スペインの9月が、観測史上の記録を塗り替えている。国家気象庁(AEMET)は9月4日、前日3日にウエルバ県エル・グラナドで45.7℃を観測したと発表した。これは2016年9月にコルドバ県モントロで記録された9月のスペイン最高気温に並ぶ数字で、同時に2026年で最も高い気温でもある。セビージャ・タブラダ観測所でも3日午後5時10分に45.1℃を記録し、6月にアンドゥハルとモントロが出した今年の最高値に並んだ。AEMETは3日、ハエン県モレナ・イ・コンダードとセビージャ県カンピーニャに最高気温の赤色警報を発令した。現行の警報体系「メテオアレルタ」が始まった2007年以降、9月に赤色警報が出たのは初めてである。4日にはカタルーニャ州タラゴナ県ビネブレで暫定41.8℃を観測し、同じビネブレが2016年9月4日に出した41.6℃のカタルーニャ9月記録を10年ぶりに更新した。バルセロナのファブラ天文台も34℃を超え、同じ週の水曜に出した33.6℃の9月記録を早くも塗り替えた。カタルーニャ気象局(Meteocat)は「州の広い範囲で、9月としては前例のない気温」と表現した。この暑さは週末いっぱい続き、内陸の広い範囲で35℃超、エブロ川流域と南西部の低地では40℃超が見込まれる。本格的な気温低下は来週火曜から水曜にかけてとAEMETは見ている。本紙が9月1日に伝えた熱ドームの予告は、「ピークは木・金」という時期も「43℃」という水準も、悪い方向に的中した。
木曜の45.7℃――9月の全国記録に並ぶ
エル・グラナドはウエルバ県西部アンデバロ地方の小さな村で、ポルトガル国境に近い。スペインの猛暑で名前が挙がる常連の観測点で、2025年6月には6月としてのスペイン最高気温46℃を出している。今回の45.7℃は9月の全国記録に並んだが、皮肉なことにエル・グラナド自体はAEMETの赤色警報の対象区域に入っていなかった。地元紙ウエルバ24は「スペインのフライパン」と呼んだ。
セビージャ・タブラダの45.1℃は、6月22日のアンドゥハル(ハエン県)、6月23日のモントロ(コルドバ県)と並ぶ今年の最高値である。同じ3日にはフエンテス・デ・アンダルシアで44.5℃、モロン・デ・ラ・フロンテラで44.3℃、アンドゥハルで44.3℃を観測した。AEMETはこの日の午後、セビージャ県カンピーニャとハエン県モレナ・イ・コンダードの警報をオレンジから赤に引き上げたが、引き上げは最高気温を観測した後だったと地元メディアは指摘している。前日の2日にはテルエルが37.8℃を観測し、こちらも2016年9月4日の36.7℃という9月記録を更新していた。
金曜のカタルーニャ――ビネブレ41.8℃、バルセロナも記録
4日はエブロ川下流域が主役になった。タラゴナ県リベラ・デブレ地方のビネブレで暫定41.8℃。同じ地方のベニサネットで40.9℃、プリオラート地方のトロージャ・デル・プリオラートで40.3℃、エル・マスロッチで40.2℃と、複数の観測点が40℃を超えた。ビネブレは7月8日にも44.1℃を出しており、この夏のカタルーニャで最も暑い場所の一つになっている。バルセロナ市内のファブラ天文台は34℃を超え、9月の記録を更新した。州政府の市民保護局は猛暑対応の「プロシカット」警戒を発動し、土曜には高温域が州全体に広がると予想している。
Meteocatが9月2日に発表した夏のまとめによれば、2026年6月から8月はカタルーニャで観測史上最も暑い夏だった。州の80%で1991年から2020年の平年との差が3℃を超え、西ピレネーやビックの平野では4℃を超えた。40℃を超えた日は20日で、2025年の16日を上回って過去最多。ファブラ天文台の最高気温40.7℃は1世紀以上の観測で最も高く、バルセロナでは最低気温が20℃を下回らない熱帯夜が75夜、25℃を下回らない夜が59夜と、いずれも前例のない数字になった。レスタルティット沖の海水温は6月から22℃を下回らず、8月半ばに27.8℃まで上がった。Meteocatは「記録は特定地域の例外的な振る舞いではなく、州全体で一般的に生じた」と総括している。
週末も続く――解放は来週半ば
4日のAEMETの予報では、サラゴサ、リェイダ、ログローニョで41℃、セビージャ、コルドバ、ハエン、トレド、バダホスで40℃。オレンジ警報はコルドバ、ハエン、セビージャに加え、アラゴン3県、カンタブリア、アビラ、シウダ・レアル、クエンカ、トレド、バルセロナ、リェイダ、タラゴナ、バダホス、カセレス、マドリード、ナバラ、ギプスコア、ラ・リオハの20県に及び、黄色警報を含めれば半島のすべての自治州に何らかの警報が出た。南半分と地中海沿岸、北東部の盆地では最低気温が20℃を下回らない熱帯夜が続き、カナリア諸島と南西部の低地では25℃を下回らない夜になる。
週末は内陸の広い範囲で35℃を超え、北東部と南西部の低地では40℃超が続く。週末以降はサハラ起源の砂塵カリマが半島のほぼ全域に広がり、エストレマドゥラ、カスティージャ・イ・レオン、カンタブリア海沿岸では局地的なにわか雨や雷雨の可能性がある。AEMETは来週の火曜から水曜にかけて気温低下が全国に広がり、特に北半分で平年に近い値に戻ると見ているが、9月7日から13日の週全体としては「国内の大部分で平年より明らかに暖かく、降水は少ない」との見通しを崩していない。半島の南西沖に居座る寒冷低気圧(DANA)がアフリカ起源の気団を引き込み、秋の到来を阻んでいる構図である。
火災の危険度は4日時点で国内の大部分が「非常に高い」または「極端」で、今後数日さらに高まる。カスティージャ・イ・レオン州は3日から6日まで山火事の気象リスク警報を出し、焚き火、バーベキュー、花火、火花を出す機械の使用を禁じた。一方でカタルーニャ内陸流域の貯水率は78%と、秋の雨季を前に余裕を保っている。
夏の死者は5,247人――MoMoが2022年を超えた
暑さの代償はすでに数字になっている。カルロス3世保健研究所の日次死亡モニタリング(MoMo)によれば、5月15日から9月1日までに高温に起因すると推計される死者は5,247人で、2015年の集計開始以来最多だった2022年の4,789人を上回った。8月だけで2,147人と、この夏で最も多い月になった。5,048人が65歳以上、そのうち3,256人が85歳以上で、全体の62%を占める。本紙が8月24日に伝えた「4,200人超」は、その後の2週間でさらに1,000人以上積み上がった計算になる。MoMoは死因としての「熱中症」を数えているのではなく、高温期間の観測死亡数と予測死亡数の差を超過死亡として推計する仕組みで、日本の消防庁が集計する熱中症搬送・死亡とは性格が異なる点は改めて注意しておきたい。
AEMETによれば、2026年1月から8月はスペイン半島部で1961年の統計開始以来「明確な差をもって」最も暖かい期間だった。7月は2022年7月と並ぶ観測史上最も暑い7月で、同時に最も乾いた7月でもあった。AEMETは「スペインで温暖化が加速しているという明白な兆候」と述べている。
日本の読者への解説
45.7℃という数字は、日本の観測史上最高気温41.1℃(2018年熊谷、2020年浜松)を4℃以上上回る。それが9月に出たことの意味は、スペインの「夏の長さ」が制度の想定を超えつつあるということだ。赤色警報の体系が2007年に作られたとき、9月に44℃を超える事態は想定になかった。日本でも9月の残暑が年々厳しくなっているが、スペインでは残暑ではなく真夏がそのまま9月に食い込んでいる。
この週末から来週前半にスペインを旅する読者への実務的な助言は、9月1日の記事で書いたことに尽きる。セビージャ、コルドバ、サラゴサ、リェイダといった内陸都市では午後2時から6時の屋外移動を避け、観光は朝と日没後に寄せる。宿は冷房の有無を予約前に確認する。水は最低2リットルを持ち歩き、屋内で涼める美術館や教会を動線に組み込む。9月11日のカタルーニャの日(ディアダ)にバルセロナを訪れる予定なら、来週半ばの気温低下が予報通り来るかを前日にMeteocatで確認したい。バルセロナやバレンシアなど沿岸部は内陸ほど昼の気温は上がらないが、熱帯夜が続くため睡眠の質が落ちやすい。体調を崩したら緊急電話は112、薬局は緑十字が目印である。
記録は暫定値で、AEMETとMeteocatの確定作業で小数点以下が動く可能性はある。ただ、今週の出来事が「9月のスペインは涼しい」という旅行の常識を書き換えたことは動かない。













