アフリカの女性たちの声と経験を中心に据えて女性器切除(FGM)の根絶を話し合う国際フォーラム「アフリカの女性たちの声 女性器切除に反対して」が、10月9日(金)から10日(土)まで、バルセロナのCaixaForumで開かれる。主催は、アフリカ女性への切除に反対する人道協会(AHCAMA)。カタルーニャでの国際フォーラムは2022年、2024年に続いて3回目となる。プログラムでは、初日の開会でカタルーニャ州政府の平等・フェミニズム担当相や駐スペインのギニア大使らがあいさつすることになっており、セネガルとガンビアの女性団体や法律家、州警察、世界銀行、研究者らが「法律から実際の保護へ」「反権利の攻勢の中で運動を続ける」「変化の原動力としての地域社会」の3つの部会で議論する。2日目は証言のセッション(本の紹介と短編映画の上映)と6つのワークショップ、カタルーニャの司法と自治体の対応を取り上げ、公共政策への提言をまとめる。国連機関によると、FGMを受けた女性と少女は世界で2億3,000万人を超え、2026年だけで約450万人の少女が切除の危険にさらされている。スペインにもFGMが行われている国から来た女性が約8万人暮らし、切除の危険がある少女の推計(2018年のデータ)はバルセロナ県が全国で最も多い。参加は主催者の告知ページから申し込む。

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フォーラムの概要

名称:第3回カタルーニャ国際フォーラム「アフリカの女性たちの声 女性器切除(FGM)に反対して」(III Foro Internacional de Cataluña: Voces de las mujeres africanas contra la mutilación genital femenina)

日時:2026年10月9日(金)9時30分〜18時(17時10分からコンサート)、10日(土)9時30分〜14時30分ごろ。受付は両日とも9時から。

会場:CaixaForum Barcelona(Av. de Francesc Ferrer i Guàrdia 6-8。モンジュイックの丘のふもと、スペイン広場の近く)

主催:AHCAMA(アフリカ女性への切除に反対する人道協会)

支援:スペイン平等省のジェンダー暴力対策政府代表部、カタルーニャ州政府の平等・フェミニズム省、バルセロナ県、バルセロナ市、「ラ・カイシャ」財団、FGM根絶をめざす欧州ネットワーク(End FGM European Network)など。協力団体には、州警察(モソス・ダスクアドラ)、世界の医療団、フンダシオ・グネ、カタルーニャ開発協力基金などが名を連ねる。

参加:主催者の告知ページから申込フォームに進む。プログラムはスペイン語、カタルーニャ語、フランス語、英語で公開されている。参加費、配信の有無、申し込みの締め切り、当日参加の可否は、告知ページには書かれていない。

会場では、参加者の子どもを預かる託児と、心理士が個別に話を聞く心理的なケア(スペイン語・英語、秘密厳守)が両日とも用意されている。プログラムの案内は、フォーラムのテーマが苦しさや悲しみ、不安、体が固まるような感覚といった心や体の反応を引き起こすことがあるとして、軽い不調でも遠慮なく声をかけるよう呼びかけている。合間には、音楽に合わせて体を動かす時間も組み込まれた。

初日(9日):法律、運動、地域社会の3つの部会

以下の登壇者と肩書きは、主催者が公開したプログラムによる。初日のテーマは「FGMの現状、運動の持続、地域社会のリーダーシップ」。司会進行は、FGM根絶をめざす欧州ネットワークのアミナタ・バーが務める。

開会(9時30分):プログラムでは、AHCAMA会長のアイサトゥ・ディアロ、スペイン中央政府のカタルーニャ代表部でフェミニズムを担当するトリニダード・ゴメス・ガルシア、バルセロナ県のラケル・アルビオル、駐スペイン・マルタのギニア大使フラモイ・マラ、カタルーニャ州政府の平等・フェミニズム担当相エバ・メノールが、あいさつすることになっている。

第1部会「FGMの現状:法律から実際の保護へ」(10時15分〜11時40分):禁止の法律ができても、それだけで切除がなくなるわけではない。この部会は、法律を実際に少女を守る力に変えるには何が要るかを問う。セネガルのOMIRAS・COSEFのファティマタ・カン・ソウが「法と社会規範:FGMの禁止を本当に効かせるものは何か」、ガンビア女性弁護士協会(FLAG)のルブナ・ファラージが「勝ち取った権利を守る:ガンビアでFGMの禁止を維持する」、カタルーニャ州警察のアンドレア・ガルシア巡査部長が「FGMの危険がある状況の発見と予防的な対応」について話す。司会はガンビアの団体ワッス・ガンビア・カフォのアイナ・マンガス。

第2部会「FGMに反対する持続可能な運動をつくる:反権利の攻勢に対する連帯、ケア、集団行動」(12時10分〜13時35分):部会名にある「反権利の攻勢」に向き合いながら、運動をどう続けるかがテーマだ。フランスの団体「エクシジオン、パルロンザン(切除について話そう)」会長のラマタ・カポ、世界銀行のイザベラ・ミカリ・ドロッソス、ワッス・ガンビア・カフォのアドリアナ・カプラン、英国の団体ウィメン・オブ・グレイスの創設者バレリー・ロロマリが登壇する。演題には「後退の時代に国際協力と多国間主義を保つ」「研究から行動へ」「ケアは政治の力」が並ぶ。司会はFGM根絶をめざす欧州ネットワークのマリアンヌ・ンゲナ・カナ。15時には集合写真を撮る。

第3部会「変化の原動力としての地域社会:地域のリーダーシップと異文化間の仲介」(15時15分〜16時50分):主催者は、FGMが純潔や貞節を女性らしさと結びつける社会・文化の規範の中で続き、家の名誉や娘の結婚を守るといった誤った信念によっても支えられてきたと説明している。この部会では、地域での対話でFGMの正当性を崩す試み(ジョケレ・エンダムのマリアマ・ディアオ)、FGMの予防と被害の回復に必要な権利やサービスに実際にたどり着けるようにする異文化間の仲介(アミナタ・ネットワークのアミナタ・スコ)、男性を変化に巻き込む取り組み(ギニアの団体アミ・デュ・モンドのブバカル・シラ)、若い世代のリーダーシップ(セーブ・ア・ガール・セーブ・ア・ジェネレーションのアイサタ・バー)が報告される。司会はカリブ(Karibu)協会のニコル・ンドンゴル。17時10分からはコンサートがある。

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2日目(10日):証言、6つのワークショップ、カタルーニャの対応

2日目のテーマは「包括的なケア、協力、社会の変化」。司会進行は、性的虐待に反対する活動家のカルマ・ディアビが務める。

証言(9時30分〜10時15分):ベルギーの団体GAMSのマリアマ・バーが本を紹介し、コートジボワールの俳優で活動家のナキ・シ・サバネが短編映画を上映する。本と映画の題名は、プログラムには記されていない。

好事例のワークショップ(10時30分〜12時):参加者が6つのグループに分かれ、道具や経験を持ち寄る参加型のセッション。テーマは3つで、各2グループずつ開かれる。①経験者への寄り添いと回復、トラウマに配慮した支援 ②社会規範の変化、リーダーシップ、地域での予防 ③国・州・国際の各レベルでの連携と政策提言。

「FGMに向き合うカタルーニャ:知識、司法、行政による実効ある保護」(12時30分〜13時15分):ワッス・ガンビア・カフォのアイナ・マンガスが「予防のための知識:カタルーニャのエビデンス、研修、残された課題」、プログラムでスペイン女性裁判官協会(AMJE)会長・裁判官と紹介されているアナ・リベルタッドが「FGMの危険から守る:カタルーニャの司法の対応」、カタルーニャ開発協力基金のオリベル・ペニャが「カタルーニャの市町村の役割」について話す。

全体会(13時15分〜14時15分)と閉会(14時30分から):全体会でワークショップの結論と政策への提言を発表する。閉会では、ギニアの都市キシドゥグの市議で保健委員長のケイタ・コフィと、ジローナ市議でカタルーニャ開発協力基金の理事を務めるアミナタ・サバリがあいさつする。

主催者は、このフォーラムの成果として、法律・異文化間の仲介・協力の分野で10〜12の好事例を記録し、公共政策への提言を盛り込んだ行動計画と最終報告書をまとめるとしている。

女性器切除(FGM)とは

世界保健機関(WHO)は、FGMを「医療以外の理由で、女性の外性器の一部または全部を切除する、あるいは女性の性器にその他の傷を負わせるすべての処置」と定義している。陰核亀頭の一部または全部を切り取るものから、陰唇を切って位置を変え、縫い合わせることもある「陰部封鎖」まで、4つの型に分けられる。健康上の利点はまったくなく、激しい痛みや出血、感染症、最悪の場合は死につながるほか、排尿や月経、出産の合併症、心の傷が長く残ることがある。多くは乳児から15歳までの少女に行われる。

国連児童基金(ユニセフ)が2024年3月に公表した推計では、FGMを受けた女性と少女は世界で2億3,000万人を超える。国連の6機関が2026年2月6日の「FGM根絶のための国際デー」に出した共同声明は、2026年だけで推定450万人の少女が切除の危険にさらされ、その多くが5歳未満だとした。共同声明によると、1990年以降、切除を受ける少女の割合は2人に1人から3人に1人に下がり、その改善の半分はこの10年に起きた。それでも国連は2025年2月、このままでは2030年までにさらに2,700万人の少女が切除を受けかねないと警告している。持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる「2030年までの根絶」は遠い。2026年の共同声明は、資金の削減と、保健・教育・子どもの保護への国際的な投資の減少に加え、根絶の取り組みへの組織的な反発が強まり、医師や医療従事者が行えば許されるという危険な主張も出ていると懸念を示した。

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「禁止を守る」が議題になる理由:ガンビアの攻防

初日の第1部会で、ガンビア女性弁護士協会のルブナ・ファラージが「禁止の維持」を演題に掲げる背景には、同国でいったん成立した禁止が揺らいできた経緯がある。ガンビアは2015年に女性法を改正し、FGMを犯罪とした。2024年には国会議員が禁止を撤廃する法案を提出し、国際的な注目を集めたが、国会は同年7月15日に法案を否決した。

禁止の撤廃を求める側は、最高裁にも違憲訴訟を起こしている。原告はアルマメ・ギッバ議員ら8人で、禁止が文化や信教の自由を侵すと主張している。最高裁は自らの管轄を認めて審理を進め、2026年7月には国側の弁護に入った。10月初めの時点で、判決は報じられていない。

プログラムで開会のあいさつが予定されているギニア大使の本国ギニアは、15〜49歳の女性の約95%が切除を受けており(2018年の人口保健調査)、世界でも実施率が特に高い国の一つだ。

スペインとカタルーニャの現状

デシウス女性財団が2026年2月の発表で引用した、バルセロナ自治大学(UAB)のワッス財団の「スペインのFGM地図」によると、スペインにはFGMが行われている国から来た女性が約8万人暮らし、うち約1万8,000人が14歳未満だ。出身国は主にセネガル、ナイジェリア、ガーナ、ガンビア、マリとされる。

そのすべてが切除の危険にさらされているわけではない。平等省のジェンダー暴力対策政府代表部が2020年に発表した研究は、2018年の住民登録をもとに、実施国出身の0〜14歳の少女1万5,562人のうち3,652人が切除の危険にあると推計した。県別ではバルセロナ県の746人が全国で最も多く、ジローナ県の504人が続く。カタルーニャ4県の合計は1,575人に上る。

スペインの刑法は2003年の改正で、FGMを明文で罰する規定を設けた(149条2項)。刑は懲役6〜12年で、被害者が未成年なら、親権などの資格停止(4〜10年)を加えることができる。2011年にはテルエル県の裁判所が、娘に切除を受けさせたとしてガンビア出身の両親に有罪判決を言い渡し(父親に懲役6年)、最高裁も翌年これを支持している。また、国外で行われた切除も、被告がスペイン人やスペインに常住する外国人であれば、スペインの裁判所で裁ける。2022年の性暴力の包括法(いわゆる「イエスだけがイエス」法)は、FGMを性暴力の一つと明記した。

医療の現場では、切除の後遺症に対する手術が広がっている。バルセロナのホスピタル・クリニックは2026年2月、FGMを受けた女性の性器再建の取り組みを始めて10年で、99人を診察し、77人に手術をしたと発表した。2025年には16人がプライマリケアの診療所から紹介された。デシウス女性財団は2007年から無償で陰核の再建手術を行っており、2025年末までに238人を診察し、163人を手術した。そのうち96人がカタルーニャ在住だ。

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主催のAHCAMAとフォーラムのこれまで

AHCAMAは、ギニア出身のアイサトゥ・ディアロが設立した団体で、ディアロは現在も会長を務める。ディアロは自身も子どものころに切除を受けたことを実名で語っており、2018年のEFE通信の取材では「8歳だったが、今もすべて覚えている」と話している。

カタルーニャでの国際フォーラムは、2022年の第1回、2024年10月の第2回(バルセロナのアラゴン連合王国文書館)に続く3回目。過去2回はフンダシオ・グネとの共催で、第2回では参加した活動家らが、FGMの根絶に向けた国際的な取り組みの強化を求める宣言をまとめた。今回はAHCAMAが単独で主催し、グネは協力団体に名を連ねている。AHCAMAは毎年2月6日の国際デーに合わせた「6F STOP MGF」の催しも開いており、2024年の国際デーにはCaixaForumでも集まりを持った。

日本の読者への解説

FGMは、日本では「女子割礼」と呼ばれることもあった。しかし男性の割礼とは性質がまったく違い、健康上の利点はなく、少女の体と心に生涯にわたる傷を残しうる。WHOや国連機関は行為の重さを示すため「切除(mutilation)」という語を使っており、日本語では「女性器切除」「女性性器切除」と訳されている。

遠いアフリカの話に聞こえるかもしれないが、スペインにとっては国内の問題でもある。西アフリカから移り住んだ家族が多いカタルーニャでは、切除の危険がある少女の推計が全国で最も多い。刑法で罰するだけでなく、危険を早く見つけて防ぐことが課題になっており、今回のフォーラムにも州警察の担当者や裁判官、自治体の協力基金が登壇する。病院や財団による再建手術の取り組みも、すでに切除を受けた女性たちの回復を支える仕組みとして広がっている。

このフォーラムのもう一つの特徴は、アフリカの女性たち自身の声を中心に据えていることだ。主催者は、影響を受ける地域社会が意味のある形で参加することを目的に掲げ、FGMを経験したアフリカの女性たちが変化の担い手としてリーダーシップを発揮することを、期待される成果の一つに挙げている。プログラムには、地域での対話、男性の巻き込み、若い世代のリーダーシップ、経験者への寄り添いが並ぶ。外から非難するだけでなく、慣習を内側から変えようとする発想だと言える。

ガンビアの例が示すように、いったん勝ち取った禁止も、文化や宗教をめぐる主張の中で揺らぎうる。国連機関が資金の削減や根絶の取り組みへの反発に懸念を示すなかで、取り組みを続ける力をどう保つかも問われている。初日の部会名や演題に「反権利の攻勢」「後退の時代」という言葉が並ぶのは、その危機感の表れだろう。

バルセロナ在住の人にとって、会場のCaixaForumはスペイン広場から歩いて行ける距離にある。2日目には本の紹介や短編映画の上映もある。関心のある人は、主催者の告知ページで申し込み方法を確認してほしい。

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