スペインの賃金は名目では上がり続けているが、物価と住宅費の上昇に追いついていない。労働省の集計では、今年の賃上げを定めた労働協約の平均賃上げ率は8月時点で3.04%で、8月の物価上昇率4.3%を下回った。物価上昇率は9月に速報で4.9%まで高まった。経済協力開発機構(OECD)は7月、スペインの実質賃金は直近の1年で約2%回復したものの、まだ2021年1〜3月期より2%低いと指摘した。欧州連合(EU)統計局によると、2024年のフルタイム換算の平均年収はスペインが33,700ユーロで、EU平均の約39,800ユーロより約6,100ユーロ(約15%)低い。住宅価格は4〜6月期に前年同期比12.2%上がった。賃金と住宅は、11月11日に予定される全国ゼネストと、11月29日の総選挙の争点になっている。
名目は上昇、ただ最も多い年収(最頻値)は16,520ユーロ
国立統計局(INE)の賃金構造調査では、2024年の平均年収(税・社会保険料を引く前)は29,540ユーロで、前年より5.3%増えた。平均は高い賃金に引き上げられやすく、真ん中の人の年収(中央値)は24,497ユーロ、最も多い年収(最頻値)は16,520ユーロだった。INEによると、2026年4〜6月期の労働者1人・1か月あたりの労働コストは3,388ユーロで、前年より4.0%増えた。このうち賃金の部分も4.0%増えた。
物価に負ける賃上げ
4〜6月期の賃金コストの伸び(4.0%)は、同じ期の物価上昇率(4〜6月はいずれも3.2%)を上回っていた。しかし物価の伸びは夏以降に高まり、7月の3.6%から8月は4.3%、9月は4.9%(速報)になって、協約の賃上げ率を大きく上回った。9月の伸びを押し上げたのは、燃料の値上がり(前年の同じ月は値下がりしていた)と、パッケージツアーの値下がりが前年より小さかったことだった。OECDの雇用見通しによると、スペインはコロナ後に実質賃金の落ち込みが最も大きかった国の一つで、最近の回復でも2021年1〜3月期の水準に戻っていない。
最低賃金は2026年に月1,221ユーロ(年14回払いで年17,094ユーロ)となり、前年から3.1%上がった。2021年9月に改定された年13,510ユーロからの上昇率は26.5%になる。OECDは、最低賃金の大幅な引き上げが低賃金の人を物価上昇から守った一方で、それ以外の多くの働き手の実質賃金は伸び悩んでいるとみている。
住宅価格と家賃の負担
住宅価格の上昇はさらに速い。INEの住宅価格指数は4〜6月期に前年同期比12.2%上がり、同じ期の賃金コストの伸び(4.0%)の約3倍だった。不動産サイトのフォトカサと求人サイトのインフォジョブズ、不動産サイトのピソス・ドット・コムの各調査は、2025年のデータで、80〜90平方メートルの住宅を平均的な家賃で借りると、1人分の平均的な給与(税・社会保険料を引く前)の約半分になると試算している。フォトカサとインフォジョブズの調査では、この割合は2019年の38%、2024年の47%から上がっている。スペイン銀行のヌニェス副総裁は9月、国内で足りない住宅が2028年に100万戸を超えうるとの見通しを示した(住宅不足の記事)。
日本の読者への解説
スペインでは、給与の額面が上がっても、物価と家賃の上昇がそれを上回り、暮らしが楽にならないという不満が強まっている。労働組合のCCOOとUGTは住宅と賃金を掲げ、11月11日に全国でゼネストを予定している(ゼネストの記事)。総選挙では、各党の賃金と住宅の政策が問われる。













