カラバンチェルが生んだロックの伝説

1980年代、マドリードのカラバンチェル地区を駆け回っていた若者たちにとって、ラモン・セラノ通りにあった「髪の長いギタリスト」のグラフィティは、長年の謎だった。その正体が、後にスペイン・ロック界の象徴となるロセンド・メストレ本人であり、彼がそのグラフィティのすぐ近くに住んでいたことが明らかになると、彼はたちまち若者たちの「伝説(ミト)」となった。現在、ブルゴスの小さな町モンテリオに住まいを移しているロセンドだが、故郷カラバンチェルへの愛着は変わらず、今も度々訪れている。この街は、彼の音楽人生における重要な一部であり続けている。

増補改訂版『Rosendo. Quiero que sueñes conmigo』

ジャーナリストであるキケ・ババスとキケ・トゥロンが編纂した本書は、20年以上にわたるロセンドへのインタビュー記録を再構成し、一冊の興味深く、そして非常に示唆に富む「対話」としてまとめたものである。増補改訂版では、新たに32ページに及ぶコミックや、400枚を超える写真、プロモーション資料などが追加され、彼のキャリアを網羅している。ロセンドは、移民労働者の父を持ち、幼少期は心臓の病で安静を余儀なくされた経験を持つ。父は靴職人であり、ロセンド自身も当初は靴職人になることを期待されていたが、祖父からのギターのプレゼントをきっかけに音楽の道へと進む。

日本の読者への解説

スペインのロックシーンにおいて、ロセンドは「スペイン語で最も尊敬される」と言っても過言ではない存在です。彼の音楽は、単なる若者の反骨精神に留まらず、社会的なメッセージや、故郷への深い愛情を歌い上げてきました。日本で言えば、例えば忌野清志郎さんのような、時代を超えて愛されるアーティストに例えられるかもしれません。彼の音楽スタイルは、ブルースやハードロックを基盤としながらも、スペイン独自の哀愁や力強さを感じさせます。本書は、そんなスペインロックの巨人を知る上で、非常に貴重な資料となるでしょう。

この記事をシェア:X (Twitter)WhatsAppLINE