「スペインに引っ越したら、日本のNetflixが見られなくなった」「TVerを開いたら『お住まいの地域では視聴できません』と出る」──在住日本人なら一度はぶつかる壁だ。バルセロナに20年住む筆者の周りでも、移住直後に必ず聞かれる質問のひとつがこれだ。
この記事では、なぜ見られないのかという仕組みから、VPNを使った解決方法、そして正直に知っておくべき注意点までを整理する。
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なぜスペインから日本の動画サービスが見られないのか
原因は技術的な不具合ではなく、コンテンツのライセンス契約だ。映像作品の配信権は国・地域ごとに販売されており、NetflixやAmazonプライム・ビデオは接続元のIPアドレスで「いまどの国からアクセスしているか」を判定し、その国でライセンスを持つ作品だけを表示する。
だからスペインのNetflixにも日本アニメはそれなりにあるが、日本版限定の作品・国内ドラマ・バラエティは出てこない。TVer・ABEMA・NHKオンデマンドに至っては、日本国内からのアクセスのみを前提に設計されているため、海外からは原則として再生そのものができない。
つまり「日本のIPアドレスを経由してアクセスする」ことができれば、状況は変わる。それを実現するのがVPNだ。
VPNとは何か ─ 仕組みを30秒で
VPN(Virtual Private Network)は、自分の端末と海外のサーバーの間に暗号化されたトンネルを作る技術だ。スペインの自宅から日本にあるVPNサーバーに接続すると、動画サービス側からは「日本国内からのアクセス」に見える。
本来は企業の社内ネットワーク接続や、公共Wi-Fiでの盗聴防止のためのセキュリティ技術であり、用途は動画視聴に限らない。この点は後述する。
VPNの選び方 ─ 判断基準は4つ
VPNサービスは無数にあるが、在住者の用途で見るべきポイントは絞られる。
- 日本サーバーの数と品質: 動画視聴には日本サーバーへの接続が前提。数が多いほど混雑を避けられる
- 速度: 動画のHD再生には実測で25Mbps以上が目安。プロトコルが新しいサービスほど速い
- 動画サービスへの接続実績: 各サービスはVPN検知を行っており、接続できるかどうかはVPN側の対策力に依存する
- 同時接続台数: 家族で使うならスマホ・PC・タブレットを同時にカバーできるか
筆者の周辺の在住者で最も使われているのはNordVPNだ。日本国内に多数のサーバーを持ち、速度面でも業界最速クラス。Netflix日本版への接続実績が長期にわたって安定していることが、在住者コミュニティで定番になっている理由だと言える。30日間の返金保証があるので、自分の環境(回線・視聴したいサービス)で実際に動くかを試してから決められる。
避けるべきは無料VPNだ。運営コストを賄うために通信ログを第三者に販売していた事例が複数報告されており、速度も動画視聴に耐えない。セキュリティのために使うはずの道具が、逆にリスクになる。
設定手順 ─ 5ステップで完了
技術的な知識は不要だ。スマホでもPCでも手順はほぼ同じで、10分あれば終わる。
- 1. VPNの公式サイトでプランを契約する(長期プランほど月額が下がる)
- 2. アプリをダウンロードし、アカウントでログイン
- 3. サーバー一覧から「Japan」を選んで接続
- 4. 接続状態のまま、Netflix や TVer を開く
- 5. 見終わったら切断(スペインのサイトを使う時は接続したままだと逆に不便)
うまく再生できない場合は、別の日本サーバーに繋ぎ直す、ブラウザのキャッシュを消す、アプリではなくブラウザで開く──の3つで解決することが多い。
知っておくべき注意点 ─ 正直に書く
ここを曖昧にする紹介記事が多いので、はっきり書いておく。
- 各サービスの利用規約(TOS)に抵触する可能性がある。NetflixはVPN経由のアクセスを規約上想定しておらず、VPN検知も年々強化されている。検知された場合は再生がブロックされる(アカウント停止まで至った例は一般的ではないが、ゼロとは言い切れない)
- 「いたちごっこ」は続く。昨日まで見られたサーバーが今日ブロックされることはある。VPN側が新しいIPを用意して再び繋がる、の繰り返しだ
- スペインでVPNを使うこと自体は合法。VPNは正当なセキュリティツールであり、利用を禁じる法律はない。ただし著作権で保護されたコンテンツへのアクセス手段としての利用は法的グレーゾーンにあることは認識しておきたい
- 契約済みのサービスでしか使えない。VPNは「日本で契約していたNetflixアカウントの続きを見る」道具であって、無料で何かが見られるようになる魔法ではない
動画以外でも役に立つ ─ 在住者のVPN活用場面
実のところ、筆者がVPNを評価しているのは動画よりもこちらの用途だ。
- 日本の銀行・証券サイトへのアクセス: 海外IPからのログインを一律ブロックする金融機関があり、日本サーバー経由なら通常どおり使える
- 公共Wi-Fiの安全確保: カフェ・空港・ホテルのフリーWi-Fiは通信を覗かれるリスクが常にある。VPNの暗号化はここで本領を発揮する
- 日本の通販・チケットサイト: 海外からのアクセスを弾くサイトでも、日本IP経由なら手続きできることが多い
一時帰国の航空券手配や日本のサブスク管理など、在住生活の実務はスペイン在住日本人のための実務ハンドブックにまとめているので、あわせて参照してほしい。
まとめ
スペインから日本のコンテンツが見られない原因はライセンスの地域分割であり、VPNで日本のIPアドレスを経由すれば多くの場合解決する。選ぶ基準は日本サーバーの数・速度・接続実績・同時接続台数の4つ。NordVPNのような大手を返金保証期間内に自分の環境で試すのが、結局いちばん確実で早い。
そして規約と法律の話から目を逸らさないこと。VPNは便利な道具だが、その性質を理解した上で、自己責任で使う道具でもある。













