スペインで11月11日(水)に予定されている全国ゼネストで、飛行機が欠航したら乗客はどうなるのか。EUの航空旅客の権利に関する規則(261/2004)では、欠航の理由にかかわらず、航空会社は払い戻しか代わりの便を用意し、待ち時間に応じて食事や、必要なら宿泊も提供しなければならない。対象は、EU域内の空港を出る便と、EU域外からEU域内に向かう便のうちEUの航空会社が運航するものだ。一方、距離に応じて250〜600ユーロの補償金は、出発の2週間以上前に欠航が知らされた場合や、避けられない「特別な事情」による欠航の場合には支払われない。ストがこの「特別な事情」に当たるかは、ストの性格によって判断が分かれる。二大労組による前回の全国ゼネスト(2012年11月14日)では、スト2日前の時点で、イベリア航空など3社が計473便の欠航を発表しており、各社が予約の変更や払い戻しの条件を緩めた。今回の交通の最低運行は、10月20日の時点でまだ決まっていない。
欠航したら:払い戻しか代わりの便、食事などの世話
EU規則261/2004は、欠航した場合、理由を問わず、航空会社に次の対応を義務づけている。乗客は、航空券の払い戻しか、代わりの便での目的地への輸送を選べる。代わりの便を待つ間は、待ち時間に応じた食事や飲み物、必要なら宿泊と、空港と宿泊先の間の送迎を受けられる。
なお、EUは2026年10月に、この規則を改正する新しい規則を官報に掲載した。ただし、新しい規則が適用されるのは2027年10月23日からで、今回のストには現行の規則が適用される。
この規則が適用されるのは、EU域内の空港を出発する便(航空会社の国籍を問わない)と、EU域外からEU域内に到着する便のうちEUの航空会社が運航するものだ。たとえば、マドリードから東京へ向かう便は航空会社にかかわらず対象になり、東京からマドリードへ向かう便は、イベリア航空のようなEUの航空会社の場合に対象となる。中東などで乗り継いで、EU域外の航空会社の便でスペインに入る場合は対象外だ(スペインを出る便は、航空会社を問わず対象)。EU域外から入る便が対象かどうかは、航空券を売った会社ではなく、実際に運航する会社で決まる。
補償金が出ない場合
規則は、欠航の場合に、飛行距離に応じて250ユーロ、400ユーロ、600ユーロの補償金を定めている。ただし、次の場合は補償金が支払われない。
一つは、早めに知らされた場合だ。出発の2週間以上前に欠航が知らされれば、補償金は出ない。11月11日の便なら、10月28日までの通知がこれに当たる。出発の7〜14日前の通知でも、出発が元の便より2時間を超えて早まらず、到着の遅れが4時間未満の代わりの便が提示されれば、補償金の対象から外れる。7日を切ってからの通知の場合は、出発が1時間を超えて早まらず、到着の遅れが2時間未満の代わりの便が提示されれば、同じく対象外となる。
もう一つは、航空会社が、あらゆる合理的な措置を取っても避けられない「特別な事情」による欠航だと証明した場合だ。ストがこれに当たるかについて、EU司法裁判所は2021年3月、航空会社自身の従業員のストは原則として特別な事情に当たらないと判断した。一方で、管制官や空港職員など航空会社の外部のストは、特別な事情とされうる。航空会社の従業員のストでも、公的機関にしか応えられない要求に基づくものは、特別な事情になりうるとした。今回のゼネストは、最低賃金の引き上げや住宅政策など政府に向けた要求に加え、労働協約での賃上げのように経営側に向けた要求も掲げている。航空会社が特別な事情を主張できるかどうかは、どの職員のストで、どんな要求に基づくかによって変わりうる。補償金の対象になるかどうかは、欠航ごとの事情で判断が分かれる。
2012年のゼネストでは
2012年11月14日のゼネストでは、スト5日前の11月9日に、当時の公共事業省と労組が交通の最低運行で合意した。航空便は、スペイン本土内の路線で10%、本土とバレアレス諸島・カナリア諸島などを結ぶ路線で50%、欧州経済領域の国際線で20%、それ以外の国際線で40%を確保した。鉄道は近郊列車が30%(朝6〜9時は35%)、高速列車は距離の長い一部の区間で20%だった。
旅行業界紙オステルトゥールによると、このときはスト2日前の時点で、イベリア航空、ブエリング、エア・ノストラムの3社が計473便の欠航を発表し、エア・ヨーロッパも92便の欠航を発表済みだった。各社は予約の変更や払い戻しの条件を緩め、イベリア航空はウェブで予約した客に代わりの便をメールで案内した。同じ年の3月29日のゼネストでは、イベリア航空が222便(運航計画の65%)、ブエリングが189便を欠航した。ただし、今回の欠航が2012年と同じ規模になるとは限らない。
今回のストと交通の現状
今回のゼネストは、CCOOとUGTが10月19日に労働・社会経済省へ届け出た。届け出には、CGT、CNT、借家人組合連合などの代表も同席した。CGTは同日、独自に届け出ており、11日の0時から23時59分までとしている。全国24時間のストだ。経営者団体CEOEのガラメンディ会長は「選挙目的のストだ」と批判し、合法とは考えないとして法廷で争う方針を表明した。どの裁判所に訴えるかは明らかにしていない。
交通の最低運行は、10月20日の時点で決まっておらず、国鉄Renfe、空港運営会社Aena、航空各社による11月11日の運行の発表も見当たらない。バルセロナでは、中心となるデモが11日17時30分にジャルディネッツ・デ・グラシアから出発する予定で、マドリードの予定はまだ見当たらない。ストの経緯や要求は10月7日の記事と届け出を伝えた記事にまとめている。
日本の読者への解説
11月11日前後にスペインで飛行機を使う人は、最低運行の発表と、航空会社からの欠航の案内を確かめたい。2012年の例では、最低運行の決定はスト5日前で、スト2日前の時点で各社の欠航が発表されていた。予約したアプリやメールの通知は必ず受け取れるようにしておきたい。
EU規則の対象の便であれば、欠航した場合は払い戻しか代わりの便かを選べる。スペインを出る便は航空会社を問わず対象だが、中東などで乗り継いでEU域外の航空会社の便でスペインに入る場合は対象外なので、予約した便がどちらに当たるかを確かめておきたい。空港で長く待つことになったら、航空会社に食事や宿泊の手配を求めることができる。自分で立て替えた場合に備えて、領収書は必ず取っておきたい。補償金が出るかどうかは事情次第なので、旅行保険の約款で、ストによる欠航や遅延が補償の対象になっているかも確認しておくと安心だ。
スペインでは11月29日に総選挙があり、選挙運動は11月13日に始まる。ストはその2日前で、選挙前の政治的な緊張の中で行われる。最低運行や欠航の情報が出しだい、続報で伝える。













