バルセロナの観光地で食べたあのパエリア、実は…
スペイン旅行の楽しみといえばパエリア。だが、バルセロナのランブラス通り沿いで、写真付きメニューを掲げ、注文して5分で湯気を立てて出てくる「パエリア」を食べて、「こんなものか」と思った人は少なくないはずだ。在住者として、少し残酷な事実をお伝えしたい。観光地のど真ん中で安く早く出てくるパエリアの多くは、冷凍や作り置きを温め直した、観光客向けの量産品であることが多い。本物は、あんな速さでは出てこない。
そもそもパエリアは「バルセロナの料理」ですらない
大前提として、パエリア(paella)は東海岸バレンシア地方の郷土料理で、本来はウサギや鶏、インゲン豆を使う内陸の農民食だった。カタルーニャ=バルセロナは、厳密にはパエリアの本場ではない。では地元の人が米料理を食べないかというと、まったく逆で、カタルーニャには独自の素晴らしい米文化がある。彼らが本当に通うのは、観光客向けの「PAELLA」の看板の店ではない。
地元民が本当に食べている「米料理」
カタルーニャで通が頼むのは、たとえばこんな料理だ。アロス・ネグレ(arròs negre):イカ墨で真っ黒に炊いた、磯の香り高い米。フィデウア(fideuà):米の代わりに短いパスタで作る「海のパエリア」。アロス・ア・バンダ(arròs a banda):魚介の出汁だけで炊き上げる、滋味の塊。どれも、観光客向けの彩りだけ派手なパエリアとは、出汁の深さがまるで違う。
「本物」を見分ける、たった数個のサイン
難しくない。① 注文して最低20分はかかると言われる店は、その場で炊いている証拠で、当たりの確率が高い。即出てくる店は避ける。② 「2人前から」など人数指定があるのも、ちゃんと作っている店の特徴。③ メニューに大きな写真をベタベタ貼り、店頭で客引きをする店は、観光客狙いのサインとして警戒。要は、「観光客の回転」で売る店か、「料理」で売る店か——その軸で見分ければいい。少し路地を入った、地元の人で賑わう店を選ぶだけで、体験は劇的に変わる。
日本の読者への解説
これは「観光客向けの店=悪」という単純な話ではない。手早く安く食べたい時に、その種の店が便利なのも事実だ。だが、せっかくスペインまで来て米料理を食べるなら、本場の出汁の一杯にたどり着いてほしい。鍵は、パエリアという有名な名前に縛られず、アロス・ネグレやフィデウアといった「地元の本命」に手を伸ばすこと。そして、すぐ出てくる派手な一皿より、二十分待たされる地味な一皿を選ぶこと。その二十分が、旅の記憶を変える。





