スペイン国立統計局(INE)は9月29日、2025年の出生力調査の速報を公表した。子どもを産んだことのある18〜55歳の女性の34.8%が、望んだより少ない数しか産んでいないと答えた。その理由は、35歳を過ぎると「仕事の事情や、仕事と子育ての両立」が最も多くなり、40〜44歳では34.4%がこれを挙げ、「健康上の理由」(22.8%)が続く。「子どもはほしくない」と答えた女性は15.5%で、2018年の前回調査の12.3%から増えた。増え方が最も大きいのは35〜39歳で2倍を超え、25歳未満では逆に約27%から24.2%に下がった。2人以上の子どもを望む女性は73.6%から69.0%に減ったが、「2人」を望む人が最も多い構図は変わらない。体外受精などの生殖補助医療を受けたことがある女性は、前回の5.4%から6.0%に増えた。国に求める支援では、長い育児休業、子ども手当に次いで、手頃な保育園を挙げる女性が6.8%から11.3%に増えた。スペインの合計特殊出生率は1.10(2024年)で、EUで2番目に低く、日本の1.14(2025年)とほぼ同じ水準にある。産みたい数を産めない理由として、日本の調査では「お金」が最も多く挙がるのに対し、スペインでは「働き方と両立」が前面に出ている。

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「子どもはほしくない」は30代後半で倍増

調査の対象は、スペインに住む18〜55歳の男女で、2025年9月29日から2026年3月31日までの26週間、ウェブ、電話、対面の聞き取りで行われた。標本は1万4,736人(女性1万2,501人、男性2,235人)。今回の速報は、質問票のうち、望む子どもの数、子どもを持つうえでの障壁と支援策、生殖補助医療の部分を先に集計したもので、詳しい確定結果は2026年12月に公表される。

望む子どもの数を「ゼロ」と答えた女性は、全体で15.5%だった。年齢別では、25歳未満が24.2%、25〜29歳が20.7%、30〜34歳が16.7%、35〜39歳が16.5%、40歳以上が11.3%と、若いほど高い。ただし2018年からの変化を見ると、増え方は年齢によって大きく違う。INEによると、35〜39歳では「ほしくない」の割合が127.0%増えて2倍を超えた一方、25歳未満では10.1%減った。前回は25歳未満の約27%が「ほしくない」と答えていた。

それでも、最も多いのは「2人」を望む女性で、25歳未満でも48.9%にのぼる。3人以上を望む女性は、30代前半までは2割ほどだが、35〜39歳で23.2%、40歳以上で27.7%と年齢とともに増える。2人以上を望む女性は全体で69.0%で、前回の73.6%から減った。男性では45.9%が2人、21.9%が3人以上を望んでいた。

母親の3人に1人が「望んだより少ない」、35歳からの壁は仕事

子どもを産んだことのある女性のうち、望んだより少ない数しか産んでいないと答えたのは34.8%で、前回の35.3%とほぼ同じだった。スペイン国籍の母親では37.1%、外国籍の母親では26.7%と差がある。

いちばんの理由を年齢別に見ると、30歳未満では「まだこれから産むつもり」が48.5%と最も多く、30〜34歳でも43.3%を占める。35歳を過ぎると、「仕事の事情や、仕事と子育ての両立」が首位になり、35〜39歳で29.2%、40〜44歳で34.4%、45歳以上で26.7%だった。40歳以上では「健康上の理由」も2割を超え、40〜44歳で22.8%、45歳以上で24.9%と2番目に多い。「経済的な理由」は、どの年代でも11〜16%ほどを占める。INEは、35歳以上の女性がより少ない子どもしか持たなかった主な理由として、仕事、両立、経済の事情を挙げている。ほかに「ふさわしいパートナーがいなかった」という理由もある。

スペインで第1子を産む母親の平均年齢は31.5歳(2024年)で、若者が親元を離れる年齢は平均30.2歳(2025年、欧州連合統計局)と、EU平均の26.3歳を大きく上回る。仕事と住まいが落ち着いてから子どもを持とうとすると、2人目、3人目を考える時期が30代後半に重なり、そこで仕事との両立や体の問題にぶつかる。調査の結果は、そうした流れを映しているように見える。

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求める支援は育休、子ども手当、そして保育園

子どもを持つことを後押しするために国に何を求めるかという問いでは、女性の22.7%が「出産・育児休業をもっと長く」を挙げて最も多かった。次いで「18歳未満の子どもへの手当」が13.4%(前回10.5%)、「0〜3歳の手頃な保育園」が11.3%(同6.8%)で、保育園を挙げる女性は6割以上増えた。「出産時の給付」は9.8%だった。「勤務時間の柔軟化」は8.2%で、前回から2割あまり減った。一方、「出産を後押しすべきだとは思わない」と答えた女性も19.4%(同15.2%)に増えた。男性では、育児休業の延長より、子どもへの経済的な給付を求める割合が高かった。なお、前回は「父母の休業を同じ長さに」という選択肢があったが、すでに実現したため今回はなくなっており、項目によっては単純に比べられない。

スペインの育児休業は、2025年の制度改正で、両親それぞれに原則19週となり、その間の給付は基準給与の100%が社会保険から支払われる。ひとり親の場合は合わせて32週だ。それでも「もっと長く」を求める声が最も多いことは、休業の長さだけでは両立の悩みが解けていないことをうかがわせる。

生殖補助医療は17人に1人

体外受精などの生殖補助医療を受けたことがある女性は6.0%で、2018年の5.4%から増えた(相対で11.9%増)。およそ17人に1人にあたる。年齢別では、30歳未満の0.4%から、30〜34歳で3.2%、35〜39歳で8.3%と上がり、40〜44歳の9.6%を頂点に、45〜49歳は9.4%、50歳以上は8.3%だった。スペイン国籍の女性では6.6%、外国籍の女性では3.6%だった。男性でも4.7%が経験があると答えている。

スペインは生殖補助医療が盛んな国として知られる。スペイン不妊学会の全国登録によると、2023年にスペイン国内で行われた治療から生まれた子どもは3万9,555人で、学会は国内の出生の約10%にあたるとしている。ただし、このうち約2割は、スペインで治療を受けた外国人の患者が国外で出産した例だ。欧州ヒト生殖学会の2020年の集計では、スペインの体外受精などの治療件数はロシア、フランスに次いで欧州で3番目に多く、卵子提供による治療は欧州で最も多かった。

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出生率1.10、EUで下から2番目

INEの人口動態統計によると、スペインの合計特殊出生率は2024年に1.10で、前年の1.12から下がった。2024年に生まれた子どもは31万8,005人で、母親の3人に1人(33.3%)は国外生まれだった。母親の国籍別の出生率は、スペイン国籍が1.07、外国籍が1.27だ。2025年の出生数は暫定で32万1,164人と、10年続いた減少から増加に転じたが、INEは確定値で見直される可能性がある推計値としている。

欧州連合統計局によると、2024年の合計特殊出生率はマルタが1.01でEU最低、スペインの1.10がそれに次ぎ、EU平均は1.34だった。

日本の読者への解説

日本の合計特殊出生率は、厚生労働省の概数で2025年に1.14、生まれた子どもは67万1,236人だった。スペインの1.10とほぼ同じ水準に見えるが、数字の範囲が違う。日本の出生率は日本にいる日本人が対象で、スペインの数字は国籍を問わない全出生が対象だ。スペイン国籍の母親に限ると1.07で、日本より低い。第1子を産む母親の平均年齢は、日本が31.0歳(2025年)、スペインが31.5歳(2024年)と、ほとんど変わらない。

「望む数の子どもを持てない」という悩みも、両国に共通している。日本の国立社会保障・人口問題研究所が2021年に行った出生動向基本調査では、妻が50歳未満の初婚どうしの夫婦が理想とする子どもの数は平均2.25人、予定している数は2.01人だった。予定が理想を下回る夫婦に理由を複数回答で聞くと、最も多いのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」の52.6%だった。結婚を希望する18〜34歳の未婚女性が望む子どもの数は1.79人で、初めて2人を下回った。

スペインの調査は、子どもを産んだ女性に、望んだより少ない理由を一つだけ聞いている。日本は夫婦に複数回答で聞いているので、割合をそのまま比べることはできない。それでも、日本では教育費を中心とした「お金」が、スペインでは「働き方と両立」が前面に出ているという違いは読み取れる。スペインの育児休業は給付の面で手厚いが、それだけでは産みたい数に届いていない。一方で、日本でも妻が35歳以上の夫婦では「高年齢で生むのはいやだから」「ほしいけれどもできないから」が多く挙がり、スペインの40歳以上では健康上の理由が2割を超える。出産の時期が遅くなるほど、年齢と体の壁が効いてくる点は、両国に共通している。

生殖補助医療の広がりも共通している。日本産科婦人科学会の集計では、2023年に日本で生殖補助医療によって生まれた子どもは約8万5,000人で、厚生労働省の出生数と比べると、およそ8〜9人に1人にあたる。スペイン不妊学会も、国内の治療で生まれた子どもが出生の約10%にあたるとしており、両国は近い水準にある。

INEの確定結果は12月に公表される。子どもを持たない理由や、パートナーとの関係、住まいとの関わりがより詳しく分かれば、スペインの少子化の姿がさらに見えてくるはずだ。

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