スペインが、16年間できなかったことをやってのけた。現地7月2日(日本時間3日)、ロサンゼルス・スタジアムで行われたFIFAワールドカップ2026・ラウンド32でスペイン代表はオーストリアを3-0で下し、ベスト16に進出した。ミケル・オヤルサバルが2得点、ペドロ・ポロが1得点。スコア以上に重いのは、これが2010年南アフリカ大会の優勝以来、スペインがワールドカップの決勝トーナメントで挙げた初めての白星だという事実だ。そして次戦は7月6日、ダラスでポルトガルとの「イベリア・ダービー」。18歳のラミン・ヤマルと41歳のクリスティアーノ・ロナウド、23歳差の対決が待っている。

ロサンゼルスの完勝 ─ オヤルサバル2発とペドロ・ポロ

試合はスペインが終始主導権を握った。36分、オヤルサバルが先制点を決めて均衡を破ると、66分にはペドロ・ポロが追加点。89分にはククレジャの縦パスに抜け出したオヤルサバルが右隅に流し込み、3-0で試合を締めた。オヤルサバルはこれで今大会4得点目。欧州王者として臨んだ今大会で、エースの座を確固たるものにしつつある。

オーストリアに決定機らしい決定機を与えず、無失点で試合を終えたことも収穫だ。スペインは今大会ここまで4試合で失点ゼロ。攻撃陣の話題が先行しがちだが、大会を勝ち抜くうえで最も信頼できる土台は守備の安定である。

「16年ぶり」の重み ─ イニエスタ以来の決勝トーナメントゴール

この試合のオヤルサバルの先制点には、驚くべき注釈が付く。スペインの選手がワールドカップの決勝トーナメントでゴールを決めたのは、2010年の決勝でアンドレス・イニエスタが挙げた優勝決定弾以来、実に16年ぶりなのだ。

信じがたい数字だが、振り返れば腑に落ちる。2014年ブラジル大会はグループステージ敗退。2018年ロシア大会のラウンド16ロシア戦は1-1からのPK負けで、しかもスペインの得点は相手のオウンゴールだった。2022年カタール大会のラウンド16モロッコ戦は0-0からのPK負け。PK戦の敗北は公式記録上「引き分け」であるため、スペインは2010年の決勝以来、決勝トーナメントで勝ったことも、自らの足でゴールを決めたこともなかったのである。黄金時代の記憶と現在の実力の間に横たわっていた16年分の空白を、オヤルサバルの一撃がようやく埋めた。

不発弾から首位通過へ ─ グループHの3試合

ここまでの道のりは平坦ではなかった。初戦のカーボベルデ戦は支配率74%を記録しながらまさかの0-0。地元紙に「Petardazo(不発弾)」と酷評され、本サイトも「優勝候補の名が泣く立ち上がり」と報じた。しかし第2戦でサウジアラビアを4-0と粉砕して息を吹き返すと、第3戦はウルグアイを1-0で退け、2勝1分の勝ち点7でグループH首位通過を決めた。

デ・ラ・フエンテ監督にとっては、初戦後に浴びた「戦術が単調」「決定力不足」という批判への、結果による回答が続いている。なお、グループHではもう一つの物語も生まれた。3戦全て引き分けたカーボベルデが2位で決勝トーナメントに進出。ワールドカップ初出場国のグループステージ突破は2010年のスロバキア以来という快挙で、大会全体でも屈指の話題となっている。

7月6日ダラス ─ ヤマル18歳 vs ロナウド41歳

ベスト8をかけたラウンド16の相手はポルトガル。クロアチアとの一戦を制して勝ち上がってきた。試合は現地7月6日(月)15時、ダラス・スタジアム(AT&Tスタジアム)で行われる。スペイン時間では同日22時、日本時間では7日(火)朝5時のキックオフだ。

この一戦の最大の見どころは、世代を象徴する2人のアタッカーの対決だろう。スペインの至宝ラミン・ヤマルは現在18歳。大会期間中の7月13日に19歳の誕生日を迎える。一方のロナウドは41歳にして今大会もゴールを量産しており、グループステージでは3試合で4得点。23歳差の「新旧最高峰」が同じピッチに立つ構図は、この大会屈指のカードと言っていい。

国境を接する隣国同士、しかも今大会は共催国ではない欧州勢同士の潰し合いとしては最速の大物対決となる。イベリア半島の全メディアが今、この一戦に照準を合わせている。

ネーションズリーグ決勝の借りを返せるか

スペインとポルトガルには、直近の因縁がある。2025年6月のUEFAネーションズリーグ決勝で両者は激突し、120分間の死闘の末にPK戦でポルトガルが勝利。スペインは欧州王者でありながら、タイトルマッチで隣人に涙をのんだ。あれから約1年、今度はワールドカップの舞台でのリベンジマッチとなる。

PK戦に泣き続けてきたのは対ポルトガルだけではない。前述のとおり、スペインの過去2大会の敗退はいずれもPK戦だ。「120分で決めきる」ことがこのチームの積年の課題であり、オーストリア戦のような早い時間帯の先制と試合運びの安定は、その意味でも好材料と言える。

日本の読者への解説

日本代表(SAMURAI BLUE)の今大会は、6月29日のラウンド32でブラジルと対戦し、先制しながら追いつかれ、延長戦の末に敗れて幕を閉じた。グループFを2位で通過しての決勝トーナメント進出は立派な成績だが、「ベスト16の壁」は今回も破れなかった。悔しさの残る日本のファンにとって、ここからの大会の楽しみ方の一つが、優勝候補スペインの行方だろう。

スペインには日本にゆかりのある要素も多い。レアル・ソシエダで久保建英とプレーするオヤルサバルは、日本のファンにもなじみ深い選手だ。そのオヤルサバルが16年の空白を破るゴールを決め、大会得点ランキングを争っている。ポルトガル戦は日本時間7月7日(火)朝5時キックオフ。早起きの価値がある一戦になるはずだ。大会前の戦力分析はスペイン代表ガイドを、ここまでの軌跡は初戦レビューを参照してほしい。

この記事をシェア:X (Twitter)WhatsAppLINE