スペインの中央銀行にあたるスペイン銀行は、国内で足りない住宅が2028年には100万戸を超えうるとの見方を示している。9月23日にマドリードで講演したソレダード・ヌニェス副総裁が、2021年以降にたまった不足が約75万5,000戸にのぼり、2026年から2028年にさらに約30万戸増えると説明した。10月9日に経済見通しを公表した際も、この見通しを据え置いた。住宅の不足と価格の上昇は、立ち退きをきっかけに広がった抗議の背景にあり、11月29日の総選挙の大きな争点にもなっている。10月9日の報告は、住宅への投資が建築許可の発行の鈍化やコストの上昇、送電網への接続の難しさで予想より伸びておらず、今後も人手や土地の不足が制約になるとみている。
2021年以降、不足が膨らむ
スペイン銀行は、2021年以降、新築の住宅の供給が世帯の増加に追いつかず、その差が広がってきたとみている。6月に公表した年次報告では、2021年から2025年までの不足を約75万戸と見積もり、2023年の分析の約60万戸から引き上げていた。この不足はイタリアの2倍近くにあたる。10月の説明では、新築の完成は、公的な保護住宅を除くと年に9万〜10万戸ほどで、ほぼ横ばいが続いている。
価格は1980年の3.5倍に
ヌニェス副総裁の講演によると、実質の住宅価格は2024年から上昇が速まり、2005年ごろと同じ水準にある。1980年と比べると、スペインの実質の可処分所得は1.8倍になったのに対し、実質の住宅価格は3.5倍になった。ユーロ圏全体ではそれぞれ1.6倍と1.8倍で、スペインの価格の上昇が際立つ。住宅を買う負担は所得より速く重くなり、特に若者や新たに移り住んだ人に厳しいという。一方で、住宅ローンの審査は慎重で、家計の借金の比率はユーロ圏の平均より14ポイント低く、2008年の世界金融危機の前のようなリスクの構図ではないとした。ただし、価格の急上昇には監視と、供給を増やす効果的な政策、責任ある融資基準の継続が必要だと述べた。
投資の伸びが鈍い理由
10月9日の報告は、住宅への投資が予想より伸びていない理由として、建築許可の発行ペースの鈍化や新築の完成率の低下、コストの上昇、送電網への接続の難しさを挙げた。今後の制約としては、人手不足、都市計画の遅れ、すぐに建てられる土地の不足を指摘した。それでも、着工の増加や建設向けの融資から、2027年には投資が勢いを増すとみており、公的な保護住宅の計画が進めば押し上げにつながるとしている。見通しの公表にあわせて、政府の住宅政令については影響を評価するには「まだ早い」との説明もあった。
日本の読者への解説
スペインでは、住宅の不足と家賃・価格の高騰が大きな社会問題になっている。9月下旬、マドリードで87歳の女性が住まいを追われたことをきっかけに各地で抗議が広がった。政府は住宅をめぐる政令2本を出したが、10月2日に下院で否決され、これが議会の解散と総選挙につながった。政府は10月6日に2本を手直しして出し直し、議会の常設委員会での承認を目指している。女性は10月7日に入院先で亡くなった。11月11日には住宅と賃金を掲げた全国のゼネストも予定されている。













