。スペインでは家を手放しても残りの借金が消えないのが原則で、2008年の金融危機の後にはそうした人が大勢出た。住宅ローン被害者の会(PAH)は代物弁済を誰でも使えるようにするよう求めてきたが、今も銀行の同意か、困窮世帯向けの条件を満たす必要がある。引き渡した後に安い「社会家賃」で住み続けられるのも、銀行との合意などによる場合に限られ、物件がファンドに売られると更新されないことがある。

2人の死は、11月29日の総選挙を前に住宅が最大の争点になるなかで、運動の象徴になった。デモは基本的に平和的に行われるが、バルセロナでは5日にデモの後で騒乱が起きた。旅行や仕事で今夜バルセロナの中心部を通る人は、ウニベルシタット広場からカタルーニャ広場にかけての一帯を避けるか、TMBの運行情報を確かめてから移動してほしい。当サイトでは、デモの規模や様子が分かり次第、この記事に追記する。

つらい気持ちを抱えている人へ:スペインでは、自殺を考えるほど苦しいときの相談窓口「024」(無料、24時間)に電話できる。スペイン語以外でも、電話通訳を通して相談できる。命の危険が迫っているときは112へ。日本国内では「#いのちSOS」(0120-061-338、無料、24時間)や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの窓口がある。

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