スペイン史を引き合いにトランプ氏を批判
米政界におけるプログレッシブ(進歩派)の象徴的存在であるバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出・無所属)が、スペインのデジタルニュースメディア「elDiario.es」のインタビューに応じ、ドナルド・トランプ氏が再び大統領に就任した場合の危険性について、欧州、特にスペインの読者に向けて強い警告を発しました。サンダース氏はトランプ氏を「米国史上最も危険な大統領」であり、「民主主義を根底から蝕もうとしている権威主義者」と厳しく批判。その手法を、スペインが経験したフランコ独裁政権の歴史と重ね合わせるという、異例の言及を行いました。
サンダース氏は「権力を自らの手に集中させ、政敵を犯罪者扱いし、メディアや司法を黙らせ、反対する学生がいる大学を敵視する。こうした人物像は、残念ながらスペインの歴史においてよく知られているタイプでしょう」と述べ、トランプ氏の行動原理が独裁者のそれと軌を一にすることを指摘しました。これは、単なる政治批判を超え、欧州の民主主義国家が共有する暗い歴史の記憶に訴えかけることで、トランプ現象の危険性を普遍的な問題として提示する意図がうかがえます。また、「トランプ氏がスペインや欧州全体を攻撃する時、彼が米国市民を代表して語っているとスペインの誰にも思ってほしくない」と述べ、トランプ氏の孤立主義的、同盟軽視的な姿勢は米国民の総意ではないと強調。伝統的な米欧関係の修復への意志を示しました。
米国社会の病巣:極度の格差と金権政治
サンダース氏の政治信条の核となるのは、米国内の深刻な経済格差に対する怒りです。インタビューにおいても、その問題に多くの時間が割かれました。彼は「欧州の人々は米国を豊かな国だと思っているが、現実には人口の60%がその日暮らしの生活を送っている」と述べ、一部の富裕層に富が集中する現状を「狂気の沙汰だ」と断じました。
具体的に、彼は「上位1%の富裕層が、下位93%の国民の合計よりも多くの富を所有している」「イーロン・マスク氏一人で、米国の貧しい半数の世帯の3倍もの資産を持っている」といった衝撃的なデータを提示。この状況を、19世紀後半に産業資本家が絶大な富を築いた「金ぴか時代(Gilded Age)」よりも遥かに深刻だと分析します。そして、こうした極端な格差が政治の場で十分に議論されない理由として、米国の「腐敗した選挙資金システム」を挙げました。
サンダース氏は、巨額の資金を無制限に集めて特定の候補者を支援・攻撃できる「スーパーPAC(特別政治行動委員会)」の存在が、億万長者たちの意向を政治に反映させる温床になっていると指摘します。億万長者からの献金に依存する限り、富裕層への課税といった格差是正策を訴えることは困難であり、これが民主・共和両党に共通する構造的な問題であると喝破しました。プログレッシブ運動が草の根のボランティア活動を重視するのは、この金権政治に対抗するための唯一の手段であるとの考えを示しています。
外交政策の転換点:イスラエル支援と国際協調
外交政策に関しても、サンダース氏は主流派とは一線を画す明確な立場を示しました。特に、イスラエルのネタニヤフ政権に対する米国の軍事支援について、彼は上院で最も強硬な批判者の一人です。ガザ地区での人道危機に触れ、「イスラエルにはハマスのテロ攻撃から自衛する権利はあったが、パレスチナ市民全体に対して戦争を行う権利はなかった」と断言。7万5000人が死亡し、インフラのほぼ全てが破壊された状況を「ジェノサイド(集団殺害)」と呼び、米国の納税者のお金がこれ以上イスラエル政府に渡るべきではないと主張しました。
この問題に関する米国内の世論の変化は著しいとサンダース氏は指摘します。かつては超党派でイスラエルを強力に支持する姿勢が一般的でしたが、ネタニヤフ政権の極右的な政策とガザでの惨状が報道されるにつれ、特に民主党支持者の間でイスラエルへの批判的な見方が急速に広がっていると分析。彼が提出したイスラエルへの一部軍事支援に反対する決議案が、民主党議員からかつてないほどの賛成票を得たことをその証左として挙げています。これは、米国の伝統的な中東政策が大きな転換点を迎えている可能性を示唆しています。トランプ氏がサウジアラビアなどの権威主義的な産油国を好み、民主主義的な欧州の同盟国を軽視する姿勢とは対照的に、サンダース氏は国際協調と人権を重視する外交への回帰を訴えています。
日本の読者への解説
バーニー・サンダース氏がスペインのメディアに語った内容は、一見すると米国内および米欧関係の問題に聞こえますが、日本の読者にとっても重要な示唆に富んでいます。第一に、彼が指摘する「金権政治」の問題です。米国におけるスーパーPACのような露骨な制度はないものの、日本でも企業・団体献金のあり方や、政治資金パーティーをめぐる不透明性は長年の課題です。政治が一部の富裕層や大企業の意向に左右され、国民全体の利益が損なわれるという構造は、日米に共通する民主主義の脆弱性と言えます。
第二に、経済格差の問題です。サンダース氏が挙げる米国の格差は極端ですが、日本でも「失われた30年」を経て非正規雇用の拡大や中間層の疲弊が進み、格差は静かに、しかし確実に拡大しています。国民皆保険制度を持つ日本は、彼が理想とする欧州モデルに近い社会保障制度を維持していますが、その持続可能性は常に問われています。「医療は人権である」という彼の主張は、日本の社会保障のあり方を改めて考えるきっかけとなるでしょう。
最も直接的な影響があるのは、外交・安全保障の側面です。サンダース氏はトランプ氏を批判しつつも、彼自身もまた従来の米国外交エスタブリッシュメントとは異なる視点を持っています。しかし、彼が訴える国際協調や同盟関係の尊重は、トランプ氏の予測不可能な「取引」外交とは根本的に異なります。トランプ氏が再び大統領になれば、日米安全保障条約の根幹が揺るがされるリスクは否定できません。サンダース氏のようなプログレッシブ派の台頭は、民主党内の政策議論を変化させ、長期的には米国の対日政策にも影響を及ぼす可能性があります。米国の政治が「トランプか、反トランプか」という単純な二元論だけでなく、その内部でより複雑な地殻変動を起こしていることを、このインタビューは浮き彫りにしています。













