カタルーニャの経営者団体フォメント・デル・トレバイは9月29日、仕事の欠勤についての白書を発表し、スペインでは毎日140万人が職場を休んでいると訴えた。同団体によると、2025年の病欠の件数は910万件と、2015年の390万件の2倍を超え、一般の病気やけがによる休業の費用は330億ユーロあまりに達した。欠勤の約8割は、医師の診断にもとづく病気休業(一時的労働不能)が占める。白書は、2020年に廃止された、欠勤を繰り返す労働者を解雇できる制度の復活(障害のある人は除く)、病欠中に会社が払う社会保険料の免除、労災共済組合(ミューチュア)の役割の拡大、どのような行為が仮病にあたるかを法律に明記することなどを提言した。ジョセップ・サンチェス・リブレ会長は「欠勤は、経済と社会にとって負担しきれなくなり始めている」と述べた。白書を起草した専門家グループには、ミューチュアの幹部らも加わっている。一方、労働組合は以前から、医師が認めた病気の休業を「欠勤」と呼ぶこと自体を批判してきた。発表直後の時点で、白書への労組の反応は報じられていない。有給の病気休暇が法律で定められていない日本とは、議論の前提が大きく違う。

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1日140万人、10年で2倍を超えた病欠

白書は、フォメントが作った7人の専門家グループがまとめたもので、労働法の専門家のほか、大手ミューチュアの会長や業界団体の幹部ら3人が加わっている。発表で示された数字によると、一般の病気による休業は、2025年に働く人1,000人あたり毎月38件起きており、2018年の25件から大きく増えた。働く人の10%が、病欠全体の58%を占めるという偏りもある。

年齢別では、16〜35歳の若い世代で休業が最も起きやすく、毎月1,000人あたり42.8件にのぼる。ただし1回の休業は平均21.2日と短い。55歳を超える世代は、休業の起きる頻度は最も低い(1,000人あたり毎月25.4件)が、1回が平均86.7日と長い。フォメントの労使関係部長イェシカ・アギラルは、休業が6か月を超えると長期化しやすいと指摘した。

費用の面では、一般の病気による休業にかかった費用が2025年に330億ユーロあまりと、前の年より14.3%増えた。このうち会社が直接負担した分は160億ユーロあまりで、2019年のほぼ2倍になったという。カタルーニャだけで62億ユーロにのぼる。

別の推計もある。人材サービス会社ランスタッドが国立統計局の四半期の労働費用調査をもとに計算したところ、2026年1〜3月の欠勤率は7.2%で、このうち病気休業の分が5.6%だった。働かなかった時間を人数に置き換えると、1日あたり約160万人にあたり、うち約124万人が病気休業だという。どちらも、働かなかった時間などからの推計で、実際に休んだ人を数えたものではない。

提言の焦点は「解雇の復活」

白書で最も注目を集めたのは、欠勤を繰り返す労働者の解雇を再び認めるよう求めた点だ。スペインの労働者憲章には以前、正当な理由のある欠勤であっても、一定の期間に一定の割合を超えれば「客観的な理由による解雇」ができる規定(52条d)があった。政府は2020年2月、法律と同じ効力を持つ緊急の政令でこれを廃止し、同じ年の7月に法律で確定させた。理由として、正当な欠勤まで解雇の理由にでき、欧州連合司法裁判所の判例が求める釣り合いの判断もできない仕組みは不当だと説明していた。フォメントは、障害のある人を対象から外したうえで、この制度を戻すよう求めている。

報道によると、ほかの提言は、病欠中に会社が払う社会保険料をなくすこと、休業中の会社の費用負担を見直し、会社が社会保険に代わって給付を立て替える「代行払い」をなくすこと、一般の病気による休業の管理でミューチュアの役割を広げること、どのような行為が休業の偽装(仮病)にあたるかを労働者憲章に明記すること、ミューチュアと公的なかかりつけ医の連携を強めること、休業の審査を強めること、ミューチュアと社会保険の間の医療データのやり取りをデジタル化すること、病気ごとの休業日数の目安を見直すことなどだ。段階的に職場へ戻れる仕組みづくりも挙げた。現在、一般の病気による休業の開始と終了は、公的医療の医師が診断書で決めている。ミューチュアは、労災のほかに一般の病気の休業給付を担うこともあるが、休業を終わらせる判断は自らはできず、提案ができるだけだ。白書は、一般の病気でもミューチュアが医療やリハビリを担い、永久的な障害の認定の申請もできるようにするなど、役割を広げるよう求めている。

白書をまとめたバルセロナ大学のジョルディ・ガルシア・ビニャ教授は、休業中の給与の上乗せについて、休んでいる人が「出勤している人と同じだけ稼ぐことはできない」と述べた。スペインの制度では、一般の病気による休業の給付は、最初の3日は法律上ゼロ、4〜20日目が基準給与の60%、21日目からが75%だ。ただ、多くの労働協約が会社負担で上乗せしている。財政監視機関(AIReF)の分析では、上乗せの規定があるのは産業別の協約の約半数で、そうした協約では、上乗せ後の平均の給付率が4〜20日目で91%、21日目以降で97%に達する。

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労組は「病気は欠勤ではない」

労働組合は、医師の診断にもとづく休業を「欠勤」と呼ぶこと自体に反対してきた。労働総同盟(UGT)は「一時的労働不能による不在は欠勤ではない。病気だ」と主張し、UGTカタルーニャは「病気は犯罪ではない」と題する報告書で、悪い労働条件や職場の予防の不足、公的医療への投資不足が休業を増やしていると訴えている。労働者委員会(CCOO)カタルーニャも、「欠勤」という言葉の使い方を「言葉の操作」だと批判している。

欠勤の約8割が医師の認めた病気休業とされるなか、全国組織のスペイン経団連(CEOE)のガラメンディ会長は7月、残る2割に焦点を当て、政府や州、ミューチュア、労組、企業を交えた対話の場を求めた。政府側では、ディアス労働相が9月21日、「ストライキは欠勤ではない。仕事と家庭の両立も欠勤ではない。忌引の休暇も欠勤ではない」と述べ、欠勤という言葉の使われ方に異を唱えている。2020年に52条dの廃止を主導したのも同氏だ。政府は、長い病気休業からの段階的な職場復帰を認める案を2024年10月に示して労使と協議してきたが、7月には対象をがん患者に絞る方針に改め、合意には至っていない。

一方で、病気休業が長期化している背景として、心の病の増加も指摘されている。国立労働安全衛生研究所によると、精神疾患は病気休業の原因の2番目で、15日を超える休業ではうつ病が最も多く、平均の期間は167.9日にのぼる。

日本の読者への解説

日本の労働基準法には、有給の病気休暇の定めがない。会社員が病気やけがで働けないときは、健康保険の傷病手当金が、連続3日の待期のあと4日目から、標準報酬月額(直近12か月の平均)を30で割った額の3分の2が、最長で通算1年6か月支給される。会社独自の病気休暇の制度があるのは企業の3割弱(28.4%、厚生労働省の2025年の調査)にとどまり、病気の日を年次有給休暇でまかなう人も多い。

スペインの病気休業は、4日目から給付が出る点では日本と似ているが、多くの職場で労働協約による上乗せがあり、休んでも給与に近い額を受け取れる。フォメントが見直しを求めているのは、この上乗せと会社の負担の重さである。スペインの年次有給休暇は法律で年30暦日以上と定められ、病気休業とは別枠だ。日本では、厚生労働省の2025年の調査で、2024年の年次有給休暇の付与は平均18.1日、実際に取ったのは12.1日で、取得率は66.9%と過去最高だった。病気の日もこの中から使うとすれば、休める日数の感覚は両国で大きく違う。

日本とスペインの病欠を同じ物差しで比べられる統計はない。そのため、「スペイン人はよく休む」「日本人はまじめに働く」といった比べ方は成り立たない。スペインの欠勤の約8割は医師の診断にもとづく休業で、議論の中心は、制度の使われ方と、休業中の費用を誰が負担するかにある。日本ではむしろ、体調が悪くても出勤する「プレゼンティーイズム」や、心の不調による休職や退職が課題とされる。厚生労働省の令和6年(2024年)の調査では、メンタルヘルスの不調で1か月以上休んだ人や退職した人がいた事業所は12.8%だった。

病気でも休みにくいとされる日本と、休業中の保障が手厚い一方で費用がかさむスペイン。どちらの制度にも課題がある。欠勤を理由とする解雇の規定を2020年に廃止したのは、今と同じサンチェス首相の政権で、その復活が実現する見通しは立っていない。ただ、高齢化と心の病の増加で休業が長くなる流れは、日本の職場にも無縁ではない。

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