5月後半の熱波が30℃を連発し、バルセロナはもう完全に夏前夜である。市内のジェラテリアは仕込みの段階で4月から動き出し、6月に入ると週末の夜は地元客と観光客で行列ができ始める。本場イタリア人職人が国境を越えて勝負する本場ジェラート、19世紀末から続くスペイン伝統のオルチャータ(チュファ=タイガーナッツで作る乳白色の冷たい飲み物)、そして近年急増したヴィーガン・サステナブル系。バルセロナのアイス文化はこの3層が同時並走する希少な街だ。
本記事では、2026年6月時点で実際に営業を確認した在住者鉄板店・批評家ベスト・話題の新店から、夏のシーズンに失敗したくない10店を独断と偏見で選んだ。順位はつけたが下位だから劣るという意味ではない。むしろ「本場王道」「スペイン伝統」「シェフ系新世代」「ヴィーガン・サステナブル」「バルセロナ発世界クラス」と軸の異なる店を分散配置している。最後の10位は議論を呼ぶ賛否枠として選んだ。
1位|DelaCrem(Enric Granados店)
住所: Carrer d'Enric Granados 15, Eixample|創業: 2010年|価格: small 3€前後/regular 3.50€前後
バルセロナ在住者がアイスの話で必ず名前を挙げる代表格。常時100フレーバー超を回し、月8の新作を出し続ける本場イタリアン・ジェラートの完成度が15年揺るがない。全フレーバーがグルテンフリー対応で、テラスはペット可。ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、リコッタ、季節フルーツのソルベまで外れがない。Eixampleの並木道沿いの店構えは華美ではなく、職人気質の真剣勝負がそのまま空間に出ている。迷ったらまずここで間違いない。
2位|OGGI Officina Gelato Gusto Italiano
住所: Carrer Comtal 15, Ciutat Vella|価格: 3〜4€
「フレーバー数で勝負する店は本物ではない」という哲学で少数精鋭を徹底する批評家ベスト。エル・セジェール・デ・カン・ロカのジョルディ・ロカが推奨し、ローマ法王庁の公式サプライヤーとしてバチカンに納入する経歴の店だ。専門誌GelatoMapsの最高評価「3ボール(アルチザン・エクセレンス)」で87/100点を獲得している。シチリア産ピスタチオ、ピエモンテ系ヘーゼルナッツなど素材の出所が明確で、職人技と素材の両輪で本場本国級に対抗する。並ぶ価値は十分ある。
3位|Gelaaati di Marco
住所: Carrer de la Llibreteria 7, Barri Gòtic|創業: 2006年|価格: 3〜4€
ゴシック地区の老舗本場イタリアン。ピエモンテのヘーゼルナッツ、ブロンテDOP認証のシチリア産ピスタチオなど、素材の選定で長年信頼を積み上げてきた。シチリア風カンノーロ(リコッタ詰めのペストリー)も提供しており、観光導線上にあるにもかかわらず本格派と在住者の両方から支持される。大聖堂エリアを歩いた帰りに自然と立ち寄れる立地の強さも武器。
4位|Paral·lelo Gelato
住所: Carrer d'Ausiàs Marc(本店)/Time Out Market Barcelona(ポート・ベル新店)|価格: 3.50〜5€
バルセロナ発の世界クラス。英フィナンシャル・タイムズが「世界ベストジェラート」のひとつに選び、Repsolガイドにも掲載されている地元発のヒーローだ。アーティチョーク、サツマイモ、パルメザン×バルサミコといった攻めの季節フレーバーで知られる。自家焙煎ナッツと地産季節素材の厳選という、本場の方法論をバルセロナの食文化で再解釈する野心が魅力。2026年に話題のTime Out Marketへの新店出店で訪れやすさも上がった。
5位|Gocce di Latte
住所: Carrer dels Banys Vells(本店)/Carrer de l'Espaseria 14(ヴィーガン専門店), El Born|創業: 2012年|価格: 3〜4€
ローマ出身の夫婦マッテオ&リタが切り盛りするボルン地区の独創派。チョコ×海塩、洋梨×シナモン×ジンジャー、デーツ×カルダモン×オレンジなど、いわゆる「らしい」フレーバーから一歩踏み出した組み合わせが小気味よい。第2店舗は完全ヴィーガン・グルテンフリー専門でアレルギー対応も万全。ボルン散策のコースに自然に組み込める2軒。
6位|Sirvent(Parlament本店)
住所: Carrer del Parlament 56, Sant Antoni(支店 Balmes 130)|創業: 1928年|価格: 3〜4€
スペイン伝統の絶対王者。トゥロン(ヌガー菓子)の聖地ヒホナ出身の創業者トマス・シルベントがバルセロナに開いた店で、ほぼ100年続くオルチャータの本格派だ。バレンシア地方アルボラヤ産チュファを使った自家製オルチャータ、自家工場で作るトゥロン入りのアイス、夏のグラニサド(かき氷ドリンク)が看板。サン・アントニ地区の春から夏の風物詩で、晴れた週末は店外に行列ができる。バルセロナの夏は本当はこちら側にもある、と気づかせてくれる一軒。
7位|El Tío Che
住所: Rambla del Poblenou 44-46, Poblenou|創業: 1912年|価格: 3〜4€
こちらもオルチャータの100年超え老舗で、現在は5代目イレネ・イボラが継承している。バルセロナ・コマース・プライズ2025(バルセロナ商業賞)を受賞し、地元の商業文化のシンボルとして再評価が進む。アルボラヤ産チュファのオルチャータにファルトン(甘いパン)を浸して食べるのが定番で、隣には妹店マンマ・ヘラデラがある。観光導線から外れたポブレノウ地区にあるため、ローカルの空気を味わいたい人に最適。シルベントとの飲み比べはバルセロナの夏の楽しみ方として定番化しつつある。
8位|AMMA Gelato
住所: Plaça de la Virreina 3, Gràcia|価格: 3〜4€
グラシア地区ビレイナ広場の100%プラントベース・ジェラテリア。乳製品・卵を一切使わずに、本格派ジェラートの口当たりを徹底再現する技術派ヴィーガン店だ。グルテンフリー対応も万全で、4.9★という高評価が安定している。広場のテラスでゆっくり食べられる立地も強い。ヴィーガンや乳製品アレルギーがある人、あるいは「軽い後味」を求める日には迷いなく選べる一軒。
9位|Bodevici
住所: Carrer de Torrijos 21, Gràcia|価格: 3〜4€
バルセロナ唯一の認証オーガニック・ジェラテリア。「エコロジカル・プレジャー」を掲げ、フェアトレード素材、レイダ産洋ナシのソルベ、カタルーニャ豆「ガンチェ」を使ったヴィーガン味など、地産・有機・サステナブルの3軸を一切ぶれずに貫いている。サステナビリティが食の文脈で語られる時代にバルセロナの答えのひとつを提示する店。グラシア地区を歩く際に外せない。
10位|Gelato Collection(賛否・新世代枠)
住所: La Rambla 136, Ciutat Vella|開業: 2024年7月|価格: 3.80〜5.80€
世界的シェフのアルベルト・アドリア(伝説のレストラン「elBulli」のパストリー部門出身)が、元エニグマのパストリー責任者アルフレッド・マチャドと組んで開いた話題店。常時20種・最大60種構想、毎朝フルーツの皮剥きから仕込むという徹底ぶりで、香水店のような店内デザインも話題を呼んだ。ラ・ランブラ上のロケーションと価格帯は観光地路線として議論の余地があり、本記事の最下位=賛否枠としてあえて選んだ。シェフ系新世代の最前線として、伝統派と並べて議論する価値がある。
軸の整理|本場・スペイン伝統・ヴィーガン・シェフ系
10店を軸で整理すると、本場イタリアン・ジェラート(DelaCrem/OGGI/Gelaaati di Marco/Gocce di Latte)、スペイン伝統オルチャータ(Sirvent/El Tío Che)、ヴィーガン・サステナブル(AMMA/Bodevici)、バルセロナ発・世界クラス(Paral·lelo)、シェフ系新世代(Gelato Collection)になる。バルセロナのアイス文化はこの5軸を同時に楽しめる珍しい街で、3日間の滞在で全軸制覇も現実的だ。
2026年夏、訪問のコツ
時間帯: 19時以降は地元客が増えて混む。15〜17時の「メリエンダ」(おやつの時間)が狙い目。週末夜の中心街は20〜30分待ちを覚悟。
支払い: クレジットカードは大半の店で使えるが、伝統系の老舗オルチャータ店では現金のみのこともある。少額の現金を持ち歩くのが無難。
サイズ感: smallでもダブル味が選べる店が多い。試したい味が多いときは1人でsmallを2軒回るのが現実的。
季節限定: 6月はストロベリー、7〜8月は桃・スイカ・メロン、9月以降は無花果・栗が出始める。月替わりで仕込みが入る店(DelaCrem、Paral·lelo)はリピート前提で楽しめる。
持ち歩き注意: 中心街・観光地はスリのターゲット。コーン片手で写真を撮るときはバッグの開閉に意識を向けよう(参考: バルセロナのスリは本当に「手品師みたい」なのか…防犯ガイド2026)。
オルチャータって何?日本の読者向けに
シルベントとエル・ティオ・チェで看板になっている「オルチャータ・デ・チュファ」は、バレンシア地方の伝統的な冷たい飲み物で、チュファ(地下茎の小さな塊根、英語でタイガーナッツ)を一晩水に浸して挽き、砂糖と水で仕上げた乳白色のドリンク。乳製品アレルギーがあっても飲める植物性で、軽い甘さと素朴なナッツ香が暑い日の体に染みる。アイスクリームよりも「夏の体力回復ドリンク」として地元では飲まれている。アイスと一緒にファルトン(細長い甘いパン)を頼んで浸して食べるのが伝統スタイルだ。
本場ジェラートとスペイン伝統、両方が同居する珍しい街
バルセロナのアイス文化は「イタリア人職人が国境を越えて出店した本場ジェラート」と「19世紀末からこの地で続くオルチャータ文化」が二重底になっている。ローマやミラノに比べてジェラート文化は新しいが、本場の素材(ブロンテDOPピスタチオ、ピエモンテ系ヘーゼルナッツ)を本国級の品質で取り寄せ、本国より安く食べられる稀有な街でもある。一方でオルチャータ系の老舗はバレンシアやヒホナといったスペイン南東部の伝統菓子文化と地続きで、こちらは「ジェラート」とは異なる時間軸で楽しむもの。同じ夏の夕方に両方を一度に体験できる街は、世界的にもそう多くない。
夏のグルメ・観光プランは 夏の海の新ルール2026 や サン・フアン夏祭り特集、そして食つながりで バルセロナのラーメン店10選【2026年版】 もあわせてどうぞ。












