スペインの2026年の夏は、9月に入ってからも終わらなかった。9月3日(木)、ウエルバ県エル・グラナドで45.7度を観測し、2016年にコルドバ県モントロで記録された9月の国内最高気温にタイとなった。同じ日、気象庁AEMETはセビージャ県とハエン県に気象警報制度が始まった2007年以来初めて、9月の最高気温「赤色警報」を発令し、セビージャ・タブラダでは45.1度を記録した。前日2日にはテルエルが37.8度で9月の観測史上最高を更新している。1月から8月までの平均気温は観測史上最高で、7月は史上最も暑い月にタイ、夏(6〜8月)は1961年以来最も暑かった。カルロス3世保健研究所の推計では、5月15日から8月31日までの暑さに起因する死亡は5,232人で、2015年の集計開始以来最多。そして今日9月16日(水)、AEMETは「急激な天候の変化」を予告し、7つの自治州に大雨・雷雨の警報を出した。バルセロナとジローナには1〜12時間で40〜100ミリの橙色警報、北部内陸では最高気温が一気に10度以上下がる。9月の記録的な暑さの中身と、この夏が残した数字を整理する。
9月3日──45.7度と、9月初の赤色警報
AEMETによれば、9月3日にエル・グラナド(ウエルバ県、ポルトガル国境に近いアンデバロ地方の村)で観測した45.7度は2026年にスペインで記録された最高気温であり、同時に9月の国内観測史上最高だった2016年モントロの45.7度と並んだ。スペインの通年の国内最高記録はコルドバ県ラ・ランブラの47.6度(2021年)で、これは破られていない。
この日に注目すべきはむしろ警報の方だ。AEMETは9月3日、セビージャ県のカンピーニャ地方とハエン県のモレナ・イ・コンダド地方に最高気温の赤色警報(最上位)を出した。現在の警報制度「メテオアレルタ」は2007年に始まったが、9月に赤色の高温警報が出たのはこれが初めてである。セビージャ・タブラダはこの日45.1度を記録した。
前日の9月2日にはアラゴン州テルエルが37.8度を記録し、2016年の36.7度を超えて9月の観測史上最高を更新した。海抜900メートル超の内陸高地の都市で、9月に38度近くまで上がるのは異常値と言っていい。
1〜8月は史上最高、夏は1961年以来最も暑く
9月上旬の高温は突発的な現象ではなく、年初から続く傾向の延長にある。AEMETはスペイン本土の2026年1〜8月が観測史上最も暑い期間で、しかもそれに次ぐ4つの年との差が「明確」だと発表した。7月は観測史上最も暑い月にタイ、気象学上の夏(6月1日〜8月31日)は1961年以来最も暑い夏として終わった。
AEMETの表現を借りれば、これは「スペインで温暖化が加速していることの紛れもない兆候」である。同庁は同時に、この秋(9〜11月)が平年より暖かくなる確率を60〜70%と見積もっている。9月上旬の45度は「夏の残り」ではなく、暖かい秋の入口として位置づけられている。
暑さによる死亡5,232人──集計開始以来の最多
カルロス3世保健研究所(ISCIII)の日次死亡モニタリング「MoMo」は、暑さ対策の国家計画が発動する5月15日から8月31日までの期間で、高温に起因する死亡を5,232人と推計した。2015年に現在の推計が始まって以来の最多で、これまで最悪だった2022年の4,789人、2023年の3,035人を上回った。
月別では7月が2,025人、8月が2,147人(暫定値)。2025年8月の2,172人に迫る水準で、7月としては史上2番目に多い。年齢別では65歳以上が5,048人で大半を占め、85歳以上が3,256人(62%)。性別では60%が女性だった。
注意すべきは数字の性格だ。MoMoは死亡診断書で「熱中症」と個別に認定された死者を数えているのではなく、死亡統計と気温の影響から統計的に推計した「気温に起因する超過死亡」を示している。約1万3千人が死亡したと推計され、保健省の暑さ対策計画が作られるきっかけとなった2003年の熱波には及ばないが、対策計画ができてからの20年余りでは最悪の夏ということになる。地域別では、マラガ県が144人で2025年通年の2倍超、バレンシア州は8月だけで225人と報じられている。
この夏の暑さがなぜスペインで死者に直結するのか、日本との違いを含めた構造的な背景は当サイトの「観測史上最も暑い夏、熱中症関連死4,200人超」で、熱中症の見分け方と112への通報の仕方は熱中症の完全ガイドにまとめている。8月24日時点で4,200人超だった推計は、8月末の確定作業で5,232人まで積み上がった。
9月16日──「急激な変化」で夏が終わる
AEMETは9月15日、翌16日(水)に「急激な天候の変化」が起きるとして注意を呼びかけた。地中海側に流れ込む冷たい空気が、まだ熱を蓄えた地表と海の上で激しい雷雨を生む典型的な秋の入口の型である。
警報が出たのはアラゴン、カタルーニャ、バレンシア、バレアレス、アンダルシア、カスティーリャ・ラ・マンチャ、ムルシアの7つの自治州。主な内容は次のとおり。
カタルーニャ(バルセロナ県・ジローナ県):橙色警報。14時から深夜にかけて1時間に40ミリ、12時間で100ミリの降雨。
バレンシア県:橙色警報。16時から深夜に1時間40ミリ、3〜4センチの雹。
テルエル県:橙色警報。14〜22時に1時間30ミリ、アラゴン全体で2〜4センチの雹、サラゴサで最大瞬間風速70キロ。
マジョルカ島:黄色警報。13〜19時に1時間20ミリ。イビサ、フォルメンテラも激しい雷雨の見込み。
気温は北部・中部で大きく下がる。パンプローナとログローニョは前日の35〜36度から24〜25度へ、1日で10度以上の下落だ。9月上旬に45度を記録したアンダルシアも警報圏に入っている。バルセロナでは9月9日にも赤色警報級の雷雨で携帯電話への緊急速報ES-Alertが220万人に送られたばかりで(当時の速報)、乾き切った地面に短時間で大量の雨が落ちる局面が続く。
日本の読者への解説
日本でも9月の残暑は年々厳しくなっているが、スペインの今年は「残暑」という言葉で片づけられる規模ではなかった。9月3日の45.7度は日本の国内最高記録41.8度(2025年、群馬県伊勢崎市)より4度近く高く、しかもそれが9月に、国土の南西端の村で出ている。気象警報の最上位「赤色」が9月に高温で出たのは制度開始以来初めてで、これは日本で言えば9月に「高温に関する特別警報」が初めて出るような出来事だ。
死亡推計の5,232人という数字は、日本の熱中症死亡(人口動態統計で2024年は2,160人、過去最多)と単純比較はできない。スペインのMoMoは「暑さがなければ起きなかったはずの死亡」を統計的に推計する方式で、診断書ベースの日本の数字より広く取る。それでも、人口約5,000万人の国で1つの夏に5,000人を超えるという規模と、その6割以上が85歳以上という偏りは、暑さが高齢者の命をどれだけ削るかを示している。
実務的には、今日16日から週後半にかけての旅行者は雷雨と雹、そして急な気温低下に備えるべきだ。特にバルセロナ、バレンシア、マジョルカは短時間の豪雨で道路が川になり、地下鉄や近郊鉄道が止まることがある。9月9日のバルセロナでは携帯電話に一斉に緊急速報が鳴った。スペインの携帯回線を使っていれば日本の緊急地震速報と同じ形で警報が届くので、鳴ったら屋外の低地や地下から離れるのが原則だ。長袖1枚を鞄に入れておくことも、今週は冗談ではなく実用的な助言になる。













