スペインの最高裁が、「孫の法」でスペイン国籍を得た人は原則として11月29日(日)の総選挙で投票できないとする仮処分を維持したことが、10月12日(月)に明らかになった。政府を代理する国の法務官が仮処分の取り消しを求めた再審査の請求を、判事6人のうち5人の多数で退けた。理由として、選挙人名簿の正確さという一般の利益が、個人の利益に優先すると判断した。対象は、2022年の司法省の通達の基準で国籍を得た人。亡命者の子や孫であることを示す領事館の証明を持つ人は、対象から外れる。8月1日の時点で締め切られた総選挙の名簿には、対象になりうる人が、国の法務官が示した数字で16万3,020人入っている。政府側は判断に遺憾の意を示し、憲法裁判所に訴えられるかどうかを検討している。
「名簿の正確さが優先」
最高裁の行政訴訟部(第3法廷)は9月10日付の決定で、政党Voxと政党イウスティティア・エウロパの申し立てを受け、この規定で国籍を得た人の在外選挙人名簿への新たな登録と、すでにある登録の選挙上の効力を、仮に止めていた。国籍そのものは取り消していない。国の法務官と検察は、総選挙が前倒しされ、選挙までに対象者を見分けられなくなったとして、仮処分の取り消しを求めていた。
12日に明らかになった判断で、最高裁は、9月に命じた措置がどこまで実行されたかについて、「まったく進んでいないか、少なくとも分からない」と指摘した。国の法務官は、17万件近くを1件ずつ確かめるのは事実上不可能だと主張していたが、最高裁は、実行できない原因が実行すべき行政自身にある以上、裁判所の命令の実行が不可能だと主張することはできないとして、これを退けた。
一方、アリシア・ミリャン判事は反対意見で、総選挙の前倒しで状況が変わったとし、少なくとも一時的には仮処分を解くべきだったとの考えを示した。
投票できないのは誰か
2022年10月の司法省の通達は、1936年7月18日から1955年12月31日までに国外へ出た人について、亡命していたと推定する基準を設けていた。この基準で国籍を得た人が今回の対象になる。政治的な理由などで国外へ逃れたスペイン人の子や孫であることを示す領事館の証明を持つ人は、対象から外れる。総選挙の名簿の閲覧と異議の申し立ては、12日に始まった。
政府「一部の人には投票権は大事ではないようだ」
閣僚の一人は12日、国の祝日(ナショナル・デー)に王宮で開かれたレセプションで、記者団に「一部の人にとって、投票権はそれほど大事ではないようだ」と述べた。政府は、今回の判断が確定的なものかどうかや、政府自身が憲法裁判所に訴えられるのか、対象者本人しか訴えられないのかを、国の法務官に検討させるとしている。一方、申し立てたVoxは、EFE通信によると判断を歓迎した。
日本の読者への解説
「孫の法」は、2022年の民主的記憶法に設けられた規定の通称で、内戦やフランコ独裁の時代に国外へ逃れた人の子や孫などがスペイン国籍を取れるようにした。今回の判断は仮処分をめぐるもので、訴えそのものへの判断はまだ出ていない(判断を前にした記事)。













