スペインのサンチェス首相は、10月9日に公開されたニュースサイト「エルディアリオ(elDiario.es)」のインタビューで、昨年11月に最高裁で有罪となって辞任したアルバロ・ガルシア・オルティス前検事総長への恩赦を、11月29日の総選挙の前に閣議で承認する可能性について「排除しない」と答えた。前検事総長は、マドリード州のアユソ首相のパートナーの脱税事件をめぐる秘密の情報を漏らした罪で、検事総長職の資格停止2年などの判決を受けた。恩赦の申請に対し、検察は一部の恩赦に賛成したが、最高裁は6月に反対の報告書を出した。報告書に拘束力はなく、決めるのは政府だ。最大野党の国民党のテジャード幹事長は、恩赦はサンチェス氏が借りを返すためだと批判した。
「排除しない」
インタビューで、総選挙の前に閣議で前検事総長への恩赦を承認するかと問われたサンチェス氏は、「残っている法案や措置をすべて検討し、常設代表部か、行政権としての政府自身で承認できるかを見ている」と答え(常設代表部は、下院の解散中に、政令の承認など一部の権限を引き継ぐ機関)、さらに「排除しないのか」と問われて「排除しない」と述べた。恩赦をするとは明言していない。現在のペラマト検事総長は同じ9日、サラマンカで報道陣に、政府が何をするかには立ち入らないとしつつ、検察が恩赦に賛成の報告書を出したことに触れた。
アユソ氏のパートナーをめぐる情報漏えいで有罪
最高裁は2025年11月20日、ガルシア・オルティス氏を秘密の情報を漏らした罪で有罪とした。アユソ州首相のパートナー、アルベルト・ゴンサレス・アマドール氏の脱税事件に関する情報だった。刑は検事総長職の資格停止2年、罰金7,200ユーロ、ゴンサレス・アマドール氏への慰謝料1万ユーロ。ガルシア・オルティス氏は11月24日に辞任した。
検察は賛成、最高裁は反対
恩赦は本人ではなく第三者が申請した。検察は5月上旬、最高裁検察局のマリア・アンヘレス・サンチェス・コンデ次長検事の報告書で、2027年12月まで残る資格停止を免除する一部の恩赦に賛成した(EFE通信など)。一方、判決を下した最高裁の刑事部は6月11日、多数決で、「正義、衡平、公益上の理由が見当たらない」として反対の報告書を出した。この報告書は必ず求められるが、政府を縛るものではない。ただ、判決を下した裁判所が反対している場合、刑のすべてを免除する恩赦はできず、一部の恩赦にとどまる。
国民党「サンチェス氏は負けると分かっている」
国民党のミゲル・テジャード幹事長はXに、サンチェス氏は「負けると分かっている」とし、「従順なガルシア・オルティス氏がぐらついて、口を割りたくなる場合に備えて、残った借りを急いで返さなければならない」と投稿した。
日本の読者への解説
スペインでは、恩赦は政府が閣議で決める。政権に近い人物への恩赦は、政治的な論争になりやすい。検事総長は政府が任命する職で、現職の検事総長が有罪になったことは、政権と司法の関係をめぐる大きな争点になってきた。総選挙を前に、政府が恩赦に踏み切るかどうかが注目される。













