スペインで2026年10月1日、電動キックボードのヘルメット着用義務や最低年齢15歳などを定めた新しい交通規則が施行される。歩行者や自転車利用者を守るための改正だが、バルセロナ市は信号の運用変更について適用の猶予を求めている。市の説明では約1,550交差点が影響を受け、混雑が悪化する恐れがあるという。利用者が守る装備のルールと、市が対応を求められる交差点のルールが、同じ施行日を迎える。

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キックボードは15歳から、ヘルメットは義務に

今回の改正は、一般交通規則を変更する政令518/2026に基づく。スペイン交通総局(DGT)は、車を中心とした交通の考え方から、人と都市の環境を重視する仕組みへの転換と位置付けている。歩行者、自転車、二輪車、電動キックボードなど、事故時に身体を守るものが少ない利用者の保護が柱だ。

電動キックボードなどの個人用移動車両(VMP)では、運転できる最低年齢を15歳とし、ヘルメットの着用を義務化する。夜間や見通しが悪い状況では、個人用保護具の基準に合い、少なくとも150メートル先から見える発光・反射装備を身に着ける必要がある。仕事でVMPを使用する人には、道路の種類を問わず高視認性の反射ベストを着用する義務がかかる。

DGTは、ヘルメットや必要な反射ベストを着用しない違反について、それぞれ200ユーロの罰金の対象になると説明している。「短い距離だから」「借りた車両だから」という感覚で装備を省くことはできない。観光中に利用を考える場合も、貸し出し料金だけでなく、必要な装備が用意できるかまで確認しておく必要がある。

また、交通法は18歳未満の違反について、親や後見人などが本人と連帯して罰金を負担する責任を定めている。最低年齢を満たす子どもに利用させる場合も、本人だけの問題とせず、保護者が装備や使い方を確認することが重要だ。

ただし、改正のすべてが同時に始まるわけではない。VMPの昼間のライト点灯義務は2027年10月1日からとなる。これは政令の経過措置に明記されている。「常時点灯」という新ルールだけを抜き出し、2026年10月から昼間も直ちに適用されると解釈しないよう注意したい。

登録や保険も別に確認が必要だ。DGTは2026年1月にVMPの登録制度を案内し、車両登録と義務的な賠償責任保険への加入が必要であると説明している。これらは今回の10月の装備規則とは別の制度で、ヘルメットを用意するだけで利用条件をすべて満たすわけではない。借りる場合も登録・保険の状況を貸出事業者に確認したい。

歩行者の青と車の点滅黄を、原則として重ねない

バルセロナで争点となっているのは、電動キックボードそのものよりも信号の仕組みだ。改正規則は、歩行者用信号のある横断歩道では、車両用の点滅する黄色信号と歩行者用の点滅していない青信号を、原則として同時に表示しないことを定めた。さらに、車両用の点滅黄の前には、点滅しない赤信号を表示する規定を設けている。

点滅黄は、車が無条件に進める合図ではない。運転者に十分な注意を払い、必要に応じて道を譲ることを求める信号だ。ほかに停止を命じる標識などがあれば、それにも従わなければならない。歩行者と車に対等な「譲り合い」を求めているわけではなく、運転者側の義務である。

9月30日付のエル・パイスによると、市は約1,550交差点への影響を挙げ、DGTに猶予と明確な運用基準を求めた。車と歩行者の通行時間を分けることで、交差点の処理能力が落ちる可能性を懸念している。これは市の予測であり、施行後に大渋滞が発生したという報告ではない。

同紙は、DGTの回答がないなか、バルセロナ市は少なくとも数週間、この信号規則を適用しない方針だと報じた。9月30日時点の市の対応を伝える報道であり、国が延期を認めたという発表ではない。

安全を高めるために時間を分けても、その配分によっては車だけでなく歩行者の待ち時間も変わる。交差点単独では成立する設計が、連続する街区全体でどのように働くかが課題になる。政令には信号変更について個別の経過措置は置かれておらず、市の猶予要請は、そのまま延期決定を意味しない。VMPの装備の義務とも分けて考える必要がある。

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自転車やバイクにも変更

改正の対象はVMPに限られない。DGTによれば、自転車については都市間道路でのヘルメット着用の例外をなくす。自転車で仕事をする配達員などには、ヘルメットと反射ベストを常時着用する義務を設ける。

オートバイや原動機付自転車では、都市間道路で運転者と同乗者に保護用の手袋を求め、道路の種類にかかわらず足を覆う靴を必要とする。政令の経過措置では、手袋の技術仕様を定める内務省令が発効するまでは、従来と同じ特性の保護用手袋を使用するとしている。仕様の切り替えを待つことと、手袋を着用しなくてよいことは別だ。

原動機付自転車のヘルメットにも別の移行期間がある。新たな型式認証基準への切り替えに際し、施行から1年間は従来の認証を受けたヘルメットを使い続けられる。これは原動機付自転車の装備基準の経過措置であり、VMPのヘルメット着用義務が1年延期されるという意味ではない。

旅行者にとっては、現地で車両を借りられることと、その日の服装で合法的に乗れることは別問題になる。免許や保険、走行できる場所など、今回の記事で扱う装備以外の条件も、車両の種類と利用する自治体に合わせて確認したい。

日本の読者への解説

日本では、一定の基準を満たす電動キックボードなどは「特定小型原動機付自転車」に分類され、16歳未満の運転は禁止されている。この区分のヘルメット着用は努力義務だ。一方、スペインの今回のVMP規則は最低年齢を15歳とし、ヘルメットを義務にする。年齢だけを比べるとスペインが緩く、装備だけを比べると厳しい。制度の違いは、単純な規制強化・緩和の一方向では捉えられない。

また、日本の「電動キックボード」という呼び方は、法的に同じ区分の車両だけを指すわけではない。特定小型原動機付自転車の条件を満たさない車両には別の規則が適用される。スペインのVMPと日本の制度をそのまま同一視するのではなく、比較対象を限定することが大切だ。

バルセロナの信号問題が示すのは、安全政策には利用者の装備と道路側の設計の両方が必要だという点である。ヘルメットは事故の際の被害を小さくする備えであり、車と歩行者が交差するタイミングを変えることは、事故が起こる場面そのものを減らす取り組みになる。両者を別々に扱わないことが、今回の改正の読みどころだ。

ただし、施行日にすべての街の信号が一斉に変わると期待するのは早い。現地では表示されている信号と通行の優先関係を守り、歩行者側も車両の動きを確認する。制度が変わる時期こそ、以前の旅行で覚えた交通感覚に頼らず、その場所の最新案内を確かめたい。

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