欧州連合(EU)の地球観測プログラム「コペルニクス」が9月30日に公表した海洋の報告(第10版)によると、海が蓄えている熱の量は2025年に観測史上最高に達した。地中海では海面上昇が加速しており、西地中海の10年ごとの上昇ペースは、1993〜2024年の解析で年約3ミリから6.4ミリへと倍以上になった。計算の期間は異なるが、世界平均(2012〜2025年は年4.2ミリ)を上回るペースだ。スペインでは10月3日から4日にかけて、カタルーニャ気象局が沿岸部などに最高レベルの大雨警報を出した。その直前、スペイン気象庁(AEMET)は、地中海の水温が一部で平年より3度以上高く、嵐の発達を後押ししていると説明していた。一方で専門家は、海水温だけで豪雨が起きるわけではないとも指摘している。
海の熱は過去最高、北極ではスペイン1国分の海氷が10年ごとに消える
報告は、コペルニクスの海洋サービスを運営するメルカトル・オーシャン・インターナショナルがまとめ、125人が執筆した。海に蓄えられた熱は1960年以降増え方が速まっており、2025年には過去最多の23ゼタジュールが新たに加わった。報告によると、これは2025年に世界全体で使われたエネルギーのおよそ40倍にあたる。
世界の平均海面は、1999〜2025年に年3.8ミリのペースで上昇し、2012〜2025年に限ると年4.2ミリに速まった。北極では、海氷の月平均の面積が1979〜2025年に10年あたり約49万平方キロメートル減った。報告は、10年ごとにスペインほどの面積が失われている計算だとしている。メルカトル・オーシャンのピエール・バユレル事務局長は「海は私たちの目の前で姿を変えつつある」と述べた。
地中海:海面上昇が加速し、海洋熱波も過去20年で最多
地中海の章によると、西地中海の海面上昇は今世紀の初めから加速しており、主な原因は海水が温まって膨らむ熱膨張だ。東地中海でも、直近の10年で年6.4ミリに達し、2018年以降はほぼ一定のペースで加速している。この章の執筆者には、スペインの国の港湾公社(プエルトス・デル・エスタド)の研究者も加わっている。
地中海の海面水温は、1982〜2024年に10年あたり0.32度上がった。2024年の地中海の平均水温は、1982〜2024年の平均より1.23度高く、海水温が異常に高い状態が続く「海洋熱波」の日数は、過去20年で最も多かった。報告の地中海のデータは2024年までのものだ。
カタルーニャの豪雨と海水温
今年の地中海も熱かった。AEMETによると、地中海全体の水温は8月13日に28.54度に達し、少なくとも1940年以降で最も高かった。
カタルーニャの大雨の前の10月1日、AEMETのルベン・デル・カンポ報道官は「不安定な大気が嵐の発生を促しており、その嵐は、この時期としては非常に高い水温の地中海に養われている。一部では平年より3度以上高い」と説明した。海水温は、嵐を強める要因の一つという位置づけだ。
専門家は、海水温だけで豪雨が起きるわけではないとも強調している。AEMETのジョゼップ・リュイス・カマチョ報道官は、豪雨より前の9月13日、カタルーニャの公共放送3catの解説記事で「海の熱は薪のようなものだが、海に火をつけるにはマッチが要る。マッチにあたるのは大気の相互作用だ」と語っていた。バルセロナ・スーパーコンピューティング・センターのラミロ・サウラル氏は、海が暖かいからといって、秋の豪雨をもたらす寒冷低気圧(DANA)の数が増えるわけではないと説明している。今回の豪雨に海水温がどれだけ影響したかを数字で示した分析は、当サイトが調べた範囲では、4日時点で見当たらない。
日本の読者への解説
日本の沿岸でも海面は上がっている。気象庁によると、日本の沿岸の海面水位は2004〜2025年に年3.5ミリのペースで上昇し、2025年は平年より67ミリ高かった。日本近海の海面水温は、100年あたり1.36度上がっており、世界平均(0.63度)の2倍を超える。ただし、地中海と日本では計算の期間や方法が違うため、数字をそのまま比べることはできない。
地中海の研究者のネットワーク(MedECC)は、地中海を気候変動の「ホットスポット」と位置づけている。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)も、地中海の気温と海水温は今後も世界平均より大きく上がる可能性が高いとしている。海が温まると、海面が上がるだけでなく、雨雲に送られる水蒸気も増えうる。秋の地中海で豪雨が起きるたびに海水温が話題になるのは、このためだ。













