スペイン統計局(INE)の調べによると、2021年のスペイン国内における倒産件数は23,808件。 今年の八月までに既に16,971件と、倒産件数は現在昨年を上回る勢いがある。
失業保険申請ベースの失業者数は減少傾向にある一方、倒産件数は近年微増傾向にある。
スペインにて働いていた会社が潰れた場合、もしくは解雇された場合、労働者が受け取ることができるのは基本的に以下の項目。
1)退職金
2)未払いの給料
3)未消化の有給休暇(バカシオネス等)
4)未払いの残業代などの特別給与等
5)失業保険
このうち1)~4)は、会社側が支払い、5)は政府機関(SEPE)が支払う。
ここで、会社が倒産したとき、その会社の労働者が5人以下の場合、自宅にBurofax等の内容証明で解雇通知が届く。 この日に病気や、けがなどでBaja(休職)している状態でも、関係なく解雇されてしまう。
失業保険を受け取る場合、15日以内にSEPEに申請を行わなければ、その権利をはく奪されてしまうので注意が必要。 更に、失業保険を受け取るには同時にSEPEで求職申請を行う必要があるので、時間には余裕を持ちたい。
会社が倒産した場合、上の1)~4)の支払いが会社側から支払われる可能性は非常に低い。 そのため、スペイン中央政府は労働者への支払いを保証するため、FOGASA「給与保証基金」を設けている。
従って、会社が倒産し、不動産、動産などが処分されても、労働者に未払いの給与の支払い能力がないと裁判所で判断されると、労働者はFOGASAに上記1)~4)の支払いを請求することができる。
2)の未払いの給料に関して、FOGASAが支払う期間は最大で120日(約4か月間の未払い給料分)、一日最高約74ユーロ。 つまり、合計最大8,866.66ユーロまでがFOGASAにより保証されている。
弁護士事務所によると、会社が倒産し、支払い能力が無いと分かった場合、FOGASAに申請する期限は約1年とのこと。
一方、倒産した会社の労働者が6人以上の場合、集団雇用調整が発動し、労働者団体と企業との間で、上記の1)~4)の支払いに関して交渉が行われることになる。
基本的な流れとしては以下の通り。
会社側から、倒産する旨を実際に倒産する(裁判所による判決が出る日の)15日前に労働者に通達される。
通知を受け取ったら、労働者たちは2週間以内に、上の1)~4)の支払い額などに関して会社側と交渉するMesa de Negosiadora(交渉団)を1~3人選出し、会社側(実際には会社側の弁護士)に通知しなければならない。(通知にその旨を明記されている場合がほとんど)
もし、この時交渉団を結成できない場合、裁判所から労働者らに対し招集命令が下され、結成を促される。
会社側と交渉団の間で同意が交わされると、労働者は「失業状態」となり、会社側もしくはFOGASAからしかるべき金額が支払われ、失業保険を受け取ることができるようになる。
この様に、労働者は、会社側と交渉団の間で同意が交わされるまで「勤務状態」となる為、交渉期間中、失業保険を受け取る資格が発生しない。 そのため、実は交渉団の構成員の役割が非常に重要になってくる。
基本的にこの交渉団には2つの性質の異なるグループがその代表席3つ(代表は一人から最大三人)を巡って争うことになる。
一つは、会社側が提示する額に同意せず、退職金などの引き上げを交渉するグループ。
もう一つは、会社側が提示した額に同意し、すぐに退職金および失業保険を受け取ることを是とするグループ。
もし、退職金引上げ交渉のグループが交渉団の席2つを確保してしまった場合、会社側と労働者側との交渉がはじまり、その交渉が終了するまで退職金、失業保険など、一切の保証が受け取ることができない状態となってしまう。 取材した弁護士によると、ある案件で交渉が難航し、2020年から2022年までの2年間、多くの労働者が一切の保証が受けられない状態が発生していたという。
一方、すぐに退職金および失業保険を受け取ろうとしたグループが交渉団の2席を確保した場合、すぐに諸々の支払い手続きに入ることができる。
この様に、働いていた会社が無くなってしまった場合、裁判所(厳密には、裁判所補佐人、労働局員)、会社側弁護士、交渉団、交渉団の弁護士(交渉団内部で意見が分かれていれば、各グループの交渉団の弁護士)で話し合わられる。
もし、この様な事態に陥ってしまい、自身の権利を守りたい場合、弁護士に相談するのが最適であるが、日本語を理解するからと言って、このような事態に精通しているとは限らない弁護士も存在するかもしれない。 今回の記事作成に当たり、様々な法律的な疑問に答えてくれた、また、この様な件に精通している弁護士事務所をここに紹介しておく。
Sr.Francisco Morilla
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