スペイン北西部ガリシア州のサンシェンショで2026年9月5日、卵1万7,000個とジャガイモ1,700キロを使った巨大なトルティーヤが作られた。「世界最大」を掲げた挑戦には72人が参加し、直径6メートルのフライパンを扱うためにクレーンも投入。地元の祭りに合わせて1万食分が1食3ユーロで提供され、売上金は慈善目的に充てると発表された。
調理を担当したのは「エル・ウエボ・デ・ラ・アブエラ」。名前は「おばあちゃんの卵」を意味する。ポンテベドラ県の港町で、家庭料理として親しまれるジャガイモ入りの卵料理が、多くの人が見守る屋外イベントの主役になった。市の発表を伝えたEuropa Pressや公共放送RTVEによると、調理にはタマネギ300キロ、油300リットル、塩30キロも使われた。
直径6メートルのフライパンが広場に登場
会場となったのは、サンシェンショのプラサ・ド・マル。地元紙ディアリオ・デ・ポンテベドラは、午前10時30分に調理が始まったと伝えている。市の発表によると、料理が完成したのは午後2時15分。その後、集まった人々への提供が始まった。二つの時刻を合わせると、調理開始から完成までは約3時間45分だったことになる。
中心に据えられたフライパンは直径6メートル。数字だけでは大きさをつかみにくいが、仮に直径30センチの家庭用フライパンと比べると、直径は20倍になる。どちらも円として計算した面積は約400倍だ。食材の量だけでなく、器具そのものが家庭の台所とは大きく異なる規模だったことが分かる。
調理に関わった人数は72人。さらに、巨大なフライパンの操作には75トン級のクレーンが必要になったと報じられている。ここでいう75トンはクレーンについての数字であり、完成した料理が75トンあったという意味ではない。いつもなら手で持ち上げる調理器具を、重機の助けを借りて動かすところに、この挑戦の規模が表れている。
トルティーヤ作りでよく知られる工程の一つが、途中でひっくり返す作業だ。スペイン政府観光局の家庭向けレシピでも、ふたを使って裏返し、反対側をフライパンへ戻して火を通す手順が紹介されている。今回の調理では、そうした料理の基本動作に、巨大な器具を扱うための人手と機械が加わった。
各報道は、会場に数千人が集まって調理を見守ったと伝えている。見どころは完成品だけではなかった。大量の食材が一つの料理になるまでの工程そのものが、広場で共有される催しになったのである。家庭で見慣れた料理だからこそ、フライパンや作業の大きさの違いが伝わりやすいイベントだった。
卵1万7,000個とジャガイモ1.7トン 材料は身近なもの
使われた食材は、卵1万7,000個、ジャガイモ1,700キロ、タマネギ300キロ、油300リットル、塩30キロ。市の発表を伝える報道とEFE通信、RTVEで、ジャガイモの量は1,700キロと一致している。大きさを競う催しであっても、土台になっているのは卵とジャガイモを組み合わせる身近な料理だ。
政府観光局のレシピでは、4人分の材料として中くらいのジャガイモ4個、卵4〜5個、タマネギなどを挙げている。今回の卵の数をこの例と単純に比べれば、家庭向けレシピ約3,400〜4,250回分に相当する。ただし、これは卵の個数だけの比較であり、実際に提供できる人数や一食の大きさを同じ比率で求めたものではない。
一つの大きな料理を作ることと、小さな料理を何千回も作ることには、作業上の違いもある。今回の催しでは、食材をそろえることに加え、大きな器具を扱い、焼き上がりを待ち、完成後には多くの人へ分ける段階がある。72人という参加人数は、食べる場面の前に、料理を成立させる共同作業があったことを伝えている。
EFE通信によると、今回の挑戦は事前のリハーサルなしで行われ、無事に終わった。特に関心を集めたのは、大きなフライパンを持ち上げて裏返す工程だった。食材をそろえるだけで完成する料理ではなく、卵とジャガイモがまとまった状態を保ちながら、反対側にも火を通す必要がある。家庭料理でおなじみの一手間が、広場では大きな見せ場になった。
フライパンを動かす場面は、以前のメリデでの挑戦でも注目されたとEFEは伝えている。同じ作り手が巨大料理を手がけてきた経験が、今回の催しの背景にある。見物する人には料理の大きさがまず目に入るが、作る側にとっては、食材を料理としてまとめ、提供まで持っていく一連の作業だ。材料の桁が増えるほど、その共同作業も大きくなる。
ガリシアの公共メディアG24は、担当した会社をガリシア語の「オ・オボ・ダ・アボア」という名称で紹介している。こちらも意味は「おばあちゃんの卵」。スペイン語で伝えられる社名と同じ意味を持つ。全国ニュースで紹介される巨大料理には、地域の言葉で語られる地元の催しという顔もある。
タマネギの祭りで「タマネギあり・なし」を用意
巨大トルティーヤの調理は、地元の「フェイラ・ダ・セボラ」とサンタ・ロサリアの祭りに関連する行事として行われた。フェイラ・ダ・セボラは、ガリシア語でタマネギの市を意味する。全国的に知られる料理の大きさを競うだけでなく、地元の農産物を扱う催しと結び付いていた。
市が公開している祭り関連の説明資料では、この市には、サンシェンショの内陸部で育つ野菜、とりわけタマネギを紹介する役割があるとされている。資料は、海辺とは違う地域の風景に目を向けてもらい、観光の繁忙期以外にも訪れるきっかけにするという考えを示している。港の広場で開かれた今回の挑戦にも、海辺の町と内陸の農業をつなぐ背景がある。
興味深いのは、タマネギの祭りに関わるイベントでありながら、提供は「タマネギあり」と「タマネギなし」の両方だったことだ。Europa Pressが伝えた市の説明は、この二つを明記している。タマネギ300キロという材料の数字だけを見て、すべての一食に同じようにタマネギが入っていたと考えると、実際の提供内容を捉え損ねる。
タマネギを入れるかどうかは、スペインのトルティーヤをめぐってよく話題になる好みの違いである。政府観光局が代表的な料理を紹介するページでも、この論争に触れたうえで、卵とジャガイモが基本の材料だと説明している。今回のイベントは、一方の好みだけを正解にするのではなく、両方を用意する形だった。
同じ料理でも、食材の組み合わせや食感に対する好みは人それぞれだ。巨大化しても、その小さな違いが消えるわけではない。1万食という大きな数字の中に、タマネギを入れるかどうかという食卓の話題が残っているところに、この催しの親しみやすさがある。タマネギの産地を紹介する祭りと、食べる人の好みが同じ場に並んだ。
1食3ユーロで1万食分 調理の先にある地域の催し
完成後のトルティーヤは、1食3ユーロで提供された。報道が伝えた提供数は1万食分。市の説明では、販売による収入は慈善目的に充てるとしている。料理を大きく作って披露することに加え、来場者が食べる形で参加し、その売上を社会的な目的につなげる計画だった。
調理の様子を見るだけでなく、完成品を実際に食べられることは、この種の食の催しを身近にする。参加者にとっては、ニュースになるほど大きな一皿の一部を味わう体験になる。一方で、販売総額や最終的な寄付額、具体的な寄付先については、今回確認した発表だけでは確定できない。予定された使途と、実際に寄付が完了したことは分けて捉える必要がある。
この挑戦には、以前から巨大トルティーヤを手がけてきた作り手の経験もある。地元報道によると、エル・ウエボ・デ・ラ・アブエラによる催しは、ア・コルーニャ県メリデでの過去2回を経て、今回サンシェンショへ会場を移した。以前の実績を持つ事業者と、会場を用意する地域が組み合わさった形だ。
会場が変わると、催しが結び付く祭りや地域の見せ方も変わる。今回は港の広場とタマネギの市、サンタ・ロサリアの行事が舞台になった。巨大料理そのものの話題性に、地元の暦や農産物が重なる。ニュースの数字を追うだけでなく、この場所で開催された理由を見ると、町の催しとしての性格も分かる。
提供開始が午後2時15分だったことも、朝から続いた調理を一つの食事の時間へつなぐ区切りになった。卵やジャガイモが持ち込まれ、料理として焼かれ、切り分けられて人々の手に渡る。巨大なフライパンの写真だけでは分からないが、挑戦の終点には、大勢に食べてもらうための作業があった。
「世界最大」の見出しと、正式な記録は分けて見る
今回の催しは、多くの報道で「世界最大のトルティーヤ」と紹介された。ただし、9月7日時点で確認した資料では、今回の料理についてギネス世界記録の正式な認定を確認できていない。「世界最大」を掲げた大規模な挑戦が行われたことと、特定の認定機関が新記録として登録したことは、同じ情報ではない。
ギネスの公開ページには、オムレツの最大重量として、2012年8月にポルトガルで作られた6.466トンの記録が掲載されている。これはオムレツという部門の記録であり、ジャガイモ入りのスペイン式トルティーヤの催しと、料理の条件や計測の基準が一致するかどうかを確認せず、優劣を決めることはできない。
もっとも、正式な認定の確認とは別に、サンシェンショで実際に行われた催しの規模は具体的だ。卵1万7,000個、直径6メートルのフライパン、72人の参加、そして1万食分の提供という数字は、市の発表を伝える複数の報道で確認できる。記録の呼び名に頼らなくても、十分に際立った食のイベントだった。
トルティーヤは特別な材料を集めた祝宴の料理とは限らない。卵、ジャガイモ、油、塩という身近な組み合わせを、家庭でも飲食店でもそれぞれの形で作る。その日常的な料理を町の広場で大きく作り、多くの人に分けたことが、今回の挑戦の分かりやすさにつながっている。
調理に重機を持ち込み、食材をトン単位で用意する光景は非日常的だが、最後に提供されたのは親しみのある一切れだった。サンシェンショの巨大トルティーヤは、大きさを目指す技術と人手、地域の祭り、食べる楽しみを一つの会場に集めた。材料の桁の大きさとともに、食卓の料理が町の共同作業へ変わったことにも目を向けたい。
日本の読者への解説
日本で「トルティーヤ」と聞くと、タコスなどに使う薄い生地を思い浮かべる人もいるでしょう。今回のニュースに登場するのは、卵とジャガイモを使うスペインの「トルティーヤ・デ・パタタス」です。日本語ならジャガイモ入りの厚焼き卵、あるいはスペイン風オムレツと説明すると姿を想像しやすくなります。同じ呼び名でも、メキシコ料理などで使う薄い生地とは別の料理です。
スペイン政府観光局の家庭向けレシピでは、ジャガイモとタマネギにゆっくり火を通し、卵と合わせて焼き、途中で裏返す作り方が紹介されています。材料の種類は少なくても、食感やタマネギの有無などで好みが分かれます。今回、巨大な料理を作りながら「タマネギあり・なし」の両方を提供したという点は、スペインの日常の食の会話が、そのまま大きな祭りに持ち込まれたような面白さがあります。
また、ガリシア州はスペイン北西部にあり、今回の会場サンシェンショはポンテベドラ県に位置します。ニュースの舞台はマドリードやバルセロナの大都市ではなく、地域の祭りを開く港町です。料理の巨大さだけを切り取ると場所の意味が薄れますが、タマネギの市が地元の農産物を紹介する行事であると知れば、料理と町の関係が見えてきます。日本の収穫祭や地域の食の催しを思い浮かべると理解しやすいでしょう。
数字を読む時は、材料の量、調理器具の規模、提供する一食の数を分けるのがポイントです。卵1万7,000個は材料の数、72人は調理に参加した人数、1万食は提供数です。75トンはクレーンについての数字で、料理の重量ではありません。「大きな数字」が並ぶ記事ほど、何を数えているのかを確かめると、実際の場面を正確に想像できます。
「世界最大」という見出しにも同じ視点が役立ちます。直径、重量、材料の量、食事の提供数は、それぞれ違う尺度です。記録としての正式な評価には基準の確認が必要ですが、町の広場で72人が料理を作り、それを大勢に分けたという出来事の魅力は変わりません。大きさを楽しみながら、どの地域のどんな料理が主役になったのかにも注目できるニュースです。













