「賢者の谷」の象徴的改修
スペイン政府は、フランコ独裁政権下の国家主義の象徴とされる「賢者の谷」(バジェ・デ・ロス・カイドス)の再解釈プロジェクトを加速させています。このプロジェクトは、2022年に採択された「民主的記憶法」に基づき、建築家ペレダ・ペレス・アルキテクトスとリグナム社が手がける「基部と十字架」と題されたデザインを採用。その最も象徴的な変更点は、十字架の基部から広場までを縦断する巨大な「亀裂」を掘削することです。
「亀裂」は対話か、分断か
この「亀裂」について、イニャキ・カルニセロ元都市計画・住宅・建築担当事務次官は「出会いを促し、対話を招く大きな亀裂だ」と説明しました。しかし、この記事の筆者は、この象徴がむしろ国民の間の分裂や道徳的退廃を物語っていると指摘。建設計画が、独立派を含む左派連立政権と一部のパートナーとの間で合意されたものであり、広範な国民的合意を得られていない点を問題視しています。また、教会側との交渉も難航しており、計画の実行には多くの課題が残されています。
日本の読者への解説
「賢者の谷」は、スペイン内戦の犠牲者を弔うための施設として建設されましたが、フランコ総統の墓所があることなどから、独裁政権の象徴とも見なされてきました。今回の改修は、スペインが抱える内戦とその後の独裁政権という暗い歴史にどう向き合い、国民的和解を進めるかという難しい課題を浮き彫りにしています。日本においても、戦争の記憶の継承や、過去の過ちをどう教訓とするかは重要なテーマであり、スペインの事例は、歴史認識を巡る政治的・社会的な対立の難しさを私たちに示唆しています。

