スペイン 今日から住宅新法発効 主な内容とは?

スペイン中央政府下院議会は2023年4月27日に閣議で承認された新住宅法を議決、5月25日に官報を発布し本日26日から発効された。 この法律はスペイン国内不動産業界の様々な領域を規制し、住宅へのアクセス支援策、不法占拠時の立ち退き規制、緊張地域(人口密集地域で観光地域等)での賃貸料制限などの措置を含む。 国内で物議を醸しているこの住宅新法の主な内容は以下の通り。

1.賃貸市場における「緊張地域」の範囲拡大
2.大規模な不動産所有者に対する新たな定義
3.毎年の賃料更新の上限を、消費者物価指数(IPC)からの更新によって撤廃
4.新規賃貸契約における「緊張地域」での賃料規制
5.不動産仲介手数料を賃借人から大家に転嫁することの禁止
6.付加費用を含めた賃料の値上げの禁止
7.住宅法に反する「当事者間の合意」の禁止
8.強制退去に対する保護措置
9.不動産所有者に対する税制上の優遇措置
10.空き家に対する固定資産税の増税
11.公営住宅の指定変更の不可能性
12.賃貸供給の増加と手ごろな価格の住宅の促進

1 – 賃貸市場における「緊張地域」の範囲拡大

新住宅法第18条では、「住宅に関する権限を持つ行政機関は、各自の権限の範囲内で、定められた基準と手続きに従い、住宅の供給不足の特別なリスクが存在する地域での住宅に関する公共の取り組みを指針とするために、住居市場の緊張地域を宣言する(再設定する)事ができる。」と述べられている。 これはつまり、地域または市町村を「緊張地域」と宣言するかどうかは、各自治州政府が権限を持ち、対象地域の市町村議会を含めて検討されるということ。 ただ、この「緊張地域」と宣言するためにはいずれかの条件を少なくとも1つ満たす必要がある。

条件1 住宅ローンまたは賃貸料に加えて基本的な経費と公共料金の平均費用が世帯の平均所得の30%を超える場合。(例えば、地域の平均所得が1世帯3,000€である場合、住宅の価格(ローンまたは賃貸)と公共料金の合計は1,000€を超えてはならない。)

条件2 住宅の購入価格または賃貸料が、「緊張地域」宣言の前の5年間で消費者物価指数(IPC)よりも少なくとも3ポイント上昇している場合。 (例えば、2020年1月に住宅の価格が30万ユーロ出会った場合、2023年1月までの間に2020年1月から2023年までのIPCの値(12.9%)に更に3ポイントを加えた(15.9%)を超えている必要がある。 したがって、住宅の価格は34万7700€以上になる必要がある。」

「緊張地域」の指定は地区から自治州全域までの地域に及ぶことができるが、以上のいずれかの条件を満たす必要がある。

2-大規模な不動産所有者のための新しい定義

新住宅法第3条2-K 項では、「大規模な不動産所有者:この定められた法律では、都市部の住宅用不動産を10件以上所有している市民または法人、または住宅用として建設された面積が1,500平方メートル以上ある市民、または法人(但し、ガレージやトランクルームは除く)を指す。 この定義はその地域が「緊張地域」と指定された場合、該当地域に5つ以上の住宅用不動産を所有する所有者ん対しても適用される場合があり、その場合は自治州政府がその正当な理由を示し、宣言しなければならない。」と規定されている。

「緊張地域」では大規模な不動産所有者と小規模な所有者の間で区別がなされている。
大規模な不動産所有者:「緊張地域」においては、5件以上の住宅を所有している市民、または法人、または通常の地域では、10件以上の不動産(または1,500平方メートル以上)を所有している市民または法人

小規模な不動産所有者:5件未満の住宅を所有している市民または法人

3-IPCによる家賃更新の制限

官報(BOE)第6項によると、家賃の価格更新はIPCに連動しなくなり、以下の方法で更新される。

2023年:家賃の更新は最大2%まで。

2024年:家賃の更新は最大3%まで。

2025年以降:2025年1月からは、全ての家賃は新しい基準指数に基づいて更新される予定で、それはIPCよりも低くなる予定。

但し、例外事項として、「大規模不動産所有者でない場合、家賃の増加は『当事者間の新しい合意に基づくもの』となる。 この新しい合意がない場合、家賃の増加は、更新時点の競争力保証指数(Índice de Garantía de Competitividad )の年次変動の結果を適用したものを超えることができない。」 ただ、いずれにしても来年以降家賃の増加は2%~3%を超えることがない。とのこと。

4-「緊張地域」における賃貸料の規制

官報(BOE)によると「この法に準拠する賃貸住宅契約において、物件が市場の緊張地域に位置している場合[…]新規契約の開始時に合意される賃料は、過去5年間に同じ住宅において有効だった前の賃貸住宅契約の最終賃料を超えることはできず、前の契約の賃料の年次更新条項が適用された後の金額に新たな条件を設定して家賃の負担を借主に負わせることはできない。」とある。 この措置の目的は、賃貸住宅の価格を抑制し、削減することであり、「緊張地域」に指定されていない地域には適用されない。 これらの上限は、契約形態と所有者(小規模か大規模か)によって異なる。

小規模不動産所有者:新規賃貸契約の価格は、前の賃貸契約価格に現行の指数に基づく価格の更新を加えたものとなる。 (例:ある住宅の前の賃貸契約の家賃が1,000ユーロだった場合、新しい契約の家賃はこの1,000€に、その時点の指数に基づく価格の増加を加えて超えることはできない。 したがって、2023年に新しい契約が行われる場合、家賃は1,030ユーロを超えることはない)

大規模不動産所有者:価格の抑制指数の適用により、まだ定義されていない方法で決定される。

この法律はまた、「緊張地域」内で新たな賃貸住宅を市場に導入することも規定しており、各自治州政府の権限において価格も制限される。

5-不動産仲介手数料を賃借人から大家に転嫁することの禁止

新しい規制では、第20条の1項において、「不動産管理費および契約手続きに伴う費用は、賃貸人の負担となります」と規定されている。

6-追加費用を伴う家賃上昇の禁止

新法律では、前の契約に含まれていない料金や費用を借主に反映させる新しい条件を設定することができないと規定している。

7-法に反する契約合意の禁止

両者間で合意がある場合でも、法律の一部に反する場合では、他の法律と同様に合意が無効となる。

8-退去手続きに対する新たな保護措置

・期日を定めない強制立ち退きに終止符を打つ。 つまり、強制立ち退きには期日を設定する必要がある。

・強制立ち退きの期限には2年間の延長も含まれる。

・弱い立場にある人々に対する法定外の和解手続きへのアクセスを義務付け。

・自治州政府は和解に介入することができ、適切と思われる代替不動産の提示も行うことができる。

・弱い立場にある人々は、国の住宅計画基金(国庫)から代替住宅の提供を受けることができる。

9-賃貸物件所有者への税制上のメリット

官報によると、税制上のメリットに関しては2024年1月1日から発効される。 この規定によれば、「緊張地域」における小規模不動産所有者は以下の方法で所得税に対する減税措置が適用される。

住宅を賃貸に出す所有者には50%の控除が適用される。

住宅をリフォームした場合は、60%の控除が適用される。

初めて18歳から35歳の若者に賃貸する場合、70%の控除が適用される。

住宅が「緊張地域」内にあり、住宅支援計画の定める家賃以下で、経済的弱者の受け入れに使用された場合、70%の控除が適用される。

10-空き物件に対する固定資産税の追加課税

同一市内に4件以上の物件を所有している場合、2年以上空き家となっている住宅を賃貸に供することを奨励するため、政府は自治体政府に対し、固定資産税の追加課税率を最大で150%に引き上げることができる。

11-公営住宅の区分変更不可能性

第16条によると、公共の保護制度の対象となる住宅地に建設される保護対象住宅は、その地の区分が維持される限り、区分変更を除外した公的保護制度の下に置かれることが明記されている。また、保護対象住宅の区分は無期限。

12-手ごろな価格の住宅提供の増加と奨励

第17条によれば、各地域の家計の経済状況に適した価格で住宅の供給を増やすために、公共当局は各自の職務範囲内で奨励された手ごろな価格の住宅の存在を促進することがでる。これらの住宅は、関連する行政機関が定める規定によって指定され、目安となるが規制されることはない。

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