スペイン全土の主要都市で、住宅価格の高騰と立ち退きに抗議する数千人規模のデモが行われました。「借家人組合(Sindicato de Inquilinas)」が呼びかけたもので、参加者は鍋やフライパンを叩く「カセロラッソ」という手法で、政府が提出した住宅関連の緊急法令2本の承認を下院議会に要求しました。しかし、法案の成立は絶望的です。サンチェス首相率いる少数連立政権は、法案可決に必要な支持を確保できず、1日夜には鍵を握っていたカタルーニャの独立派政党ジュンツ(Junts)が両法案への反対を決定しました。

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背景:社会運動が動かした法制化

スペインでは特にマドリードやバルセロナなどの大都市で家賃が急騰し、投機ファンドによる物件買い占めも社会問題化しています。この法令は、マドリードで立ち退きにあった87歳の女性マリア・デル・カルメン・アバスカル氏の事例が大きな社会的反響を呼んだことから、彼女の通称にちなんで「マリカルメン法」とも呼ばれています。家賃の自動更新や立ち退き手続きの停止といった借家人保護策が盛り込まれています。こうした市民運動の高まりが、左派連立政権を動かし、今回の法制化提案につながりました。

議会の駆け引きと政権の脆弱性

問題は、サンチェス政権が議会で過半数を持たないことです。法案を成立させるには、複数の地域政党の協力が不可欠でした。今回、2本の法令のうち「賃貸契約の無期限延長」を定めたものは、連立パートナーであるバスク民族主義党(PNV)が反対を表明したため、否決が確実視されていました。もう一方のより広範な法令も、1日夜にジュンツが反対を表明したため、否決される見通しです。これにより、デモの要求にもかかわらず、政府の重要法案が2本とも頓挫する公算が大きくなりました。

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日本の読者への解説

日本でも都市部での住宅価格上昇や非正規雇用の増加で、住まいの確保は重要な課題です。スペインの事例は、借家人らが「組合」として組織化され、政治に直接的な圧力をかけることで政策転換を促すという、欧州型の社会運動の力強さを示しています。また、鍋を叩く「カセロラッソ」は、政治不信の表明としてスペインや中南米で頻繁に見られる抗議スタイルで、市民の怒りの温度を測るバロメーターとも言えます。

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