カタルーニャ気象局(Meteocat)は28日夜、9月29日(火)を対象に、バルセロナ市を含むバルセロネス郡など周辺8郡への警報をオレンジから赤に引き上げた。6段階で上から2番目にあたる「危険度5」で、一部の報道は、午前6時から正午までは最も高い「6」に引き上げられたと伝えている。期間は29日午前2時から30日午前2時まで。30分で40ミリを超える局地的な豪雨の恐れがあり、雨雲が同じ場所にとどまれば、雨量が1平方メートルあたり150リットル(150ミリ)に達する可能性もあるという。最も警戒が必要な時間帯は、気象局が午前6時から正午、州の市民保護局(Protecció Civil)が午前8時から午後2時としている。市民保護局は28日夜10時過ぎ、タラゴナ県からジローナ県にかけての沿岸と内陸寄りの郡の携帯電話に緊急警報「ES-Alert」を送り、移動と屋外での活動に最大限の注意を求めた。ただし「広い範囲で起きる現象ではない」として休校や移動制限は見送り、学校は通常どおり開く。赤色の対象には、空港のあるエル・プラット・デ・リュブレガットを含むバイス・リュブレガット郡や、シッチェスのあるガラフ郡も入る。今月は9日と16〜17日にも豪雨があり、16日深夜にはガラフ郡オリベリャで車ごと流された男性が亡くなった。旅行者は、移動の前に鉄道と航空会社の運行情報を確かめ、地下の空間や水の流れる川筋に近づかないことが基本になる。
赤色は8郡、今回はバルセロナ市も入った
赤色警報の対象は、バルセロネス(バルセロナ市、バダロナなど)、バイス・リュブレガット(エル・プラット空港のある郡)、ガラフ(シッチェスなど)、アルト・ペネデス(カバの産地サン・サドゥルニ・ダノイアなど)、バリェス・オクシデンタル(サバデル、テラサなど)、バリェス・オリエンタル(グラノリェルスなど)、マレズマ(マタロなど)、セルバ(ロレット・デ・マル、ブラネスなど)の8郡だ。基準は「30分で40ミリを超える」雨の強さで、気象局は28日の昼にオレンジ(危険度4)の警報を出し、同日夜に赤へ引き上げた。赤の危険度は多くの報道が5としているが、地元のニュースサイト、エル・ナシオナルは、午前6時から正午までは最高の6になったと伝えている。どちらにしても、朝から昼にかけてが最も危ない時間帯であることに変わりはない。
今月9日の赤色警報では、バルセロナ市が属するバルセロネス郡はオレンジにとどまっていた。今回は市そのものが赤の対象に入っている。
これとは別に、3時間で90ミリを超える恐れについても、沿岸と内陸寄りの地域にオレンジ(危険度4)の警報が29日午後8時まで出ている。オレンジと黄色の警報はタラゴナ県やジローナ県の郡にも広がり、何らかの警報が出ている郡は州内の29郡に及ぶ。カタルーニャの公共放送3Catの予報解説は、どの地点で強く降るかは予測しにくいとしている。
山場は朝から昼すぎ、雨雲は南から北へ
危ない時間帯は、発表元によって少し違う。気象局は午前6時から正午を最も危険とみており、市民保護局はES-Alertで「特に午前8時から午後2時」に最大限の注意を払うよう求めた。3Catの予報解説では、雨雲は朝のうちにエブロ川下流域とタラゴナ周辺を通り、正午前にバルセロナの沿岸、午後にはコスタ・ブラバの南半分へ移る見通しだ。
雨は一様に降るのではなく、狭い範囲に短い時間で集中するのが特徴だ。市民保護局のイマ・ソレ副局長も、局地的で散発的な雨になるとの見方を示しており、地区によって降り方が大きく違いうる。スペイン気象庁(AEMET)は、前日までの数日間に上空に流れ込んだ寒気が残っていることを原因に挙げる。エル・ナシオナルは、この寒気に、暖かい地中海の海面と、海から吹き込むとても湿った東風が重なると解説している。
AEMETも独自の基準で、バルセロナ、ジローナ、タラゴナの3県に雨と雷雨のオレンジ警報を出している。タラゴナ県の北部の内陸寄りの地域には、29日午前6時から午後3時前まで、12時間で180ミリの雨を見込む赤色警報を出した。バルセロナとタラゴナでは1時間に40ミリの雨を見込み、バルセロナの沿岸では29日午前9時から午後6時前まで雷雨のオレンジが続く。AEMETは、雹(ひょう)はおおむね直径2センチ未満の見通しとしつつ、沿岸近くで水上竜巻や竜巻が起きる可能性も否定していない。
前夜にES-Alert、それでも休校はなし
州の市民保護局は28日正午、洪水に備える州の計画「INUNCAT」を警戒段階で発動した。夜10時過ぎには、タラゴナ県のバイス・カンプ郡からジローナ県のセルバ郡までの沿岸と、その内陸側の郡にES-Alertを送った。局地的に激しい雨が降る恐れがあるとして、移動と屋外での活動に最大限の注意を払い、水がたまりやすい場所に近づかず、緊急時は112に電話するよう求める内容だった。
一方で、学校の休校や移動の制限は見送られた。ソレ副局長は「広い範囲で起きる現象ではない」と説明している。今月9日の赤色警報では、赤の対象になった5郡で、日中の授業や屋外のスポーツが止められた(9日の記事)。16日深夜の豪雨では、ガラフ郡オリベリャで増水したリエラ(普段は水の少ない川)を車で渡ろうとした男性が流され、17日未明に遺体で見つかった。このときはES-Alertが届くのが遅かったとの批判も出た(16〜17日の記事)。今回は、雨の前の晩に警報を届けつつ、社会の活動は止めないという対応になった。
バルセロナ市も、下水道の排水能力を超える雨に備える市の緊急計画を「警戒」段階で発動した。市は住民に、屋根や避雷針、排水口、雨どいを点検して詰まりを取り除くこと、家電のプラグを抜き、ベランダの家具などを片付けることを呼びかけている。携帯電話を充電しておくこと、薬と書類を手元に置くこと、車を運転する場合は速度を落とし、冠水した場所には入らないことも求めた。
旅行者がきょう気をつけること
移動の前に運行情報を確かめる。近郊列車ロダリエス(Rodalies)は公式サイト、地下鉄と市バスはTMBの公式サイトとアプリで運行状況を確認できる。今月16日の豪雨では、浸水による地下鉄駅の閉鎖やロダリエスの区間運休が起きた。29日午前4時半の時点で、交通機関の運休の告知は確認できていない。
飛行機は航空会社の通知を見る。エル・プラット空港のあるバイス・リュブレガット郡も赤色の対象だ。雷雨が空港にかかると離着陸が止まることがあり、今月の豪雨でも欠航や遅れが出た。予約した航空会社のアプリやメールで運航状況を確かめ、空港へは時間に余裕を持って向かいたい。
地下と川筋に近づかない。短時間の豪雨で危ないのは、地下駐車場、地下道、半地下の店舗、そして普段は水のない川筋(リエラ)だ。冠水した道路には、歩いても車でも入らない。浅く見えても流れは強く、車は数十センチの水で浮くことがある。
屋外の観光は時間をずらす。グエル公園やモンジュイックの丘、海岸など屋外の観光地は、山場の時間帯を避けて予定を組み直すのが無難だ。予約済みの施設は、閉鎖や時間変更の知らせが来ていないか、公式サイトやメールで確かめたい。雷が鳴っている間は、海とビーチから離れる。
ES-Alertが鳴ったら従う。携帯電話に大きな警報音とともに届くES-Alertは、州政府の公式な緊急情報だ。追加の警報で屋内にとどまるよう求められたら、それに従う。緊急時の電話番号は112。
郊外への日帰りは見直す。シッチェス、サン・サドゥルニ・ダノイア、マタロ、ロレット・デ・マルなども赤色の対象に入っている。レンタカーや列車で郊外へ出る予定があれば、30日以降にずらすことも考えたい。
日本の読者への解説
「30分で40ミリ」は、同じ強さの雨が1時間続けば80ミリに達するペースだ。日本の気象庁の区分では、1時間に80ミリ以上の雨は最も強い「猛烈な雨」にあたり、人が受けるイメージは「息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる」と説明されている。ただし警報は「どこかでその強さの雨が降る恐れがある」という意味で、対象地域の全体がそうなるわけではない。
カタルーニャ気象局の警報の危険度は「6のうちいくつ」という形で示され、5は上から2番目にあたる。日本の注意報・警報・特別警報とは基準も仕組みも違うので、単純には置き換えられない。スペイン気象庁(AEMET)も別に黄・オレンジ・赤の3色で警報を出しており、同じ日に「気象局は赤、AEMETはオレンジ」ということも起こる。現地のニュースで警報の色を見るときは、どちらの機関の警報かを確かめるとよい。
スペインでは、2024年10月のバレンシア大水害で200人を超える死者が出た。このとき携帯電話への緊急警報は、すでに浸水が始まっていた夜8時過ぎに届き、大きな批判を浴びた。以来、スペインの防災当局は「早めに知らせる」ことを重視している。ただ、知らせすぎれば「また空振りか」と受け止められ、肝心なときに警報が軽く見られる。遅すぎれば命に関わる。日本でも大雨のたびに避難情報の出し方が議論されるが、カタルーニャは今月、その両方の難しさに向き合っている。
地中海沿岸では、夏の間に温まった海が秋の雨雲に大量の水蒸気を送り込むため、9月から11月にかけて短時間の豪雨が起きやすい。この季節は晴れた日の多い観光シーズンでもあるが、スペインを旅するときは天気予報と合わせて、警報の色を確かめる習慣をつけておくと安心だ。
本記事は9月29日午前4時半(現地時間)時点の情報に基づく。状況が変われば続報する。













