スペインのペドロ・サンチェス首相が、解散総選挙に踏み切る可能性が報じられています。マドリードで高齢女性が立ち退きさせられた事件を機に住宅危機への関心が高まる中、連立政権が提出した立ち退き保護などを盛り込んだ重要政令2本が下院議会で否決されたことを受けた動きです。カタルーニャ州の独立派政党「フンツ」が反対に回り、右派の国民党(PP)と極右VOXに同調したことが直接の原因です。選挙が実施される場合、11月29日が有力視されています。
背景:少数与党の脆弱な基盤
現在のサンチェス政権は、自身の社会労働党(PSOE)と左派連合「スマル」による少数連立政権です。議会で過半数を確保しておらず、法案を可決するには、バスクやカタルーニャなどの地域政党の協力が不可欠です。特に、2023年の首相就任の鍵を握ったフンツの7議席は、政権の生命線となっていました。しかし、今回の造反は、フンツが政権の足元を見ながら自らの要求を通そうとする姿勢を浮き彫りにし、重要法案ごとに行き詰まる政権運営の困難さを示しています。
否決された住宅政令
今回否決されたのは、家賃高騰に苦しむ国民を保護するための政令で、立ち退きに対する保護強化などが含まれていました。サンチェス政権にとっては看板政策の一つでした。政府はフンツ側の要求であった家主への税制優遇措置などを盛り込みましたが、フンツは採決直前に態度を硬化させ、政令の撤回を要求。政府がこれを拒否したため、否決に至りました。採決直前、サンチェス首相は「歴史があなた方を裁くだろう」と述べ、反対派を強く牽制していました。
日本の読者への解説
スペインの現状は、多党化が進んだ議会でいかに政権運営が難しくなるかを示しています。日本の「ねじれ国会」とは異なり、議院内閣制のスペインでは、重要法案の否決は即、政権の存続危機につながります。また、中央政府の政策が、特定の地域政党の利害によって左右される構図は、中央集権的な政治体制を持つ日本ではあまり見られない力学であり、スペイン政治の複雑さを象徴しています。












