バルセロナで10月5日(月)夜、住宅を求めるデモのあと、カタルーニャ広場とグラシア通りの周辺で騒乱が起きた。カタルーニャ州警察(モソス・デスクアドラ)は公共秩序を乱した容疑で13人(成人男性12人、未成年の少女1人)を逮捕し、警官30人が軽いけがをした。バリケードが28か所に築かれ、消防は22件の火を消した。市の集計では燃えたゴミ収集コンテナは32基、街頭設備の被害は4万2千ユーロを超える見込みだ。カタルーニャ広場のザラの店舗のショーウィンドーが標的になり、ランブラの工事現場の資材が投石に使われ、シェア自転車のビシングが燃やされた。デモ本体は市警の発表で2万人、主催者の発表で12万人が参加し、同じ日に発表された11月29日の総選挙に向けて「ゼネストに日付を」と訴えた。州のヌリア・パルロン内務相は「いつも一部の人間が動員の意味をゆがめることに精を出す」と述べ、2万人の大多数は平和的だったと強調した。騒乱は21時30分ごろから深夜0時すぎまで続き、6日は新たな衝突は報じられていない。
デモ本体:「サンチェスが選挙に日付を付けた日、私たちはゼネストに」
デモは借家人組合(Sindicat de Llogateres)、カタルーニャ住宅組合連合、社会主義住宅組合、住宅ローン被害者の会(PAH)の4団体が呼びかけた。もともと3日(土)にロスピタレートで予定されていたが、大雨の警報で中止され、5日19時にウルキナオナ広場集合に変わった(3日のマドリードなどのデモ)。
行進はロンダ・サン・ペラから凱旋門、サン・ジョアン通り、グラン・ビアを経てグラシア通りとの交差点で終わった。参加者が多く、途中で経路を変えたと報じられている。社会主義住宅組合のジゼラ・ベルムデス広報担当が演説で掲げた要求は、大口の所有者・銀行・ファンドが持つ住宅の収用、家賃の50%引き下げ、期限のない賃貸契約、そして秋のゼネストだ。沿道では「理解できない、家のない人と人のいない家」「家主に罪、政府に責任」「マリカルメン、あなたは一人じゃない」の声が上がった。マリカルメンさんは9月にマドリードで約70年暮らした家から退去させられた87歳の女性だ(関連記事)。
拡声器からは「今日ペドロ・サンチェスは総選挙に日付を付けた。今日は私たちがゼネストに日付を付ける番だ」と呼びかけがあった。借家人組合のカルマ・アルカラソ広報担当は「住宅の立法期が始まった」「このストを成功させたい」と述べた。大手の労働組合CCOOとUGTは同じ5日、賃金と住宅を掲げた24時間のゼネストを秋に行うと合意しており、UGTは選挙運動の期間(11月13日〜27日)には重ねないとしている。借家人組合は、日付は今週末に分かるとしている。
騒乱の経過:カスプ通りの放火から、カタルーニャ広場へ
最初の火は、デモがまだ続いていた21時30分ごろ、カスプ通りで上がった。ゴミ収集コンテナに火がつけられ、駐車中の車に燃え移った。22時ごろの終了の数分前には、グラシア通りとディプタシオー通りの角(証券取引所の近く)で覆面の集団が警官隊の列を破ろうとし、警官は警棒を使った。終了が告げられたあとの22時ごろ、警官隊の列にロケット花火や瓶が投げられ、22時15分ごろには近くの飲食店のテーブルや椅子が警官に投げつけられてバリケードになり、機動隊(BRIMO)が最初の突入をした。
衝突はランブラ・デ・カタルーニャ、ペライ通り、ランブラ北端のカナレタスへ広がった。ランブラの工事現場から持ち出した資材が投石に使われ、カナレタス一帯では投石と突入が繰り返された。モソスは最終的に若者らをカタルーニャ広場の中央へ押し込んだ。そこには9月29日から住宅を求める泊まり込みのキャンプがあり、2日の時点でテント200張超、400人超が集まっていた。モソスは「覆面の数人は、カタルーニャ広場に設けられた抗議のキャンプを隠れ場所にして警察の行動から逃れようとした」と発表している。
モソスの発表によると、投げられたのは「消火器、木や鉄の棒、石、敷石、ナイフ、液体入りのガラス瓶」で、「攻撃の激しさに対して発射器を限定的に使った」。報道によると、衝撃を抑えたいわゆるフォーム弾の発射器と警棒が使われた。暴力行為は深夜0時まで続いたとモソスは発表し、0時45分ごろには目立って静かになった。デモ参加者や市民の負傷者の数は発表されていない。
逮捕者は11人を送致、市は「暴徒は約2,000人」
逮捕された13人のうち、未成年の少女は同じ夜に釈放され、成人11人は6日朝に裁判所へ送られた。残る1人は裁判所の呼び出しを待つ形で釈放された。パルロン州内務相は映像から「糸をたぐる」として、追加の逮捕を否定していない。
バルセロナ市の治安担当アルベルト・バッリェ副市長は暴徒を約2,000人と見積もり、平和的なデモと騒乱は「2つの現実」だとして、騒乱を「断じて非難されるべきだ」と述べた。「デモの権利は、街頭設備と公共の財産と市民を完全に尊重して行使することを求める」とも述べ、「この種の破壊は市の最近の歴史で初めてではない」と付け加えた。市の集計では燃えたコンテナは32基、街頭設備の被害は4万2千ユーロを超える見込み。消防の火災22件、モソスのバリケード28か所とは数え方が違う。
パルロン州内務相は6日朝、「いつも一部の人間が動員の意味をゆがめることに精を出す」「13人の逮捕と30人の警官の軽傷という残された光景は、よい知らせではない」と述べ、潜入者の仕業かどうかは「結論できない」とした。借家人組合のアンリク・アラゴネス広報担当は、主催者が演説をしている最中に警察がデモの解散を告げ始めたと進め方を批判し、騒乱については「私たちはそこにいなかったので、それ以上は知らない」と話した。
キャンプの行方と、この秋の見通し
カタルーニャ広場のキャンプについて、パルロン州内務相は1日に「撤去はしない。抗議には敬意を払う」と述べていた。騒乱のあと、バッリェ副市長は6日に「先走りたくない」「事態の推移を見る」と答え、「これは存在する現実で、国内のほかの場所でも見られる」と付け加えた。国民党(PP)の市議団は2日の時点で撤去を求めている。キャンプはデモの主催団体とは別の集会が運営しており、いつまで続けるかは集会が決めるとしている。
3日のマドリードのデモは政府代表部の発表で7万人、バレンシアでは不動産投資の会議の会場で衝突があり、5人が逮捕されたが、5日に判事が5人を予防措置なしで釈放した(捜査は続く)。バルセロナでは9月11日のカタルーニャの日の夜にも、ネオナチ団体の行進への対抗デモのあとに18人が逮捕されており、デモのあとに少人数が夜に騒乱を起こす型が続いている。
旅行者へ:場所はカタルーニャ広場からグラシア通り、時間は夜
騒乱が起きたのは、カタルーニャ広場、ランブラの北端(カナレタス)、ペライ通り、グラシア通りのグラン・ビアからディプタシオー通りまで、カスプ通り、ランブラ・デ・カタルーニャで、いずれも観光の中心だ。時間は21時30分から深夜0時すぎ。6日は新たな衝突の報道はないが、キャンプは続いており、ゼネストの日付が決まれば、その日の夕方以降は同じ一帯でデモがある可能性が高い。6日午後から7日にかけては大雨の警告も出ている。デモの日は、カタルーニャ広場の地下鉄駅やバスの迂回を覚悟し、夜はこの一帯の飲食を避けるのが無難だ。
日本の読者への解説
バルセロナのデモは、2万人(市警)から12万人(主催者)という数字の幅が示すように、大規模で、ほとんどは平和的だった。騒乱を起こしたのは市の見立てで約2,000人、警察は「覆面の集団」と表現している。2019年10月の独立派指導者への判決、2021年2月のラッパー収監への抗議でも、同じカタルーニャ広場とウルキナオナ広場の一帯で、デモのあとに夜の衝突が続いた。今回は、政府の住宅政令が2日に国会で否決され、首相が5日に総選挙を発表した、その当日という政治の節目に重なった。住宅は11月29日の総選挙の最大の争点になる見通しで、労組のゼネストの日付が決まれば、その日が次の山になる。













