スペイン 非常警戒体制解除 今日から「新たな日常へ」

2020年6月21日、新型コロナウイルスによる感染拡大を受け、2020年3月14日にスペイン政府より官報が発行され、15日0時より発効した現民主主義体制2回目となる非常警戒体制が解除された。 解除までに6回の延長が行われた。

経済への影響
 政府が発令した外出制限による経済的な打撃は甚大で、特に雇用に対する影響は非常に大きい。 多くの企業が休業措置をとり、それに伴いスペインでは約330万人がレイオフされた。 今年2月までの失業者数は324万人で、失業率が13.6%だった。 これは1月から7,800人増加したが、2月としては過去三年間で最も失業者増加数が低かった。 その後5月の失業者数が385万人に上昇し、失業率は14.8%となった。 失業者とレイオフ(一時休職)を合わせると約700万人(約28%)が一時的に失業した。

 スペイン中央銀行はまた、失業率は24.7%まで上昇し、GDPも15.1%減少するだろうと予測を立てている。 これを受け、中央銀行は欧州連合に対し合計1400億ユーロの緊急財政出動を承認させる必要があると警鐘を鳴らしている。

 因みにレイオフ(ERTE)の9月30日までの延長が現在検討されている。 現行ではERTEは6月30日までだが、企業グループ側は政府に対し12月末までの延長を要請。 スペイン中央政府は9月30日までの延長で条件付きを提示しており、両者の間で合意に至っていない。

移動制限の影響
 WTTC(World Travel & Tourism Council)の調べによると、スペインのGDPの約14.6%が観光業であるため、観光客の移動制限はスペインにとっても致命的だ。 スペインでは今年二月に440万人(昨年同月比で1%増加)の外国人観光客を受け入れていたが、国境封鎖により非常警戒体制中は当然0人となっている。 この危機的状況に対し、スペイン中央政府は復興支援金として約42億5千万ユーロを用意している。

 また、大都市圏での公共交通機関の利用に関して、例えば2019年6月マドリードの交通機関(地下鉄、近郊列車、バス等)の一日平均利用客数は約546万人。 一方今年は151万人に留まっている。

 タクシーや運転手付き配車サービス(UBER等)は、昨年の利用率が14.8%から今年は10.8%と減少する一方、レンタル自転車の利用率は22.7%から29%と増加したことが、マドリード市の発表により明らかになった。

住まいへの影響
 不動産市場に関して、スペイン各地で地下の下落が始まっている。 場所によっては70%まで下落したところもあるとのこと。 マドリードでは、2月に1平米当たり1,752ユーロだったのが、5月には1,730ユーロと、5%~15%の下落と報道されている。

 Idealistaが発表したところによると、中古住宅の価格は1.3%の下落で、今年中に二桁まで上がると予測されている。

消費への影響
 外出制限中の市民による消費の傾向はトイレットペーパーからビール、そしてオンラインショッピングと変遷していった。 非常警戒体制発令当初はトイレットペーパーの買い溜めが発生し、スーパーの店内は、足取りの早い「焦った客」でごった返していたこともあり、更に買い溜めを助長していた。 その後ビールの消費が目立ち始め、家庭で料理をするため小麦粉が品薄状態となり、外出制限後半はネットショッピングで嗜好品などの購入が目立つようになったとのこと。

 インターネットやテレビの消費も大きな変化が見られ、3月と4月の期間中、SNSの利用数が55%増加、ツイッターは23%増加、スマートフォンの利用率も38%増加、ゲームのダウンロード数も60%増加した。

 一方、テレビの視聴時間も増えたことにが明らかになっており、2020年3月では一人当たり一日平均282分となり、2013年2月の最高記録を10分上回ったことがBarloventoの調べにより分かった。 特に、非常警戒体制発令初日となった3月15日日曜日は、344分まで上昇した。

新型コロナウイルスによる死亡者数等
 非常警戒体制中、スペイン中央政府は連日新型コロナウイルスへの感染者数や死亡者数を発表していたが、死亡者数に関してスペイン国立統計局(INE)と数字が一致しない現象が起こっていた。

 INEの発表によると、今年1月1日から5月24日までの全ての死亡者数は約225,930人で、昨年同時期と比べて24.1%の増加(43,945人増加)したことが分かっている。 一方で、スペイン中央政府が発表している新型コロナウイルスによる死亡者数は27,127人に留まっている。 つまり27,136人は、新型コロナウイルスではない理由で昨年より多く死亡していることになるが、これに対しINEは、新型コロナウイルスによる死亡を断定することはできないが、明らかに死亡者数が増加していることは見受けられる。」としている。

 2020年3月1日から6月15日までの期間、スペインで何等かの理由により死亡した人数は約159,380人。 これは昨年同時期比で44,966人の増加。 このうち、スペイン厚生省の発表による新型コロナウイルスによる死亡者数は27,136人であることから、外出制限により昨年より約1万8千人が昨年より多く死亡したのだろうか、それとも新型コロナウイルスによる死亡者数は実際は更にその倍に膨れ上がるのだろうか、不明である。

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みなさま、非常警戒体制お疲れ様でした。 公式発表では、まだ一日あたり150人程度の新たな感染者が出ています。 また、店内や交通機関などでは引き続きマスク着用が義務となっていますのでご注意ください。

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