先に言っておく。これは独断と偏見だ。順位に異論があって当然——というより、ラーメンの順位で揉めるのは世界共通の健全な娯楽である。だから炎上は覚悟のうえで、2026年のいま、バルセロナで本当に旨い一杯が啜れる店を10軒、順位をつけて並べる。煮え切らない「みんな違ってみんないい」では記事にならない。火種は承知で点火する。

ただし一点だけ、フェアな前提を共有させてほしい。バルセロナのラーメン店は、味の好み以前に大きく2系統に分かれている。これを知らずに「期待と違った」と怒るのは、お互い不幸だ。

その前に ― バルセロナのラーメンは「2系統」ある

ひとつは、日本人オーナーや日本で修行したシェフが、自家製麺と何時間も炊いたスープで「本場の一杯」を出す専門店。もうひとつは、近年のラーメンブームに乗って一気に増えた、安くて量があり気軽に入れる現地化チェーン・量産系だ。

後者はしばしば「あれは本物のラーメンじゃない」とガチ勢に言われる。確かに、48時間炊いた豚骨スープと、汎用スープに具を盛った一杯は別物だ。だが、深夜に安く腹を満たせる価値、観光の動線上でサッと入れる価値は、それはそれで本物の効用である。本記事は①本場志向を主軸に順位をつけるが、②の良さも否定しない。どっちが「上」かではなく、その日の気分と財布で選べばいい——という前提で読んでほしい。それでも順位はつける。約束は約束だ。

第1位 Ramen-Ya Hiro ― 「バルセロナ最古の本物」の貫禄で一番

Eixample地区、Carrer de Girona 164。2012年開業、バルセロナのラーメンシーンの草分けにして、いまも頂点に置かざるを得ない一軒。日本人がオーナー兼職人を務め、日本から運んだ製麺機で自家製麺を打つ。長時間炊いた醤油ベースの豚骨スープに、チャーシュー・メンマ・半熟卵という王道。海鮮ラーメンやつけ麺もある。20時以降は予約必須、店前には開業以来ずっと行列。「迷ったらここ」と言える基準点であり、他店はここを物差しに語られる。1位の理由は、味だけでなく「バルセロナで本場の一杯とは何か」を定義した存在であることだ。異論は認める。だが譲る気はない。

第2位 Ippudo ― 「ラーメンの王」上陸の衝撃で一番(新顔)

Eixample地区、Carrer de la Diputació 164。世界に300店超、日本に160店超を構える一風堂が、2025年9月、ついにスペイン初出店。看板は48時間炊き上げる白丸・赤丸の豚骨で、シルキーなスープと自家製麺。客単価は約25ユーロ、昼は15ユーロ以下のメニューもある。開店前から在住日本人とラーメン好きで席が埋まった話題性は本物だ。2位に置いたのは、味の安定感とブランド力に疑いの余地がないから。「グローバル資本のチェーンを2位にするな、Hiroと逆だろう」という声も、「むしろ1位だ」という声も、どちらも歓迎する。それがこの順位の醍醐味だ。

第3位 Kanada-Ya ― 「博多豚骨の濃度」で一番

Eixample地区、Carrer de València 240。福岡発祥、博多豚骨を看板に世界展開する一軒。入口に置かれた大鍋で炊くスープの濃度と、細麺の硬さ指定ができる本格仕様は、博多の一杯が恋しい在住者を泣かせる。ロンドンなどで磨かれた国際展開ブランドだけあって、再現度とオペレーションは高水準。「濃厚豚骨で日本を思い出したい夜」の最適解として3位。

第4位 Koku Kitchen ― 「懐の深さと餃子」で一番

ゴシック地区、Carrer d'en Carabassa 19。東京・五反田で修行した運営チームが営む人気店で、本格志向ながら間口が広い。豚骨味噌・醤油・辛味に加え、ヴィーガン対応のラーメンを2種用意するのが今のバルセロナらしい。併設の餃子も評判で、「肉食もヴィーガンも同じ卓を囲める」懐の深さが武器。旧市街の路地裏という立地も含め、デートにも一人にも効く万能型として4位。

第5位 Grasshopper Ramen Bar ― 「通い詰めたくなる15席」で一番

El Born地区、Plaça de la Llana 9。わずか15席、予約不可のカウンター。麺・スープ・タレを自家製で仕込み、日本でしか手に入らない食材を使う本格派で、特に味噌の濃厚さに定評がある。shoyu・shio・misoの直球勝負。小ささゆえの一体感と、待ってでも入りたくなる中毒性が魅力。「席が少なすぎて5位は損してる」と言われたら、その通りかもしれない。

第6位 Umaimon(旧Takumi) ― 「札幌味噌と入りやすさ」で一番

Via Laietana 32ほか市内複数。2007年にドイツ・デュッセルドルフで生まれた欧州のラーメンチェーンで、スペイン半島内の旧Takumi各店は近年Umaimonに名称統一された。札幌スタイルの味噌や鶏白湯系を軸に、日本のおつまみも揃う。専門店の凄みというより「どこにでもあって、いつでもそこそこ旨い」安定と入りやすさが価値。観光中にハズさず一杯啜りたい時の安全牌として6位。

第7位 Muteki Ramen ― 「コスパとつけ麺」で一番

Eixample地区、Carrer de Muntaner 32。カタルーニャ広場からも歩ける中心部にありながら、価格が良心的。バルセロナでは貴重なつけ麺を出し、カツ丼やとんかつといった一品料理も充実。平日昼は満席になることも多い。学生や在住者の「財布の味方」枠として、コスパ重視ならまず候補に挙がる。7位は安さの裏返しではなく、選択肢の幅広さへの評価だ。

第8位 Ramen Dou ― 「旧市街のアクセス」で一番

旧市街、Carrer Comtal 11。カテドラル周辺やカタルーニャ広場から至近で、観光の合間にふらりと寄れる立地が最大の武器。観光ど真ん中という場所柄、本場専門店のような行列の重さはなく、回転も良い。味の尖りより「動線上で確実に温かい一杯にありつける」実用性で8位。バルセロナ観光を詰め込んだ一日の、昼の補給ポイントとして覚えておきたい。

第9位 Noru Bar ― 「ラーメン専門ではないが実力」で一番

Gràcia地区、Carrer de Francisco Giner 6。Poblenouの人気アジア料理店Kohのスピンオフで、シェフDaniel Benitorafeが手がける円形カウンターの「アジアンブロス(スープ)バー」。厳密にはラーメン専門店ではなく、アジア各地のスープを精密に仕立てる店だ。だからこそ純度の高いラーメン専門店とは土俵が違う——が、一杯の完成度は高い。「専門店じゃないのに10選に入れるな」という批判は正論だが、それでも入れたくなる実力枠として9位。Gràciaの2025年の勢いも込みで。

第10位 Ramen Shifu ― 「賛否を呼ぶ"気軽枠"」で一番

市内複数(Consell de Cent、Diagonal、Paral·lelなど)。スペイン各地に展開する大型チェーンで、ここまで挙げた専門店とは明確に系統が違う。安い・量がある・気軽に入れる・遅くまで開いている——その価値は確かにある。一方で「これは本物のラーメンか」という議論を最も呼ぶのもこの店だ。本記事の「2系統」でいえば、紛れもなく現地化・量産系の代表。だから10位という位置づけは「下げた」のではなく、系統が違うものを同じ土俵で正直に並べた結果だ。本場の一杯を期待して入ると肩透かしを食うが、深夜に安く啜りたい夜には、これ以上ない味方になる。期待値さえ調整すれば、これはこれでアリ。

結論 ― 「本場で食べたい夜」と「気軽に啜りたい昼」は違う

こうして10軒を並べて見えてくるのは、結局「目的で選べ」という当たり前の結論だ。本場の一杯で日本を思い出したい夜は、Hiroや一風堂、Kanada-Yaへ。財布が軽い昼や、観光の動線上でサッと済ませたい時は、Mutekiや旧市街のRamen Dou、あるいは気軽なチェーンへ。どちらが上か下かではなく、その日の気分と懐で使い分ければいい。

そして冒頭の約束どおり、この順位には異論があって当然だ。「Hiroより一風堂だ」「Grasshopperが5位はおかしい」「あの名店が入っていない」——大いに結構。あなたの脳内ランキングと殴り合うために、この記事はある。バルセロナのラーメンシーンがここまで豊かになったこと自体が、数年前には考えられなかった幸福なのだから。

*掲載の住所・スタイルは2026年5月時点。営業時間・定休日・価格・メニューは変わりやすいので、訪問前に各店の公式サイトやGoogleマップで最終確認を。本記事内で公式情報を確認できる主な店:Ramen-Ya HiroIppudo BarcelonaKoku KitchenUmaimon(旧Takumi)Ramen Dou

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