9月8日に公表されたOECDの学習到達度調査「PISA 2025」で、日本の15歳は科学538点、読解503点、数学525点を記録し、OECD加盟38カ国の中では3科目すべてで首位、新設された「計算論的問題解決」でも首位だった。90の国・地域を含む全体でも科学5位、読解4位、数学5位と、2022年とほぼ同じ上位の位置を保った。ただし3科目とも前回から下がり(科学9点減、読解13点減、数学10点減)、2015年以降の10年で見ると読解は7点の低下傾向にある。韓国は科学526点、読解501点、数学522点で日本に続き、2022年に不参加だった中国は北京・上海・江蘇・浙江の4省市連合として復帰し、科学597点、数学612点で世界首位に立った。一方スペインは科学477点、読解451点、数学457点で3科目とも過去最低となり、日本との差は科学61点、読解52点、数学68点。OECDが「約20点が1学年分」とする目安に当てはめれば、両国の15歳の間には3学年分前後の開きがある。2000年の第1回調査で日本とスペインの読解の差は29点だった。25年の間に、日本は「PISAショック」と呼ばれた二度の落ち込みから回復し、韓国は2015年に一段下がって日本の後ろに付き、スペインは2015年を頂点に後退した。今回の結果を、東アジア3カ国・地域とスペインの25年の軌跡の中に置いて読み解く。

PISA 2025 の得点(OECD公表値)と日本との差

国・地域科学読解数学計算論的問題解決
中国4省市(北京・上海・江蘇・浙江)597527612560
シンガポール560535563563
マカオ541501549572
日本538503525557
韓国526501522538
香港496480522545
OECD平均482461463500
スペイン477451457499
日本とスペインの差61526858
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2025年の3科目 ─ 東アジアとスペインの間に「3学年分」

科学は今回の主要領域だ。平均得点順に並べると、中国4省市連合(597)、シンガポール(560)、マカオ(541)、台湾(540)、日本(538)、エストニア(527)、韓国(526)の順で、OECD平均は482点、スペインは477点だった。OECDの検定では、日本の科学の得点はマカオ、台湾と統計的に区別できず、順位は3位から5位の範囲にある。韓国はエストニアと有意差がない。

読解はシンガポール(535)、中国4省市(527)、台湾(508)、日本(503)、マカオ(501)、韓国(501)、アイルランド(500)、エストニア(499)と続く。上位は僅差で、日本とマカオ、韓国、アイルランドの差は数点にとどまる。OECD平均は461点、スペインは451点。

数学は中国4省市(612)、シンガポール(563)、マカオ(549)、台湾(546)、日本(525)、韓国(522)、香港(522)、エストニア(508)。OECD平均は463点、スペインは457点だった。日本と韓国、香港の差はここでも小さい。

今回初めて導入された「計算論的問題解決(Computational Problem Solving)」はマカオ(572)、シンガポール(563)、中国4省市(560)、日本(557)、台湾(551)、香港(545)、エストニア(541)、韓国(538)の順で、OECD平均は500点、スペインは499点。東アジアの優位はこの新領域でも変わらなかったが、スペインはこの領域に限ればOECD平均と並んでおり、3科目との対比が目を引く。

点差の大きさを感覚的に捉えるなら、OECDが示す「約20点=1学年分」という目安が使える。あくまで平均的な換算であり、個々の生徒に当てはまるものではないが、日本とスペインの差(科学61点、読解52点、数学68点)は3学年分前後、中国4省市とスペインの数学の差155点は7学年分を超える。同じ15歳が受けた試験の結果としては、東アジアとスペインは異なる段階にいる。

日本の25年 ─ 二度の「PISAショック」から首位級へ

日本の軌跡は谷が二つある形をしている。2000年の第1回調査では数学557点、読解522点、科学550点で世界のトップ集団にいたが、2003年に読解が498点まで下がり、順位が8位から14位に落ちた。「PISAショック」と呼ばれ、ゆとり教育の見直しと学習指導要領の改訂につながった。2006年も読解498点、科学531点と低迷したが、2009年から回復に転じ、2012年には数学536点、読解538点、科学547点まで戻した。

二度目の落ち込みは2018年で、読解が504点まで下がり順位は15位に後退した。このときは主要領域が読解で、初めて全面コンピューター実施になった影響や、長文を読む習慣の変化が議論になった。2022年は数学536点、読解516点、科学547点と反発し、OECDは日本のコロナ禍での休校期間が他国より短かったことを要因の一つに挙げた。

日本の得点推移(2000年〜2025年)

調査年科学読解数学備考
2000年550522557第1回、読解8位
2003年548498534読解14位、「PISAショック」
2006年531498523
2009年539520529回復へ
2012年547538536読解・数学・科学とも最高圏
2015年538516532コンピューター実施に移行
2018年529504527読解15位、二度目のショック
2022年547516536反発、休校期間の短さ
2025年5385035253科目とも下落、OECD内では首位

そして2025年、日本は科学538点、読解503点、数学525点で、3科目とも2022年から下がった。読解は2018年に並ぶ低さだ。それでも順位が動かないのは、OECD平均が読解で14点、数学で9点下がるなど、世界全体が沈んだためである。OECDの10年トレンド(2015年から2025年)で見ると、日本は科学が5点の上昇傾向、読解が7点の低下傾向、数学が3点の低下傾向で、OECD平均(科学7点減、読解27点減、数学24点減)と比べれば落ち方はかなり緩い。上位層(レベル5以上)の割合は27.1%でOECD平均の2倍以上、基礎水準に届かない生徒は8.8%と少ない。「首位を保ったが下がった」というのが、今回の日本の正確な位置だ。

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スペインの25年 ─ 平均の直下に張り付き、2015年から後退

スペインの推移は日本と対照的で、山が一つしかない。2000年は数学476点、読解493点、科学491点で、OECD平均(当時は3科目とも500点)に7点から24点届かなかった。その後15年間、スペインは平均の少し下という位置をほとんど動かなかった。読解は2006年に461点まで落ちたが2009年から持ち直し、2015年に496点でOECD平均(493点)を初めて上回った。数学486点、科学493点もこの年が最高だった。

2015年以降は一貫して下がっている。2018年は読解の結果が公表されなかった。試験中に一部の生徒が読解の流暢さを測る設問で異常に速く回答した痕跡が見つかり、OECDがスペインの読解データの信頼性に疑問を付けたためだ。2022年は数学473点、読解474点、科学485点で、OECD平均も大きく下がったため「平均並み」に見えたが、絶対水準としては2000年代並みだった。

スペインの得点推移(2000年〜2025年、OECD平均を併記)

調査年科学読解数学OECD平均(科学/読解/数学)
2000年491493476500/500/500
2003年487481485500/494/500
2006年488461480500/492/498
2009年488481483501/493/496
2012年496488484501/496/494
2015年493496486493/493/490
2018年483非公表481489/487/489
2022年485474473485/476/472
2025年477451457482/461/463

2025年の科学477点、読解451点、数学457点は、いずれも25年間で最低である。10年トレンドは科学が15点、読解が42点、数学が27点の低下で、OECD平均の低下幅を3科目とも上回る。読解の10年トレンドが42点というのは、比較可能な国・地域の中でもラトビア(51点減)、フィンランド(55点減)などと並ぶ大きな部類だ。スペインの結果と国内の反応は速報記事で詳しく報じた。

韓国の25年 ─ 2015年の断層と、その後の横ばい

韓国は2012年まで日本と首位級を競っていた。2000年は科学552点で世界首位、読解525点、数学547点。2006年には読解556点を記録し、これはOECD加盟国が読解で出した得点としては今も最高水準に近い。2009年は数学546点、読解539点、科学538点、2012年は数学554点、読解536点、科学538点で、この時期は数学で日本を上回っていた。

断層は2015年に現れた。数学524点、読解517点、科学516点と、3科目で20点前後から30点落ちた。この年はコンピューター実施への全面移行の年で、韓国でも実施方式の影響や社会経済的な要因が議論された。以後、2018年は数学526点、読解514点、科学519点、2022年は数学527点、読解515点、科学528点で、2015年の水準からほぼ横ばいが続く。

韓国の得点推移(2000年〜2025年)

調査年科学読解数学
2000年552525547
2003年538534542
2006年522556547
2009年538539546
2012年538536554
2015年516517524
2018年519514526
2022年528515527
2025年526501522

2025年は科学526点、読解501点、数学522点。読解は15点の下落だったが、科学と数学はほぼ変わらなかった。10年トレンドは科学が12点の上昇、読解が14点の低下、数学が1点の低下で、韓国は「2015年に一段下がってから安定している」国と言える。OECD加盟国の中では読解と数学で2位、科学で3位(エストニアに次ぐ)に付けており、日本との差は科学12点、読解2点、数学3点と、読解と数学ではほぼ並んでいる。

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中国圏 ─ 上海、4省市、不参加、そして復帰

中国本土の数字を読む際には、どの地域が参加したかを毎回確認する必要がある。2009年と2012年は上海市が単独で参加し、2012年には数学613点、読解570点、科学580点という圧倒的な得点を出した。2015年は北京・上海・江蘇・広東の4省市連合として参加し、数学531点、読解494点、科学518点と大きく下がった。これは学力が落ちたのではなく、上海だけの数字と4地域の平均を比べているためだ。2018年は広東を浙江に入れ替えた北京・上海・江蘇・浙江の連合(B-S-J-Z)で数学591点、読解555点、科学590点を記録して3科目とも世界首位に立った。

中国本土の参加単位と得点(一本の線で結べない推移)

調査年参加単位科学読解数学
2009年上海市575556600
2012年上海市580570613
2015年北京・上海・江蘇・広東518494531
2018年北京・上海・江蘇・浙江590555591
2022年不参加
2025年北京・上海・江蘇・浙江597527612

2022年は中国本土が参加せず、東アジア勢の首位はシンガポールに移った。そして2025年、B-S-J-Zとして復帰した中国4省市連合は科学597点、読解527点、数学612点で科学と数学の首位に返り咲いた。ただしOECDの報告書は、中国4省市について2022年との比較(短期トレンド)を掲載していない。連続した参加がないため、変化を測る基準がないからだ。中国全土の代表値ではない点も変わらない。4省市は中国で最も豊かで教育投資が集中する地域であり、内陸や農村を含む中国全体の15歳の学力を示すものではない。

香港とマカオは別々に参加している。マカオは2025年に科学541点、読解501点、数学549点、計算論的問題解決572点(世界首位)で、10年トレンドも科学と数学が上昇傾向にある。対照的に香港は科学496点、読解480点、数学522点で、2022年から科学25点、読解20点、数学19点と大きく下がった。10年トレンドは科学23点減、読解49点減、数学26点減で、東アジアの中で唯一、スペインに近い下落幅を示している。香港の下落の背景については、OECDの報告書は今回の段階で個別の分析を示していない。

何が差を生むのか ─ 相関はあるが、因果は単純ではない

東アジアとスペインの間に3学年分の差がある理由を、一つの要因で説明することはできない。PISAの背景調査から言えるのは、いくつかの相関にとどまる。

第一に、社会経済的な格差の影響は、スペインの方がむしろ小さい。科学の得点のばらつきのうち家庭の社会経済的背景で説明できる割合は、スペインが9.2%、日本が7.6%、韓国が7.7%で、OECD平均の11.6%をいずれも下回る。恵まれた家庭と不利な家庭の生徒の得点差は、スペイン71点、日本71点、韓国69点で、こちらもほぼ同じだ。つまりスペインの低さは「格差が大きいから」ではなく、分布全体が低い位置にあることによる。

第二に、上位層の厚みが決定的に違う。3科目のいずれかで最上位(レベル5以上)に達した生徒は日本27.1%、韓国28.1%に対し、スペインは7.0%。基礎水準未満の生徒はスペイン18.4%、日本8.8%、韓国9.4%だ。スペインは「下が多い」以上に「上が少ない」。教育省の国内報告書も、平均点が近い国と比べてスペインの上位層の比率が不釣り合いに低いことを認めている。

第三に、移民背景の生徒の比率が違う。スペインでは20.3%の生徒が移民の背景を持ち、OECD平均の16.3%を上回る。日本と韓国では移民背景の生徒は数%にとどまり、OECDは両国を移民背景別の平均計算から除外している。スペインの移民背景の生徒と非移民の生徒の差は43点で、OECD平均と同じだ。移民の比率の高さは平均点を押し下げる方向に働くが、それだけで25年の推移を説明できるわけではない。移民比率が上がる前の2000年代から、スペインは平均の下にいた。

第四に、読解の落ち方の違いだ。OECDは今回、読解の低下を「画面(スクリーン)と注意力の問題」として国際的な現象と位置づけた。比較可能な74の教育システムのうち56で2018年以降に読解が有意に下がっている。日本も読解は下がったが、10年トレンドで7点の減少にとどまる一方、スペインは42点減った。同じ「画面の時代」を過ごした15歳の間で、なぜ落ち方に6倍の差が出るのか。学校外の学習時間、家庭での読書習慣、授業での長文の扱い、留年の多さ(スペインの留年率はOECDで最も高い部類にある)など、複数の要因が重なっていると考えるのが自然だが、PISAのデータだけではどれが決定的かは判定できない。

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日本の読者への解説

日本にとって今回の結果は、安心材料と警告が同居している。OECD加盟国の中で3科目と新領域のすべてで首位に立ったのは事実で、上位層の厚さも際立つ。しかし3科目とも2022年から下がり、読解は2018年の「ショック」の年と同じ水準に戻った。順位が保たれたのは他国がより大きく沈んだためであり、「日本の子どもの学力が上がった」と読むのは誤りだ。OECDが指摘する長文への耐性の低下、試験後半での集中力の減退、努力の自己申告の低下は、日本にも当てはまる可能性がある。

スペインに住む日本人家庭や、スペインへの移住・進学を考える読者にとっては、国の平均より州の差の方が現実的な情報になる。マドリード州やカスティーリャ・イ・レオン州の平均はOECD平均を上回り、バレンシア州やアンダルシア州、バスク州は大きく下回る。スペインの「3学年分の遅れ」は国全体の平均であって、住む場所と学校によって実態はかなり違う。

最後に、比較の作法についてひと言添えておきたい。PISAの得点は「15歳が知識を実生活の問題に応用する力」を測るもので、教育制度の優劣を一つの数字で決めるものではない。中国の数字は4省市の数字であり、韓国の2015年の落ち込みは実施方式の変更と重なり、スペインの2018年の読解は公表されなかった。これらの但し書きを外して並べた順位表は、見た目ほど多くを語らない。日本が首位級であり続け、スペインが後退しているという大きな絵は変わらないが、その理由を語るときは、数字が示す範囲を超えないことが、この調査の正しい使い方だ。

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