スペインの大手労働組合、労働者委員会(CCOO)と労働総同盟(UGT)が呼びかける24時間のゼネストは、11月11日(水)に行われる見通しになった。UGTのペペ・アルバレス書記長が10月7日朝、公共放送RTVEの番組で「CCOOと日付を決めた」と明らかにした。掲げるのは住宅と賃金で、家賃の上限、公営住宅の拡充、4〜7%の賃上げなどを求める。10月2日に政府の住宅の政令2本が国会で否決され、首相が議会を解散したことが背景にある。両労組がそろう全国の24時間ゼネストは2012年11月14日以来、14年ぶりで、サンチェス政権のもとでは初めてになる。11月29日の総選挙の選挙運動が始まる11月13日の2日前に当たる。借家人組合の連合が日付を提案し、ガリシアのCIGなども加わる。一方、公務員系のCSIFと、USOは参加せず、経営側は「容認できない」と反発している。旅行者にとっては、鉄道や航空便が大きく減る可能性がある。最低限の運行はまだ決まっていない。2012年のゼネストでは、交通省と労組が1週間前に合意し、高速鉄道AVEは20%、近郊線は約30%しか走らず、空港公団Aenaによると600便あまりが欠航した。
借家人組合が日付を提案、UGTが確認
CCOOとUGTは5日、住宅と賃金を掲げた24時間のゼネストを秋に行うことで合意していた。両労組の最高機関の承認が条件で、日付は社会団体や借家人組合と相談して決めるとしていた(バルセロナのデモの記事)。7日朝、借家人組合の連合が、マドリードのソル広場で泊まり込みを続ける人たちとも相談したうえで11月11日を提案した。労組筋によると、4日も候補に挙がっていた。
アルバレス書記長は同じ朝、RTVEの番組で「これらの団体が示してきたとおり、11日に加わる」「CCOOと日付は決めた」と述べた。借家人組合は声明で「最終的な日付は今日午後の会合で決まる」とし、7日19時にマドリードで参加団体の会合が予定されている。正式な共同発表はその後になる。ストは実施の10日前までに労働省に届け出る必要がある。
要求は家賃の上限と4〜7%の賃上げ
5日の共同声明が掲げた要求は、4〜7%の賃上げと物価に連動した賃金の見直し条項、労働協約に住宅を確保しやすくする条項を入れること、恒久的な公営住宅の整備、家賃の上限、2023年の住宅法の実効的な適用だ。スローガンは「住宅への権利と、それを払えるまともな賃金を」。
CCOOのウナイ・ソルド書記長は「住宅が多くの家庭の賃金の半分を食っている」「賃上げのために経営者団体と交渉する手立てがない」と語った。マドリードの借家人組合のバレリア・ラク広報担当は、3日の大規模デモの直前に「この国の最大の問題に手をつけないまま、もう4年間を過ごすことは許さない。労働者の歴史的な道具、ゼネストを取り戻したい」と述べていた。
選挙との関係について、アルバレス書記長は「選挙運動が始まる前の11月が妥当だ」と話していた。選挙運動は11月13日から27日までで、11日はその直前になる。
加わる労組、加わらない労組
EFE通信などによると、CCOO、UGTのほか、CGT、ガリシアのCIG、借家人組合の連合が参加し、カタルーニャ独立派の労組インテルシンディカルも加わる。CIGは11月第1週に独自のゼネストを予定していたが、11日に合わせた。バスクのELAも同じ11日にストを行うと発表したが、バスクとナバラを優先するとしている。アナキスト系のCNTは検討中だ。
公務員などで組織するCSIFは「私たちの行動は労働分野の要求だけに応える」として参加せず、住宅の超党派合意を求めた。USOも、暫定の政府と解散した議会では要求を受け止める相手がいないとして加わらない。UGTのセウタ支部は「何か月も街が機能するよう求めてきたのに、止まれとは言えない」と、地元での不参加を本部に伝えた。
経営者団体のCEOEとCepymeは6日の共同声明で、要求は「本質的に労働に関するものではない」とし、ストを「容認できない」と批判、法的な根拠にも疑問を示した。ガラメンディCEOE会長は6日、民放のテレビで「違法かどうかは日付が分かってから言うが、すべてが違法だと示している」と述べた。
政府は「正当な要求」、PPは「サンチェス氏のため」
サンチェス首相は6日、「スト権という憲法上の権利の行使について、政府が言うことは何もない」と述べた。ボラーニョス法相は「正当な要求だ」と語り、社会労働党(PSOE)のモンテロ副書記長は「ゼネストはふつう政府に対して行われるが、今回は野党に対して行われる」と話した。
国民党(PP)のボルハ・センペル報道官は「サンチェス氏という選択肢を有利にする意図をもった、きわめて政治的な決定だ」と批判し、Voxのアバスカル党首も「野党に対してゼネストをしに街に出る」と皮肉り、労組を「ごろつき」と罵った。
旅行者へ:最低限の運行はまだ未定、2012年は高速鉄道20%
スペインのゼネストでは、政府が鉄道や航空、病院などの最低限の業務を決める。通常、国の鉄道と航空は交通省、地域の交通や医療、教育は各州が決める(カタルーニャの近郊線ロダリエスは州政府)。2012年11月14日のゼネストでは、交通省が1週間前の11月7日に労組と合意して国の交通の水準を発表し、都市の細目や航空会社の欠航の一覧は前日に出た。11月11日分は、まだ何も決まっていない。
参考までに、2012年11月14日の最低限の運行は次のとおりだった。
| 交通機関 | 2012年11月14日の最低限の運行 |
|---|---|
| 高速鉄道AVE(幹線) | 20% |
| 近郊線(セルカニアス) | 平均30%、朝6〜9時は35% |
| 国内線(本土内) | 10% |
| 島と本土を結ぶ便(カナリア、バレアレスなど) | 50% |
| 欧州経済領域への便/その外への便 | 20%/40% |
| マドリードの地下鉄 | 朝6時半〜9時半は35%、それ以外は30% |
| バルセロナの地下鉄・FGC・ロダリエス | 朝6時半〜9時半と夕方16時半〜20時半に33% |
この日はAenaによると600便あまりが欠航した。11月11日前後にスペイン国内を移動する人は、鉄道会社や航空会社の運休の案内を前日まで確かめ、移動日をずらせるなら避けるのが無難だ。各都市ではデモも予定されるとみられ、経路はまだ発表されていない。
日本の読者への解説
日本では、全国規模で産業をまたいで一斉に仕事を止めるゼネストは、ほとんど例がない。スペインでは民主化後、大手労組によるゼネストが1980年代から何度も行われ、2010年と2012年には財政緊縮や労働改革に反対して打たれた。今回の特徴は、要求の中心が賃金だけでなく住宅で、借家人組合が日付を決める役を担った点だ。新たに部屋を借りる場合の家賃が世帯の手取りの4割近くを占めるとされる状況で、住宅は11月29日の総選挙の最大の争点になっている(総選挙の記事)。最低限の運行が決まり次第、当サイトで伝える。













