スペインの手取りは、日本より高いのか低いのか

「スペインで暮らすって、お金的にどうなの?」——移住や駐在を考える人が、最初に知りたいのがこれだ。結論を先に言えば、額面の給料は日本と同程度かやや低い。だが「手取りの価値」と「暮らしの質」は、単純な金額比較では測れない。数字とリアルの両面から、正直に解剖する。

まず、給料の実額

スペインの最低賃金(SMI)は月およそ1,184ユーロ、年14回払い(夏と冬にボーナス的な月がある独特の制度)で、年額にすると約1万6千ユーロ強。平均月収は2,100ユーロ前後、より実感に近い中央値は1,800ユーロほどとされる。日本円に換算すると(1ユーロ=約160円として)、平均月収は約33万円、年収にして400万円台。日本の平均年収とおおむね同じか、やや低い水準だ。額面だけ見れば、「スペインは特に高給ではない」が正直なところである。

だが、引かれ方と「ついてくるもの」が違う

差が出るのはここからだ。スペインでは社会保険料が天引きされる一方で、その対価として公的医療がほぼ無料でついてくる。日本のような高額な医療費の自己負担や、別建ての健康保険の感覚とは異なる。さらに、有給休暇は法律で年30日が保証され、多くの人が夏に丸ごと1ヶ月休む。残業を美徳とする文化も薄い。同じ「手取り20万円」でも、それで買えている時間・休息・安心の総量が、日本とは別物なのだ。

最大の弱点は「家賃」

ただし、いいことばかりではない。スペインの暮らしの最大の重荷が都市部の家賃高騰だ。バルセロナやマドリードでは、シェアの一室で月400〜800ユーロ、単身用アパートなら800〜1,200ユーロ超。給料が日本並みで家賃がこれでは、特に若者の可処分所得は厳しい。実際、スペインは若年層の失業率の高さも長年の課題で、「安く暮らせる楽園」という牧歌的イメージは、もはや都市部には当てはまらない。

日本の読者への解説

スペインと日本の給与比較は、「どちらが得か」という単純な勝ち負けでは語れない。スペインで人々が手にしているのは、金額そのものではなく、医療・休暇・時間という形の"見えない給料"だ。長時間労働で額面を稼ぐ日本と、給料は控えめでも人生の時間を確保するスペイン——どちらを選ぶかは、お金で何を買いたいかという価値観の問題に行き着く。ただし、その「ゆとり」の足元には、家賃高騰と若年失業という現実の影があることも、移住を夢見るなら直視しておきたい。

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