スペインで新学期を迎える家庭は、公立学校を選んでも教育に関わる出費をゼロにはできない。消費者団体OCUが8月26日に公表した調査では、2026~27年度に見込まれる子ども1人当たりの年間支出は、公立で平均1,294ユーロ、全学校種別の平均では2,484ユーロだった。授業料だけでなく、給食や教材、課外活動などを含む家計の支出である。9月に一度に請求される金額でも、全家庭が必ず払う料金でもない。無償の授業があっても、子どもの学校生活を支える費用は別に残るという実態が浮かぶ。

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年間の見込み額を「新学期の請求書」と読まない

OCUは、3~18歳の子ども1,096人について、保護者773人から回答を集めた。今回の金額は、これから始まる年度に家庭が見込む支出を整理したもので、終了した学年の実績を集計したものではない。全体の平均を算出する際には、公立67%、公費補助を受ける私立24%、私立9%という学校種別の構成で調整している。

年間支出という集計は、家計の負担を広く捉えるために役立つ。一方で、その金額を新学期に集中する支払いと同じ意味で使うと、必要な現金の時期を誤って伝えてしまう。教材の購入と、利用する月ごとの給食代では、支出が生じるタイミングが違う。年額から分かる重さと、ある月の財布にかかる重さは分けて考える必要がある。

平均であることにも意味がある。給食を使う家庭と使わない家庭、課外活動に参加する家庭としない家庭の支出は同じではない。平均1,294ユーロは、公立に通う子ども全員に同額の支払い義務があるという説明には使えない。自分の家庭の予算と比べるなら、数字の大小より先に、何が含まれているかを合わせる必要がある。

予想支出である以上、年度が進む間に実際の金額が変わることも考えられる。活動への参加を決める時期や、新たに必要になる教材によって見通しは動く。今回の数字は、新年度を前にした家庭の予算感を示す資料として意味があるが、年度末の決算まで先取りした数字として扱うことはできない。

そのため、この調査を読む際の出発点は「学校がいくら請求するか」より広い。家庭が学校生活のためにどれだけ支出する見込みか、という問いである。支払先が学校なのか、教材を買う店なのか、活動を提供する団体なのかによっても性質は異なる。教育費という一つの言葉の中に、さまざまな支出が入っている。

「公立か私立か」の二択では見えない差

学校種別では、公費補助を受ける私立「コンセルタード」が年平均3,450ユーロ、私立が8,761ユーロとなった。公立との差は、それぞれ2,156ユーロと7,467ユーロである。これは調査の平均同士を引いた差で、学校を替えれば同じ家庭の支出がそのまま同額増減するという意味ではない。

コンセルタードは、私立の運営でありながら、公的な補助の枠組みに入る学校だ。スペインの教育法は、公立とコンセルタードについて、無償とされる教育の対価を家庭から取ることや、特定団体への寄付を義務づけることなどを禁じている。付随するサービスや課外活動も、無償教育の原則と区別される仕組みになっている。

したがって、家庭の年額支出が高いという調査結果だけから、その学校が違法な授業料を取っているとは認定できない。反対に、公的補助を受ける学校だから家庭の支払いは一切ない、と考えることもできない。授業に対する支払いなのか、任意のサービスなのか、どの教育段階の費用なのかを分けて確かめる必要がある。

学校選びで平均値が役立つのは、費用の範囲を質問するきっかけになる点だ。月額として案内された金額に何が入り、年度の途中でどんな支出があるのか。選択しないことができる項目はどれか。学校種別だけで家計の負担を見積もるより、年間を通した項目を確かめる方が、入学後の認識のずれを小さくできる。

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毎月の小さくない支払いが積み上がる

公立の給食利用者が見込む費用は、平均で月97ユーロ。課外活動を利用する場合は月70ユーロだった。ここでの平均は、それぞれのサービスを使う家庭についての数字である。すべての子どもが毎月両方を払うという意味ではなく、年間の公立平均にそのまま追加してよい数字でもない。

年額と月額が混在すると、負担を二重に数えやすい。年間教育費に給食が含まれているのに、別に示された給食費をもう一度足せば、実際より大きな金額を作ってしまう。制服や教材などについても、全員の平均なのか、購入する人の平均なのかを確認しなければならない。項目を足し算するだけでは、調査の合計を再現できない場合がある。

一方、給食や放課後の活動を家計から外せば、必ずその分だけ負担が軽くなるとも限らない。家庭によっては、昼食を用意する時間や送迎の調整、保護者の働き方との関係も考える必要があるからだ。これはすべての家庭に同じ事情があるという話ではないが、任意の支払いが生活上は選びにくいこともある。

無償教育を家計の視点から評価するときには、そうした時間の条件も関係する。授業にお金がかからないことは大きい。そのうえで、子どもが通い続けられる時間割と家庭の生活をどうつなぐかが残る。給食代を単なる追加の買い物と見るか、就労と学校生活を両立する費用と見るかで、負担の受け止め方は変わる。

同じ平均額でも、家庭への重さは違う

年1,294ユーロという数字だけでは、支出のために何を調整する必要があるかまでは分からない。すでに教材を持っている家庭と、新たにそろえる家庭でも事情は違う。子どもの数や年齢、学校が用意する物品、利用できる支援によっても変わる。国全体の平均は、個々の家庭の負担を言い当てるものではない。

兄弟姉妹がいる場合には、単純な人数分の掛け算にも限界がある。共有できるものがあれば一人当たりの追加支出は下がる可能性がある一方、学年や指定教材が異なれば使い回せない場合もある。学校に複数の子どもを通わせる家計を見るなら、人数だけでなく、同時に必要になる支払いを把握する方が実態に近づく。

また、収入に対する重さと金額の大きさは別の尺度だ。支出額が小さい家庭でも、自由に使える余裕が少なければ負担は重い。逆に、支出が多いことだけをもって困窮しているとはいえない。今回の平均支出を、そのまま教育の受けやすさや家計の困難さの順位に置き換えることはできない。

この違いは政策にも関わる。教材を購入する時期の負担を軽くする支援と、年度を通じたサービスの利用を支える支援では、解決する問題が異なる。新学期の買い物を助ける制度があっても、毎月の支払いが自動的になくなるわけではない。どの費目を、どの時期に、どの家庭について軽減する制度なのかを見なければ、支援の効果は判断できない。

支払いの時期は、年間総額では隠れてしまう条件だ。同じ年額でも、まとめて払う場合と月ごとに分かれる場合では、必要になる手元資金が違う。支援を受けられるとしても、購入時に使えるのか、後で精算するのかによって家計の準備は変わる。制度を比べる際には、金額に加えて受け取り方を見る必要がある。

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教材支援はあるが、全国一律の現金給付ではない

教育省は3月、教科書や教材の購入を支えるため、2026年予算から約5,850万ユーロを自治州に配分する案と基準について、政府が承認したと発表した。公費で支えられる学校の対象教育段階に向けた支援で、地域への最終的な配分は教育部門の会議で扱うと説明している。発表は配分に向けた措置であり、全国の各家庭に同じ額がすでに支給されたという意味ではない。

自治州による具体的な制度の例が、カタルーニャの2026~27年度「バル・エスコラル」だ。自治体の公式案内では、公立とコンセルタードの初等・中等教育の児童生徒を対象に、1人60ユーロを30ユーロ券2枚で提供する。参加店舗で学用品などに使う仕組みで、用途を問わず自由に引き出す現金ではない。

同市の案内によると、今回はデジタル方式で管理され、店舗での利用期限は11月30日。学校側の共同購入に充てるために券を譲渡する場合は、9月18日が期限となる。店舗で使う場合と学校にまとめる場合では日付が違うため、同じ「学用品支援」でも利用方法まで確認する必要がある。これらはカタルーニャの制度の案内であり、スペイン全土共通の期限ではない。

こうした支援額を、全国平均の教育費から一律に差し引くこともできない。対象地域や子どもの条件が違い、調査回答の見込み額で支援がどう扱われているかを、個々の家庭について確認していないためだ。平均のニュースと、自分が利用できる制度の案内は、それぞれの目的に応じて使う必要がある。

家計を助ける制度が用意されていることと、対象の家庭が実際に利用できることの間にも段階がある。案内が届き、対象条件を理解し、必要な時期に使えるかまでが利用の条件になる。今回のデジタル券も、金額だけを知っていれば自動的に買い物から差し引かれるわけではなく、公式案内で利用方法を確かめることが欠かせない。

無償教育の価値と、残る費用を同時に見る

教育法第88条は、公立とコンセルタードの無償教育を保障するとともに、家庭の経済状況が差別につながらないよう扱うことを求めている。つまり、授業の無償とその周辺の条件は、制度のうえでも無関係ではない。家庭にどんな支払いが残り、それが参加の条件になっていないかを見ていくことには意味がある。

ただし、OCUの金額だけで、どの子どもがどの活動を断念したかまでは分からない。支出が少ない理由には、支援が充実している場合も、使いたいサービスを利用できなかった場合も考えられる。反対に支出が多い家庭には、任意の活動を多く選んだケースもあり得る。教育の機会を確かめるには、支出額に加え、選択できた内容を見る必要がある。

今回の調査は、公立を選んだ後にも家計が向き合う費用があることを示す。だからといって、授業の無償という仕組みの意味がなくなるわけではない。学校で学ぶための費用のどこを公費が担い、どこを家庭が担っているかを具体的にすることで、支援が必要な部分も見つけやすくなる。

新学期の教育費は、通学かばんやノートのような一度の買い物を思い浮かべやすいテーマだ。しかし、年間の支出を左右するのは、学校生活が続く間のサービスや活動でもある。1,294ユーロという平均が投げかけるのは、公立か私立かを選んだ後にも残る問いだ。授業を無料で受けられることから、家庭が無理なく通わせ続けられることまでを、どのようにつなぐのかが問われている。

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日本の読者への解説

スペインの公立学校に年1,294ユーロかかると聞いても、それを公立の年間授業料と考えるのは誤りだ。今回の数字は、給食や教材、活動などを含む家庭の年間支出の見込みである。日本でも教育費を比べるときには、授業そのものの費用と、学校生活や学校外の学習のために家庭が使う費用を分けて見る必要がある。

文部科学省の2023年度「子供の学習費調査」の訂正後の数値では、公立小学校の学習費総額は子ども1人当たり年36万6,599円、公立中学校は54万2,450円だった。公立小学校では、学校教育費や給食費以外の学校外活動費が総額の70.0%を占める。これは2026年1月16日に訂正された資料の数字で、訂正前の公表値と混在させない注意も必要だ。

ただし、この日本の金額をユーロに換算し、スペインの公立平均と並べても、そのまま安い国、高い国とは判定できない。日本は教育段階別の過去の実績、OCUは3~18歳を対象とした新年度の見込みで、調査年も対象の構成も異なる。さらに、費目の定義や家庭が選んだ活動、支援の扱いをそろえなければ、見かけの差に別の要因が混ざる。

両方の調査から考えられる共通の論点は、無償の授業があっても、教育に関する家計支出はその外側に広がるということだ。支出が多いことだけで教育の質が高いとも、少ないことだけで支援が十分ともいえない。子どもが必要な学びや活動を選べているかを知るには、金額と一緒に、その支出で何を利用しているかを見る必要がある。

日本の学校外活動費と、スペインの調査でいう課外活動費も、名前が似ているだけで集計範囲が完全に同じとは限らない。細かな費目を並べて比較する場合には、調査票の定義まで確認することが必要になる。

スペインへの移住や転校を考える家庭にとっても、全国平均は予算の確定額ではない。候補の学校で、給食や教材、活動に何が必要かを確認し、その地域で使える支援を重ねて考えるための出発点になる。年度の総額だけでなく、入学時と毎月で支払いがどう分かれるかまで把握できれば、「無償だと思っていた」という認識のずれを減らし、実際の生活に沿った見通しを立てやすくなる。

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