住宅を求めるデモが10月3日(土)、スペインの数十の都市で行われた。前日の2日には、家賃の値上げを年2%までに抑えることなどを盛り込んだ政府の住宅の政令2本が、国会で否決されたばかりだった。マドリードでは、政府代表部の発表で7万人、主催した借家人組合の発表で50万人が「ゼネストへ」を掲げて行進した。組合は、ゼネストは近いうちになるとしているが、日付は決まっていない。バレンシアでは、不動産投資の会議が開かれていた会場に一部の参加者が押し入ろうとし、5人が逮捕され、警官9人がけがをした。サンチェス首相は週末に解散総選挙を検討しており、5日(月)の社会労働党(PSOE)の執行部会のあとに解散を発表すれば、投票日は11月29日になると報じられている。バルセロナのデモは、大雨の警報のため5日に延期された。

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マドリードで7万人、「家賃を半分に」

マドリードでは12時ごろ、借家人組合の全国組織が呼びかけた行進が市内の複数の地点を出発し、シベレス広場で合流した。掲げた要求は、家賃の50%引き下げ、期限のない賃貸契約、いわゆるハゲタカファンドが持つ住宅の収用だ。沿道では「今こそゼネストだ」という声が上がった。

「マリカルメンのような人を、もう一人も出すな」という声も響いた。9月に、約70年暮らした家から強制的に退去させられた87歳の女性のことだ(関連記事)。組合の広報担当、バレリア・ラク氏は、この日の大きな動員は「マリカルメンの勇気のおかげだ」と述べた。EFE通信によると、マリカルメンさんは、組合と管理会社の合意で自宅に戻れる見通しになっている。

ほかの都市でも、当局と主催者の数字は大きく食い違った。バレンシアは政府代表部の発表で約6,000人、主催者の発表で5万人超、マラガは警察の発表で約8,000人、主催者の発表で5万人だった。パルマでは警察の発表で約3,000人が行進し、下院のアルメンゴル議長も加わった。セビージャでは前日の2日に行進があった。

ゼネストは「近いうちに」、日付は未定

ラク氏によると、組合は大手の労働組合との合意づくりを進めており、ゼネストの日付はまだないが、近いうちになるという。ラク氏は「誰が政権を取っても、この国の最大の問題に手をつけない4年間を、もう許さない」とも述べた。大手労組の労働者委員会(CCOO)と労働総同盟(UGT)は、1日または数日の抗議の日を設けることを検討している。

これに対し、経営者団体CEOEのガラメンディ会長は、住宅をめぐるゼネストは労働争議の枠に入らないため違法だとの見方を示し、「野党に対するストなのか、企業に対するストなのか。こんなものは初めて見る」と述べた。

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バレンシアで衝突、マドリードでは極右の集会

バレンシアでは、行進の一部が、不動産投資の会議「バレンシア・リアル・エステート・サミット2026」が開かれていた芸術館パラウ・デ・レ・アルツに向かい、柵を倒して警察の警戒線を破った。警察はゴム弾と発煙弾を使って排除し、5人を逮捕した。警官9人がけがをした。国民党(PP)の州議会の副報道官は「急進左派が、議員を先頭にバレンシアの街に暴力をまいている」と非難し、地域政党コンプロミスは「市民を守る代わりに、ゴム弾と催涙ガスを市民に向けた」と警察の対応を批判した。

マドリードでは夕方、極右系の団体が後押しする「インディグナドス・ポル・エスパーニャ」の集会に、政府代表部の発表で約400人が集まった。このうち3人が、ソル広場の泊まり込みに向かおうとして逮捕された。ソル広場では、数百人が泊まり込みを守ろうと集まった。両者を引き離すための予防措置として、地下鉄のセビージャ駅とバンコ・デ・エスパーニャ駅が閉鎖された。

泊まり込みは続く

マドリードのソル広場では、住宅を求める人たちの泊まり込みが、9月26日の夜から1週間あまり続いている。マドリード州のアユソ政権は即時の解散を求めて裁判所に訴えたが、3日の時点で判断は出ていない。バルセロナのカタルーニャ広場でも、9月29日からテントを張った泊まり込みが続く。最高レベルの大雨警報が出た3日も、集会で「どんな状況でもここに残る」と決めた。バルセロナでの行進は、5日(月)19時にウルキナオナ広場で行われる。

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否決された政令と、解散の行方

否決された政令の1本目は、施行から2027年末まで、今の賃貸契約の家賃の年ごとの改定を年2%までに抑える内容だった。今年満了する契約は、家賃の滞納がないことなどを条件に、借り手が望めば最長2年延ばせるようにしていた。弱い立場の人の立ち退きの停止や、初めて家を買う人への最大5万ユーロの融資も盛り込んでいた。2本目は、最低5年(法人の家主は7年)続いた契約を、同じ長さずつ自動で延長する内容だった。

2日の採決では、1本目に国民党、極右のボックス、カタルーニャ独立派のジュンツなどが反対し、反対178、賛成172で否決された。2本目は、バスク民族党なども反対に回り、反対184、賛成166だった。

サンチェス首相は採決前の演説で、反対を表明していた国民党とジュンツに「歴史は、あなた方が思うより早く、想像するより厳しく裁くだろう」と警告していた。首相府の筋は3日、「決定はまだで、複数の選択肢を残している」としている。本来の総選挙は2027年だ。国民党のフェイホオ党首は2日、「口実はある。日付を決め、国会を解散し、選挙を行い、スペイン国民に語らせるべきだ」と迫った。一方、ジュンツのトゥルイ幹事長は「解決する気があるなら、まだ間に合う」と協議の余地を示しつつ、「選挙目当てを選ぶなら、選挙をすればいい」と述べた。

家賃は手取りの39%

不動産サイトのイデアリスタによると、9月の募集家賃は全国平均で1平方メートルあたり15.1ユーロと、前年より5.6%高い。マドリード市は23.4ユーロ、バルセロナ市は20.1ユーロだ。同じサイトの集計では、2026年4〜6月期に家賃は世帯の手取り収入の39%を占め、パルマでは45%に達した。

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日本の読者への解説

日本では「家賃は手取りの3分の1まで」が目安とよく言われるが、スペインの平均はそれを上回る。左派連合スマールのブスティンドゥイ社会権・消費相は、総選挙はいつになろうと「住宅をめぐる国民投票になる」と話しており、首相が解散に踏み切れば、住宅が大きな争点になりそうだ。

旅行者にとっても無関係ではない。マドリードのソル広場やバルセロナのカタルーニャ広場という観光の中心で、泊まり込みが続いている。デモの日には交通規制や地下鉄の駅の閉鎖もあり、バルセロナでは5日(月)19時からウルキナオナ広場周辺で行進が予定されている。

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