バルセロナ中心部で24日(土)に起きた若者の暴動は、TikTokで10月18〜19日ごろから出回った「Blocus(封鎖)」を名乗る呼びかけが発端だった。呼びかけはQRコードからWhatsAppのグループに人を集め、TelegramやInstagramにも広がった。教育の改善を訴え、「フランスのように」と書く一方で、EFE通信によると、グループでは黒い服を着て顔を覆い、できれば花火類を持って来るよう指示していた。呼びかけの中では平和的にという書き込みと略奪の話が入り混じり、当日の直前になって会話が荒れ、管理者は姿を消したと報じられている。州警察(モッソス・ダスクアドラ)のトップ、シルビア・カタ本部長は25日朝、拘束者128人のうち72人(56%)が未成年で、多くは16〜17歳だったと説明した。拘束者はカタルーニャに住む人たちで、現時点で背後に犯罪組織はなく、実行したのは組織されていない個人だとしている。警察は事前から呼びかけのアカウントを監視しており、誰が背後にいるのかを調べているが、25日昼の時点で、呼びかけた人物の特定や拘束は報じられていない。10月30日や31日に再び広場に集まる呼びかけも出回っており、25日夕方にもカタルーニャ州内の別の町で同じ名を名乗る呼びかけが報じられている。
呼びかけはどう広がったか
ファクトチェック媒体のNewtralは23日、TikTokで「Blocus」を名乗る20を超えるアカウントが10月18〜19日ごろから動き始めたと報じた。カタルーニャの公共放送3Catの検証チームによると、呼びかけのポスターはすべてスペイン語で、ChatGPTで作られたものだった。ポスターのQRコードからWhatsAppのグループに誘導する仕組みで、Newtralによると、バルセロナ用とマドリード用の主なグループにはそれぞれ約700人がいた。呼びかけはその後、TelegramやInstagramにも広がった。
地元紙エル・ナシオナルによると、TikTokで回った文面の一つは「学生と若者の国際的なストライキと動員の呼びかけ」と題し、24日17時にカタルーニャ広場に集まるよう求めていた。EFE通信によると、文面は「もっと予算を」「十分な教員を」「質の高い教育を」と訴え、「フランスのように」と書いていた。フランスでは9月から高校を封鎖する抗議(フランス語でブロキュス)が広がっており、「Blocus」の名もそれにならったとみられる。Newtralによると、呼びかけはマドリード、バレンシア、アリカンテ、ビルバオでも集まるよう求めていた。カタ本部長によると、マドリードでは参加者が少なく、小さな出来事にとどまった。
教育の訴えと、覆面の指示や略奪の話
呼びかけの中身は、教育の訴えだけではなかった。EFE通信によると、誘導先のグループでは、黒い服を着て顔を覆い、できれば花火類を持ってくるよう指示していた。3Catの検証チームは、公開されたポスターも「顔を隠すな」と書く一方で目出し帽を勧めるなど矛盾していたと指摘し、平和的にという書き込みと並んで、略奪の話も数日前から会話の底にあったと伝えている。Newtralは事件の前日の23日、マドリードでの呼びかけが、小さな店は狙わずに大型店を狙うよう求めていたと報じていた。地元メディアのNació Digitalは、呼びかける側の指示そのものが食い違い、混乱していたと伝えている。VilaWebも、平和的にと求める参加者がいる一方で、略奪を公然と語る参加者もいたと報じた。
3Catの検証チームの責任者によると、グループの最初の管理者は暴力を振るわないよう指示していた。しかし当日の直前の数時間に会話が荒れ、管理者は姿を消した。標的になりうる店を示す画像も出回り、多くは中心部の高級店だった。暴動の後、「Blocus」の主なTikTokのアカウントは中身ごと削除された(EFE通信、エル・ペリオディコ)。ただしエル・パイスによると、ほかの匿名のアカウントはなお呼びかけを続けている。
SNSの監視を専門とするマルセリーノ・マドリガル氏は、使い回しのアカウントが使われていたとして、意図を持った人物が関わっていた兆候があるとみる。カタ本部長は、TikTokの組織されたアカウントが、抗議ではなく犯罪行為のために若者を集めたと述べた(eldiario.es)。一方で、背後に犯罪組織はないとしている(ACN)。現場では3〜10人ほどの小さな集団に分かれて動き、主に略奪をしたという。カタ本部長は「まったく組織されていない」人たちによる「理由のない暴力」だとし、「かなり説明のつかないことだ」とも述べた。狙われたのは電子機器や衣料、宝飾、眼鏡の店で、飲食店も荒らされた。
警察の発表と捜査
州警察が25日に明らかにした数字は次のとおり。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 拘束者 | 128人(男性122人、女性6人) |
| うち未成年 | 72人(56%)。一部の発言や報道では73人 |
| 未成年の年齢 | 多くは16〜17歳、最年少は14歳 |
| 前歴 | 公共秩序を乱す行為の前歴は2人。ほかの種類の前歴は成人18人、未成年7人 |
| 身元確認 | 450人 |
| 持ち物などをめぐる告発の調書 | 68件(花火類や目出し帽、スプレー、石など。刃物を持っていたのは4人) |
| 負傷者 | 警察官15人(州警察14人、市警1人)。州警察官のうち4人は休職 |
| 被害 | 商店23店。消防が対応した火災33件 |
カタ本部長は、報告書をまとめたうえで、未成年は少年検察に、成人は管轄の裁判所に送るとしている。具体的な容疑や、身柄の拘束を続けるかどうかは、25日昼の時点で発表されていない。市の第一次の評価では、公共の設備の損害は約3万6,000ユーロに上る。
捜査について、カタ本部長は、州警察の情報部門が事前から「Blocus」のアカウントを監視していたと明らかにし、誰が背後にいるのかを調べているとした。EFE通信によると、呼びかけの広がりについては、ほかの欧州の警察とも協力して監視しているという。
拘束者の出身をめぐっては、極右政党Voxのガリガ幹事長が「何百人もの外国人の若者」と投稿し、カタルーニャの独立派の極右政党アリアンサ・カタラナのオリオルス党首は「補助金で暮らす移民」と主張した。カタ本部長は、オリオルス党首の主張について問われ、「どこからその情報を得たのか分からない。拘束者はカタルーニャに住んでいる人たちだ」と答えた。フランスから来た人たちだとする見方も否定している。州警察は、拘束者の国籍の内訳を公表していない。
防げなかったのか
市と警察は呼びかけを事前に把握していた。コルボニ市長によると、市は数日前から呼びかけを知っており、金曜と土曜の朝に、暴徒に使われたり壊されたりする恐れのある物を通りから片付けた。予防のために撤去したごみ容器は106基に上る。州警察は16時から現場に配置についていた。エル・パイスによると、警察筋は事前に、集まるのは300人ほどで、卵を投げたり落書きをしたりする程度の騒ぎと見込んでいた。実際には、パルロン州内務相によると、ピーク時に約500人が加わった。
それでも被害は防げなかった。飲食業の業界団体は25日の声明で、当局の「リスクの見積もりが誤っていた」とし、警察の対応も不十分だったと批判して、店の修理費を市が立て替えるよう求めた。カタ本部長とコルボニ市長は警察の対応を擁護した。コルボニ市長は25日朝に地区の商店主を訪ね、必要なら経済的な支援も出すと表明し、26日午後に商店や飲食店の団体と正式に会合を開くとしている。ジュンツと国民党は、パルロン州内務相に州議会で説明するよう求めた。
市は親の責任も追及
コルボニ市長は24日夜、「バルセロナで起きたことを罰せずに済ませはしない」と述べ、市として裁判に加わり、破壊に関わった成人と、未成年の親の責任を問うと表明した。スペインの少年法は、14〜17歳の未成年が起こした損害について、親などが連帯して賠償の責任を負うと定めている。親が負うのは賠償の責任で、刑事罰ではない。イリャ州首相も25日昼、タラゴナでの社会党(PSC)の総選挙候補の発表の集会で、参加者と「組織した者」を特定して拘束すると述べ、未成年の親も責任を負うことになるとした。
国民党(PP)のフェイホオ党首と、11月29日の総選挙でPPのバルセロナ選挙区の候補になるバダロナ市長のアルビオル氏は暴力を非難したが、出身とは結びつけていない。総選挙でジュンツの候補になるノゲラス氏は「ここはフランスではない」と述べ、共和左派(ERC)は政府に原因の解明を求めた。市長と州内務相は、教育や住宅を求める団体が背後にいるわけではないと強調した。カタルーニャ広場で住宅問題の泊まり込みを続ける人たちの広報担当は、EFE通信に「泊まり込みとは何の関係もない」と話し、土曜は敷地を閉じて暴れる若者を入れなかったと説明した。
31日に再び呼びかけ
3Catなどによると、カタルーニャ広場に再び集まる呼びかけがSNSで出回っている。日付は10月31日(土)とする報道が多く、エル・ナシオナルは30日(金)と31日の両日と伝えている。11月11日の全国ゼネストの日に合わせた呼びかけも報じられている。具体的な警備計画は公表されていない。エル・ペリオディコは、カタ本部長が最大規模の警備を準備していると述べたと伝えている。同紙によると、25日夕方にも、グラノリェース(17時、ポルシャダ広場)とジローナ(19時、独立広場)で「Blocus」を名乗る集合の呼びかけが出回っているが、24日と同じ呼びかけ人かは分かっていない。
日本の読者への解説
今回の暴動は、政党や労組、市民団体が届け出たデモではなかった。誰が作ったのか分からないSNSのアカウントが、教育の改善という分かりやすい訴えと「フランスのように」という言葉で若者を集めた。その一方で、公開のポスターやチャットには覆面や花火類の指示があり、略奪の話も数日前から出ていた。呼びかける側の指示は食い違っていたが、当日は小さな集団が略奪に向かった。拘束者の過半数は未成年で、多くは16〜17歳だった。警察は事前に呼びかけを監視していたが、報道によると集まるのは約300人と見込んでおり、組織を持たない小さな集団が同時に動く形を止めきれなかった。
呼びかけた人物はまだ特定されておらず、31日の呼びかけがどこまで広がるかも分からない。バルセロナに滞在する人は、10月30日と31日は、カタルーニャ広場とその周辺、ポルタル・デ・ランジェルやペライ通りなどの繁華街に近づかないようにしたい。集まる時刻はまだ報じられていないが、24日は17時に集まり、夕方から夜に荒れた。当日の交通の情報は、ロダリエスやFGC、バルセロナ交通局(TMB)の公式SNSで確かめるのが確実だ。前夜の経過は24日夜の続報に、25日朝の集計は25日朝の記事にまとめている。













